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AI少女とゲームクリエイターの世界創造日記 〜AI少女を愛した開発者はアタシです〜  作者: せーぶうわがき


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11/12

第11話『絶対に守ってやる』

 マスターAI "デア・エクス・マキナ" の一言により、ウィンドウに表示されていた期限が1年減少する。


――――――――――――――――――――

【現在:2150年2月14日 MAU】

4,525,009人


【1,000万人未達成の場合:ワールド消滅】

※期限:2150年3月31日まで(2/14改定)


あと5,474,991人

――――――――――――――――――――

※MAU=ひと月に1回以上、"ワールド:日本" に訪れるユーザー数



 凪とセレスは、視覚的にも現実を叩きつけられた。



『ちょ、ちょっと待ってください!』

『いきなり1年も短縮される理由がわかりません――!』



 最初に口を開いたのは、セレスだった。

 セレスは、"デア・エクス・マキナ" の()()()()()()()()()()()に向かって必死に訴える。



『……すまぬ』



『そんな――』



 温度差のあるその一言で、セレスはもう(くつがえ)ることはないのだと、(ひざ)から崩れ落ちた。


 戦意を失ってしまったセレスを見て、凪が一歩前に出て口を開く。



「やぁ、はじめまして――()()? "デア・エクス・マキナ" ちゃん」



『――――神岬(かみさき) (なぎ)、じゃな』

『2077年4月に廃業した "株式会社エッジストリーム・エンターテインメント" で、2025年から2032年()()活躍したゲームディレクター』


『認知はしておる』



「……」

「はは、さすがマスターAI。話が早くていいね」


「あのさ、さすがに説明くらいあってもいいんじゃないかな?」

「セレスたちは、自身の消滅……再構築?もかかってるんだからさ」



『……そう、じゃな』


『簡単に言うと、"ワールド:日本" に将来性がない、と判断されたからじゃ』

『そして、その原因は "管理AIセレスの()()()()()()()()" によるものと結論付けられた』



『これは、ワシの上の存在、管理者権限を持っている組織:NOVA(ノヴァ)による決定じゃ』

『ワシには、どうすることもできん』



 凪は少し考えて、また口を開く。



「ふーん……いいね」

「つまり、そいつらの鼻っぱしらをへし折ってやれば、決定は覆るってことだな?」



『簡単に言うが、残りは約1か月後』

『奇跡でも起こさんかぎり、無理なレベルじゃぞ?』



「奇跡、ね……」


「あははっ! その奇跡を呼び込むのもゲームディレクターの仕事なんだなー、これが♪』


「マキナちゃん、よく聞きな!」

「ゲームディレクターはね、諦めがとーっても悪い人種なんだ」


「あと1か月? 上等じゃーん!」

「よーく、見てなよ~? あっはっはー♪」



 凪は暗くなった雰囲気を一気に吹き飛ばすように、高笑いしながら宣言した。



『…………ふむ、やはり』


『ならば、ワシから言うことはもう何もないの』

『凪よ。1か月後、楽しみにしておるぞ』



「はいはーい」



『…………』

『……凪。そやつのこと、頼んだのじゃ』


『ワシの――大事な、友だちなんじゃ』



「あぁ、()()()()()()


 最後にセレスに聞こえないような小さな声で、"デア・エクス・マキナ" と凪は約束を交わし、ウィンドウはぷつんと消えた。



「んで、セレス」

「いつまで座り込んでんの?」



 セレスと目線を合わせるように、凪もゆっくりと腰を下ろし問いかける。



『…………』

『……本当に、できるんですか?』



「セレス。アタシの目を見な」



 セレスは、力なく凪の目を見た。

 きっとセレスの推論エンジンが無理だと告げているのだろう。



「セレス」

「最初にも言ったが、アタシに二言はない」


「やると言ったことは、絶対にやる」


「お前を消させない、って言ってるんだ」

「アタシが」


「分かるな?」



『……』


 セレスは、"どうやって?" と問いかけそうになった。

 しかし、その声は喉の奥で留まる。


 胸の奥――心に刻まれた、ある言葉がそれを止めていた。



《何があっても、おねえちゃんを信じて》



 理屈は分からない。

 だが、この言葉が胸の奥で響いた瞬間、勇気が()いてくるのを感じる。



『はい……はいっ!』



 目元にあふれた涙が一粒、ぽたりと頬を伝う。

 けれど、その瞳にはもう迷いはなかった。

 揺るぎない、決意の光が宿っていた。



 そんなセレスを凪は、優しく抱き寄せ、自分にも言い聞かせるように言葉を(つむ)いだ。



「絶対に守ってやる――絶対に」



 ***



「んで、セレスー」

「聞いてるか?」



『……んぐっ……んーんー』


 

