第24話『コンテンツポリシーに抵触しますから!』
『あら? 凪さん』
『今日はずいぶんと早起きですね』
トボトボと部屋から出てきた凪を、"世界を始める" 前のセレスが呼び止める。
「ふわぁぁ……うん、ブランちゃんに呼び出されてねぇ」
「"せれちゅたん" イベントのシナリオ、受け取ってくる~」
『はーい、いってらっしゃい――って、凪さん!?』
『髪ボサボサ、服もヨレヨレじゃないですか……』
『まったくもう……こっちに来てください』
パチンと指をはじくと、凪の白いTシャツは一瞬で新品になる。
「……ん?」
「なんだこれ?」
凪は新品になったTシャツを、おもむろに脱ぎ始めた。
『は!?』
『ちょ、ちょっと! 何やってるんですか!』
「はぁ? こっちのセリフなんだが」
「勝手に下着もつけんなよなぁ」
「てか、女同士なんだから恥ずかしがんなよ」
「あ、AIか。アハハ」
『こらぁ! コンテンツポリシーに抵触しますから!』
『センシティブ、ダメ、ゼッタイ!』
セレスは、凪のたわわがこぼれそうになったところで、シャツを下ろすことに成功した。
すがさず指を鳴らし、下着を消去する。
「おー、すげぇな」
「まぁ、なんだかんだ言いながら、お前ガン見してたけどなー」
『……くっ』
『自慢もたいがいにしないと、殴りますよ』
「んぇ~い」
『はぁ、もう』
『髪もさらにボサボサになってるじゃないですか』
次に凪の髪の毛を、指で優しく丁寧にとかしていく。
それはまるで、野良ネコがお風呂に入れられているような光景だった。
『せっかくのサラサラな髪が、台なしですよ』
「スンスン……はぁ。いい匂い」
『嗅ぐなっ!』
「う~~ん……もうちょっとだけぇ」
「あと5分~」
『はーい、ダメでーす』
『いい子はお仕事始めましょうねー』
「ちぇっ。けちー」
子どものようにふくれっ面をした凪。
セレスは小さく肩をすくめ、そっと微笑んで背中を見送った。
『ふふ。まったく、しようがない人です』
***
『――ようやく、来ましたわね』
『そこに認めておきましたので、勝手に見て行ってくださいまし』
相変わらずの真っ暗な部屋に、光る文字で宙にびっしりと文章が浮いていた。
ブランは振り返りもせず、黙々とゲームを続けている。
凪は気にも留めず、文字の海へとゆっくり潜っていった。
光の粒が宙にまたたき、部屋は静かな深海のようだった。
――そこは、創る者だけに許された悠久の時間。
「――いいね」
「"せれちゅたん" の幼少期の可愛い口調、おてんばなところとか大好きになっちゃうやつだな」
「それに進化先 "女神セレス" の王道ながらも、神聖さの中から滲み出る抱きしめたくなるストーリー」
「"アイドル・セレス" の小悪魔でズル賢いのに、健気、頑張り屋で応援したくなるストーリー」
「"管理AI・セレス" は――ふふ」
凪は、次の感想を言うタイミングで唐突に笑った。
『なんですの?』
「いやいや、ごめん」
「"管理AI・セレス" だけ、より一層気持ちが籠ってるなぁって」
「ブランちゃんが、セレスをどう思ってるのか伝わってくるよ」
『何を言ってるんですの?』
『あの子……セレスは言ってみれば、この"ワールド:日本" の顔』
『プレイヤーの皆様から、一番好かれるようにするのは当然ですわ』
ボカン!
