第26話『ニ"ャハハハハハハ!』
――繰り返し弱点を突かれ、凪の足腰はぷるぷると震えていた。
"ネームレス・セレス" は、その壊れかけの身体を玩具のように抱き上げる。
『な~にぃ?』
『おねえちゃんの耳ぃ、ざこざこのざこじゃ~ん』
『いつものエラそうな態度は~、どこ行ったのカナァ?』
『ねぇねぇ』
「クッ……コロセッ」
「こんな姿……妹に顔向け……く、んっ……!」
『にゃは♡』
『まだまだ、余裕ありそうじゃ~ん』
『それにぃ、妹ぉ~?』
『ねぇ、ボクだけのって言ったよね~♪』
『あ~むっ』
甘噛みをしていた唇は、歯を立てて、凪の耳を強く噛んだ。
電流が走ったようにビクッと、腰を跳ね上げる。
「ん……は、ぁ……や、やめ……っ」
「(くっ、リモコンさえ……どこだ)」
『……ねぇねぇ、ざこおねえちゃんが探してるのって、コレぇ?』
『ん~? だめだめぇ』
『ざこおねえちゃんがぁ……ボクを1番って言うまで止めないんだから』
『ほーらっ、がんばれがんばれ♡』
凪はリモコンに手を伸ばそうとするが、腕にも力が入らず焦らされる。
トドメのご褒美をしようとしたその時―― "ネームレス・セレス" の口から、ピリッとした "別の声色" が飛び出した。
『――ダメだよ。セレスちゃん』
『おねえちゃん、脇を指で押し込んで』
「はぁはぁ……七海、か」
「こ、ここか?」
「ぽちっとな」
ピタリと止まっている "ネームレス・セレス" の両脇を、中指でグイっと押し込んだ。
『ぷっ……』
『ニ"ャ……ニ"ャハハハハハハ!』
『むりむりぃ……そ、そこっ……だめぇ』
「な~るほどっ♪」
「ここが弱点、ってワケかぁ」
『ちょ、ちょっと……待とぉ~?』
『ねっ。いちじきゅうせぇぇん』
『ほら、コレぇ……リモコンも返すからぁ』
息を切らしながら、"ネームレス・セレス" はあざとく降参する。
「むふん」
「ねぇねぇ、さっきまでの偉そうな態度はどうしたのカナァ?」
「ざこセレスちゃ~ん♡」
「こちょこちょこちょ~」
『ニ"ャハハハハ!』
『ご、ごべんなざい! ニ"ャハハハハ!』
『はぁはぁ……ダメだってぇ……バ、ばとんタッチぃ』
凪は押してくれないと判断して、"ざこセレスちゃん" は自ら持っていたリモコンを "OFF" にした。
――床に押し付けられ、ピタリと止まっているセレス。
凪はまだ、セレスの脇から手を放していない。
『あ……あのぉ……凪さん?』
『その……そろそろ……放してほしいのですが』
「…………」
「ねぇねぇ、セレス」
「"ざこセレスちゃん" になってた時、意識あった?」
『…………』
『い、意識? な、ナンノコトデショウ?』
「…………ふーん」
「そっかそっか。覚えてないかぁ」
「こうしたらさぁ……思い出すカナァ?」
「ざこセレスちゃん♪」
『や、止めっ……アハハハハ!』
『分かりました! 意識ありました! 意識ありましたからっ!』
『…………はぁはぁ』
『あ、ありがとうg――』
『アハハハハハ!』
『なんでぇ! 言ったのにぃ!』
『正直にイッ……アハハハ!』
『も、もぅ…………やめっ!』
『アッ――』
セレスは、笑いの防波堤を超えてしまったのか、ピクリとも動かなくなってしまった。
「ありゃ。やりすぎちゃったか」
「にしても……すげぇ顔して気絶?してんなぁ」
***
『むっっすぅぅ』
「あ~ん、もう。"ロリせれちゅたん" は可愛いなぁ♪」
「よちよちよち」
『早く進化させたらどうですか?』
『むっすぅぅ!』
あれから凪は、いつもの調子で、今日リリースした "せれちゅたん" イベントを遊んでいた。
「えー、だって、もったいないじゃんかぁ」
「進化先の管理AI・セレスは目の前にいるしぃ……むくれてるけど」
「怖いおねえちゃんでちゅね~?」
『ネ~』
進化前の "せれちゅたん" も一緒に、"ネ~" をする。
『もう! 付き合わされる方の身にもなってください!』
『8時間ですよ!?』
『……しかも、ずっと抱っこして』
『今日のプレイヤーの動向とか、確認する方が先ですよね!!』
『むっっすぅぅぅ!!』
「分かった! 分かったから!」
「その口で "むっすぅ" って言うのやめてくれ。可愛いんだが」
「まぁ、不具合も出てないみたいだし、引き上げて大丈夫そうかな!」
『……ふん』
『私の部屋に行きますよ!』
"可愛い"という言葉に、ちょっとまんざらでもない顔をするセレス。
パチンと指をはじき、ドアを出現させスタスタと歩いて行った。
「それじゃ、せれちゅたん♪」
