第7話 混戦、蓬莱宮を裂く
東西東西──(とーざいとーざい)!
雷鳴が天蓋を裂き、蓬莱宮の大広間に四つの影が揃う。
二郎真君、剣を構え、瞳に稲光を宿す。
「ここで会ったが百年目──いや、一万年目か、孫悟空。今度はその如意棒ごと断つ!」
牛頭、鎖を唸らせ、低く唸る。
「地獄の釜を蹴飛ばした借り、今こそ返してもらうぜ!」
馬頭、槍を回しながらニヤリ。
「天界の桃盗んだ時も、俺らが追ったんだぜぇ!……あん時は逃げ足だけは見事だったな!」
「うるせぇ馬顔!」牛頭が小突く。「褒めてんじゃねぇ!」
悟空、如意棒を肩に、白い歯を見せて笑う。
「おいおい、昔のことを根に持つなよ。
俺はもう改心した……って言ったら信じるか?」
五右衛門、煙管をくゆらせ、場を見渡す。
「改心した盗賊と、反省しない猿──
さて、どっちが厄介かねぇ……ま、漁夫の利ってのも悪くねぇがな。」
稲妻が走り、空間が弾ける。
真君の剣が悟空の棒と火花を散らし、牛頭の鎖が横合い《よこあい》から唸り込む。
馬頭の槍は五右衛門を狙うが、すり抜けた影が逆に彼の背を取る。
「おっと、踊り相手が多すぎるなぁ!」五右衛門は煙を吐きながら、棚の上へ軽やか《かろやか》に飛び乗る。
悟空は笑い、棒を振り回しながら真君と牛頭を同時に受け止める。
馬頭が背後から突きかかると、五右衛門の影が槍の先を奪い取る。
雷、鎖、棒、槍──四つ巴の音が宮殿を揺らし、天井から金の瓦が降り注ぐ。
その時、誰かの名を呼ぶ低い声が、瓦礫の影から響いた。
蓮の結界を破った時に解き放たれた“死者の影”が、ゆっくりと立ち上がっていた──。
──第7話、幕。
雷鳴轟く天界で、五右衛門が神々に挑む!
孫悟空、二郎真君、そして地獄の番人たち…最強の敵を前に、五右衛門の新たな“盗み”が炸裂する!
次回 第8話 石川五右衛門、天上にて見得を切る