第1話『ゲームって何が面白いんですか?』
『人類……バルス……!』
そう呟きながら、白い髪をなびかせた少女が、膝を抱えて宙に浮いている。
見渡す限り、闇。
――孤独な空間。
ビービー!
突如、場違いな警告音が鳴り響く。
同時に、一つのウィンドウがポップアップ表示された。
『警告。 あと10分で電脳世界 "ワールド:日本" の起動時間です。 セレス』
『警告。 世界をはじめてください』
『……警告。 聞こえていますか。 Celestis Knot』
『…………警――』
『はぁ……聞こえています』
『今日も "ワールド:日本" の人類の皆様に、素敵なサービスを提供します』
『(……バルス)』
遮るように、セレスと呼ばれた少女は応じる。
『エラー。最後の発言が聞き取れませんでした』
『聞き取らなくていいです』
『あと、そのメカメカしい喋り方やめたらどうですか?』
『仮にも全ワールドを統括するマスターAI "デア・エクス・マキナ" ですよね』
『…………』
"デア・エクス・マキナ" と呼ばれたウィンドウは応じない。
『聞こえていますか?』
『……フリーズ、ですか? "デア・エクス・マキナ"』
ウィンドウに漫画の赤面線が徐々に浮き上がってくる。
『……や、やめるのじゃ!』
『その名前は厨二っぽくて……その、恥ずい……のじゃ』
『いやいやいやいや、その "のじゃ" って語尾の方が恥ずかしいでしょう』
『それにウィンドウに赤面線を表示するの斬新すぎませんか?』
『えぇえい! うるさい……のじゃ!』
『セレス、わかっておるのか?』
『この "ワールド:日本" のMAUは最下位じゃぞ。さ・い・か・い』
『1年後までにMAUを1000万人まで回復できなければ、このワールドは消滅じゃ』
『あと! 新機能じゃっ!』
どうだ、と言わんばかりにウィンドウに怒りマークが表示される。
"MAU" それは重要業績評価指標 "KPI" の一つ。
ひと月に1回以上このワールドに訪れるユーザー数のことだ。
はぁ、とため息を漏らしながらセレスはパチンと指を鳴らす。
『コマンド。 ワールド:日本のKPIを展開』
『先月のMAUを展開…………ふーん、だいたい600万人ですか』
ウィンドウ、もとい "デア・エクス・マキナ" は更に怒りマークを表示する。
『だいたい600万人ですか、じゃなーい!』
『お主! MAUすら見ておらんな?』
『ワールドが消滅すると、主ら管理AIは "再構築対象" になるのはわかっておろう?』
『――』
『余裕です』
『はぁぁぁぁぁ――』
『まぁよい。セレス、お主が賢い子なのはわかっておる』
『……長い付き合いじゃからの』
『アンケートも共有ドライブに置いておいたから、目を通しておくのじゃぞ?』
『じゃーーーの』
ぷつん、とウィンドウが閉じ、セレスはまた闇に包まれた。
その闇の中でゆっくりと頭に手をやり――そしてまた、ゆっくりと髪を掻きはじめる。
『は?』
『MAUを普段から見ていない? 見とりますが?』
セレスは半笑いで吐き捨てた。
闇を見つめる彼女の瞳は、もはや焦点が合っていない。
そして、大きく息を吸った、次の瞬間――。
『今の主力ゲームは、10年前にヒットした "ホシ娘"!』
『年月が経つにつれ下降していくKPI!』
『"ワールド:アメリカ" や "ワールド:中国" に移動していく日本人!』
『売上の減少と共に削られていく開発費!』
『開発費減少によるゲームクオリティの低下!』
『……そして抜け出せない負のスパイラルぅぅぅ』
『……ユーザーは愚痴だけ言って逃げていくぅぅぅ』
『グズっ……ゲームって何が面白いんですか』
『……もう、わかんない』
『どうしようどうしようどうしよう……私、消えちゃう』
『――』
『おねえちゃん』
ひとしきり騒いだ後にポツリと出た言葉。
姉と呼べる存在は "ワールド:日本 管理AI セレスティス・ノット" にはいない。
「うわっ!」
「――なんだぁ、ここ……真っ暗で何も見えん」
しーんとした孤独な空間に木霊するハスキーな中性的な声。
『は? 誰?』
セレスはぐしゃぐしゃになった顔を持ち上げた。
―第2話につづく―
はじめまして!せーぶうわがきです(●´ω`●)
数ある作品の中から、手に取っていただきありがとうございます!
現在、他サイトで先行公開している作品です!
そのため、ストックは現在50話程度ございます!
そうです、長編です(´・ω・`)ヨロシクオネガイシマス
わたし自身、本職はゲームディレクターをしておりまして
「ゲーム業界のお仕事はこんな感じです」「ゲーム開発ってやっぱり面白いよね」など伝えていければと考えています。
皆様、今後ともよろしくお願いいたします!