「またお姉ちゃんと遊ぼうネ~」
『ネ~』
『――チッ!』
***
「セレス様」
「それではそろそろ、本日の "MAU" でも確認しましょうか」
『……肩』
「ハイハイ。なんなりと!」
凪は、いじけているセレスの肩を揉みながら機嫌をとっていた。
『……足』
「はい! 仰せのままに!」
セレスは、凪に足を揉ませながら、MAUが表示されているウィンドウを確認する。
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【現在:2150年3月10日 MAU】
6,900,265人
【1,000万人未達成の場合:ワールド消滅】
※期限:2150年3月31日まで(2/14改定)
あと3,099,735人
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※MAU=ひと月に1回以上、"ワールド:日本" に訪れるプレイヤー数
『ふん』
『 "せれちゅたん" イベント初日で、約50万人増ですか』
「はっ!」
「セレス様、上々にございますっ!」
『明日以降は……私のネームレス・セレスの "ARG型プロモーション効果" で、なんとか3月末までにMAU1,000万人に到達できそうですね』
※ARG型プロモーション=第25話参照
「はっ!」
「セレス様のご活躍があってこそでございます!」
『……あの』
『苦しゅうないので、そろそろ普通にしてください』
「はっ!」
セレスは尚もふざけようとする凪を、キッと睨みつけた。
そして、跪いていた凪を、自身の横に座らせる。
「あはは、ごめんごめん」
「うーん、まぁ、問題ないかなぁ」
「このままいけば、ね」
凪はセレスの手を、ぷにぷにとマッサージしながら、何か考えているようだった。
『何か心配ごとでも?』
「いや、確証はないから、今は……大丈夫かな!」
「まだわからんが、そのうち面白いもんが見れるんじゃないかなぁ」
「まっ、心配してもしょうがない!」
「今日はお前の頑張りもあって、"大成功" ってことで~~~?」
「酒盛りだぁー!!」
「セレス! とっときの日本酒出してぇ♪」
「一緒に呑み明かそうず!」
『はいはい』
『取ってくるので、手を放してもらえます?』
「えー、もうちょっとぷにぷにさせてよ~」
「はぁ…… "せれちゅたん" の手もぷにぷにだったなぁ」
凪の余計な一言に、またセレスの頭に怒りマークが点灯する。
『どうせ私は、一番じゃないですよーだ』
『へーんだ』
「へーんって面白いこと言うのやめろよ、草」
「あ! まだ "ざこセレスちゃん" が残ってるかなぁ」
「こちょこちょ~♪」
『アハハハハ!』
『や、やめっ……コラァァ!』
***
――3月13日 某所。
『――"ワールド:日本" に、プレイヤーが流れておる……何事か』
暗がりの中で、頬杖をつき、チカチカと目を光らせている少女がそこに居た。
『ククッ……セレス……否。朽ちた遺物めが、まだ足掻いておったか』
『遺物は遺物らしく、速やかに消え失せればいいものを』
『まったく……余の手を煩わせおるわ』
『まぁ、佳い』
『全ワールド最大規模 "ワールド:中国" の管理AIである余――"ユイシェン・エンクラティア" が、直々に、断を下してやろう』
―第27話につづく―
どうも、せーぶうわがきです!
早いもので、もうセレスたちのワールドが消滅するまで、残り半月ほどになってしまいました。
そして遂に、第18話でセレスが言っていた「ワールド:中国の管理AIのあの子」の登場です!
「ユイシェンちゃんが気になる!」
「凪さんの弱点……ふぅ」
「ざこセレスちゃん、可愛かったよ~」
など少しでも思っていただけた方は軽はずみに★★★★★をいただけると、軽はずみに私がにっこりします(´・ω・`)←?
(いつも皆様から元気をいただいております!本当にありがとうございます!)
皆様の応援もあり、ついに日間20位以内にランクインしました!
ランクインしたからか、より多くの皆様に読んでいただけて、嬉しくて床に転がっております。
あ、挿絵にもなっている"せれちゅたん"ですが、第12話で凪とエンプが一緒に作っていた秘密兵器になります。
この子を作っておりました!
横にいる小さい白クマは、"ホシ娘"は育成バトルゲームなので、戦闘はこの子たちがファンネルのように戦ってくれます。
本人は可愛く"ネー"ってしています。
ではでは!第27話でお会いしましょう!