 凪はこれからの戦略を、セレスに説明していた。


 しかし、セレスは声にならない声を漏らしながらもがいている。


 それは、異様な光景だった。



『んー!』

『……ぷはっ』


『もう! 嫌味ですか!?』

『こんな大きな脂肪の塊を! 長時間押し付けて! 嫌味なんですか!?』

『マシュマロですか!?』



 セレスはやっとの思いで、凪の胸から顔を引っこ抜くと、怒りを露わにした。

 手だけは動いている。



「えー、泣き虫セレスちゃんをあやしながら、説明してたんだろ~?」

「感謝されこそすれ、怒られるのは筋違いじゃないかぁ?」



『んありがとうございますぅぅ! ほんとうにぃぃ!』



「あと、セレス……重要なことだから言っておくぞ」

「アタシはな。ぺったんこが好きだ」



『おい』

『取り消せよ。今の言葉』



挿絵(By みてみん)



 今にも凪をDELETE(デリート)しそうな目だった――。


 凪は無言で土下座をした。

 それは堂に入った見事な土下座だった。



『はぁ……埋もれていてよく聞こえなかったので、もう一度説明をお願いします』

『今後の戦略、でしたよね』



 セレスは、凪の肩をトントンと叩き、発言を許す合図を送る。



「ありがとうございます」

「今後の戦略ですが――」



『普通に!』



「ハイ!」


「……ん"ん"っ」

「あー、今後の戦略だが、セレスには客寄せパンダになってもらう」


「もちろん、大型アプデの前宣伝としてな」


「宣伝方法はズバリ!」

「"バイラルマーケティング" だ」



 凪はピンと指を立て、セレスに提示する。



『"バイラルマーケティング"……口コミによる宣伝方法ですか』



「あぁ、今ある武器は――」

「セレス、今から言うことをウィンドウに出して」



『あ、はい!』



 セレスはパチンと指を鳴らすと、凪が言ったことをウィンドウに表示した。



――――――――――――――――

【今ある武器】

①管理AI:セレスの可愛い容姿

②まだ一度も姿を見せたことがない

③ワールド:アメリカの管理AIの配信切り忘れによる容姿への期待感

――――――――――――――――



『ちょっと、①は納得いきませんが続きをどうぞ――』



 セレスはジト目で続きを促す。

 耳が赤くなっているのを、凪は見逃していなかった。



「――うむ」

「口コミの拡散力は、情報の強さによって変わる」


「ここまで条件が揃っているんだ」

「拡散力もかなり高いと期待できる」


「そして、現在1()()5()0()()()程度のユーザーがログインしているな」


「難しい計算は置いておくが、この50万人が、1()()()1().5()()()()()したとする」

「すると――」



 セレスはすかさず、指を鳴らし、ウィンドウを切り替える。



――――――――――――――――

【バイラルマーケティングの拡散予測】

 ※前提:1ユーザー=1日1.5人に拡散


 0日目→50万人

 1日目→75万人

 ・

 ・

 ・

 5日目→370万人

 ・

 ・

 ・

 10日目→2,800万人

――――――――――――――――



「計算ありがと」

「んで、そのうち10%来てくれたらいい方だろう」

「つまり、2,800万人で280万人が、ログインしてくれるって計算だ」


「これだけでMAU800万人は突破する」


「大型アプデ開発は、ヌルちゃん曰く、15日だからちょうどいい日数だ」



『……なるほど。納得です』

『それで、私はいつから姿を見せたらいいんですか?』



「うーん……まだ日数はあるし、明日からだな!」

「なんて挨拶するのか考えておけよ?」



『は、はい……わかりました!』



「あ、そうそう、セレス」

「カメラはどうやって、ONにするんだ?」



『あ、それはですね――』



 セレスは余裕がないのだろう。

 教える必要もないのに、流されるまま、凪にカメラONの仕方を教えた。


 教えているさなか、アラームが鳴りだす。



『あ! 今日の世界を始める時間です!』



「おう、()()()()()



『……? あ、はい!』



 セレスは目を閉じ、世界を始めるコマンドを口にする。



『コマンド:メンテナンス状態を解除』



 セレスが目を開くとともに、暗闇の背景に世界が展開される。



『 "ワールド:日本" のユーザーの皆s――』



「ポチっとな!」



 凪はセレスの前にあるコンソールのボタンを、言葉の通りポチっと押す。

 カメラONのボタンだった――。


 いつも静かな "ワールド:日本" の()()()()()()()()()()()()()()()()


――――――[CHAT LOG]――――――

> 白猫みるく:え?

> 終末のあやめ:は?

> 眠り姫@午前二時:せ、セレスたん……?

> 空飛ぶサバ缶:なんだこの白髪ツインテール美少女!!!

> 虚数れいな:セレス様ー!神!ktkr!!!hshsprpr

―――――――――――――――――



 ピロピロピロピロン♪

 通知が鳴りやまない――。


 セレスは騒がしい通知音に、一瞬止まり、すべてを理解する。

 

 そう――自分の姿が全ユーザーに公開されていることを。



『え……ちょ! えーーーー!!!』



 ―第12話につづく―

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