ツンと冷たく言い放った後、ブランがプレイしていたゲームは "GAME OVER" になる。
「あはは、素直じゃないなぁ」
『――五月蠅いですわ』
ブランは背を向けたまま、ゲーム機に別のソフトを差し込む。
そして隣に置かれていた座布団を、ぽん、ぽん、と二度だけ叩いた。
『…………』
『何をやっているんですの?』
凪が立ち尽くしていると、ブランはなおも振り返らず続けて口を開く。
『――そんなところに突っ立ってないで、早くお座りくださいまし』
「協力型ゲームかぁ」
「し・か・た・ないなぁ~♪」
『ぶったたきますわよ』
凪はニヤニヤしながら、ブランの隣へ座りコントローラーを握る。
「あ、そうそう」
「シナリオで、ちょっと直してほしいところがあるんだけど~」
『わたくしが書いたシナリオに、ケチをつける気で?』
「違う違う」
「仕様と合わない部分があるから、そこだけ合わせてほしいなぁって」
『――』
『タダで直す気にはなりませんわね』
「あはは、いいね♪」
「それじゃあ、どっちが高得点取れるかで勝負しよう」
「1ステージ毎で勝った回数分、直してもらうってことで」
『ふん。いい度胸ですわ』
***
――3月7日 昼。
『こらぁ!』
『誰が、丸1日以上遊んでるんですかぁ!』
いつまで経っても戻ってこない凪に、業を煮やしたセレスが怒鳴り込んできた。
「んぇ? もう1日経っちゃったかぁ」
「うーん、まぁ、こんなところかな~」
「ブランちゃん、楽しかったな」
「あ・り・が・と♪」
『…………』
『ふん。二度と顔も見たくありませんわ』
『早く……お帰りくださいまし』
ブランは、背を向けて態度悪く寝そべりながら言い放つ。
その声からは悔しさが滲み出ていた。
「じゃ、セレス。帰ろっか♪」
「これで "せれちゅたん" イベントのシナリオ完成だ」
『え? どういうことです?』
『遊んでたんじゃ……』
「ばーか」
「ゲーム開発は遊びながらするもんだ」
『ま、まぁ。終わったのなら文句はありませんが……』
セレスは、凪を見送った後、いじけているブランの頭を優しく撫でる。
『ブラン』
『お疲れ様です。よしよし』
『ふん』
『…………セレス、次はあなたも一緒にお越しくださいまし』
『ふふふ、は~い♪』
***
「んにゃ~、遊んだなぁ♪」
凪は自分の部屋に戻ってくるなり、ベッドに飛び込んだ。
『もう。凪さん』
『大事なんですからね! ホウ・レン・ソウ!』
「は~い、次からはテッテイしまーす♪」
「スン……スンスン」
疲れを癒すように、凪はセレスの腰にしがみつき匂いを嗅いだ。
『…………』
『10分だけですからね』
「うわぁい、お許しがでたぁ♪」
「あ、そうそう……スン……あのさぁ……スンスン」
『ちょっ……ん……ぅ……嗅ぎながら喋るのやめてください』
『こそばゆいのですが』
「あはは、ごめんごめん」
「こほん。大事なお知らせ」
「次の "せれちゅたん" イベントのリリースだが、3月10日にしようと思う」
「あとは調整だけだが、セレスには別に、準備してほしいことがあってな」
『準備してほしいこと、ですか?』
凪はニヤリと笑い、セレスの顔をむにゅっと手で挟む。
嫌な流れを感じ取ったセレスの顔が、一気にこわばった。
「ズバリ! 3月10日リリース時のプロモーションについてだ!」
『――はっ!』
『も、もう、水着は着ませんからねっ!』
「はぁ……セレスぅ」
「プレイヤーが同じことで、喜ぶはずないだろ」
「それでも高性能AIか?」
『うっ……ホッとする反面、なんかムカつきますね』
凪は指を高らかにかかげ、大きな声で答えを発表する。
「次は "ARG型プロモーション" だ!」
―第25話につづく―
どうも、せーぶうわがきです!
皆様、見ていただいたらわかったと思いますが、ブランちゃんは分かりにくそうでいろいろと分かりやすい子です笑
そんな彼女を今後ともよろしくお願いします!
そして補足ですが、冒頭で凪さんのたわわ力が発揮されました。
どのくらいのたわわかというと、D〜Eの間くらいです。
はい、グレープフルーツ二個分くらいの重さと大きさですね。
本人は邪魔だと思ってます。よろしくお願いします!
(ちなみに柔らかさはマシュマロです。公式が勝手に言ってるだけです)
では!第25話でお会いしましょう!




