第6話 石川五右衛門、三つ巴の乱入
東西東西──(とーざいとーざい)!
蓬莱宮の空が裂け、紅蓮の地獄門が開く。
そこから飛び出す二つの影──牛頭と馬頭。
地獄の番人、閻魔の忠犬とも呼ばれる最凶の回収屋だ。
牛頭「五右衛門! 閻魔帳を乱した罪、今ここで精算する!」
馬頭「地獄は未納者に厳しいんだぜぇ!」
五右衛門、煙管をくゆらせ、懐の金の巻物を軽く叩く。
「天に償え? 金輪際いやだぜ。
地獄の続きも絶景かな、ってな!」
牛頭が巨大な金棒を振り下ろし、馬頭が槍を振り回し石川五右衛門に威圧する。
二体の攻撃が千の掌のように迫る──
金棒が稲妻のように振り下ろされ、振動で蓬莱宮の瓦が飛び散り、地面に亀裂が走った。
「ほぉ……いい腕だな」
五右衛門の目が愉快そうに細まる。
その刹那、彼の影がふっと揺らぎ──黒い水面のように広がり、牛頭と馬頭の足元に忍び込む。
「盗みは影から、ってな!」
──次の瞬間、宝蔵から拝借した神器黒龍珠を掲げ、ふたつの影が入れ替わり、
金棒は馬頭の肩を直撃、鎖は逆に牛頭を絡めとる。
「なにっ!?」
「ぐあっ──!?」
「天封結界」──お釈迦様の加護を受けた魂封じの罠。
牛頭馬頭が動きを止め、結界の中で凍りつく。
五右衛門、煙管の灰を弾き笑う。
「仏の結界? 鍵の呼吸を盗りゃ終わりよ。
閻魔帳ハックした俺にゃ、釈迦の仕掛けも朝飯前だぜ。」
その時、空から爆笑。
「ハハハ! 仏さんまでハックかよ!」
孫悟空、如意棒を肩に乱入。
「その巻物、俺にも見せろ!」
雷鳴とともに背後から声。
「五右衛門、盗みはここまでだ!」
封じを破った二郎真君が剣を構え立つ。
三者と二鬼、視線が交錯。
五右衛門、巻物を掲げ、ニヤリ。
「お釈迦様でも俺様のトリックは見抜けないぜ。
俺の仕掛は天も地獄もひっくり返すぜ。」
巻物の光が炸裂、蓬莱宮が天と地獄の境目に揺れ、骸骨の手が地面を割って這い出す──。
──第6話、幕。
四者四様の刃と棒と鎖と槍が火花を散らす蓬莱宮。
だが乱戦の最中、闇から立ち上がる“死者の影”が戦場をさらに混沌へと沈める──。
五右衛門の巻物が招いたのは、天をも地獄をも揺るがす災いか?
次回── 第7話「混戦、蓬莱宮を裂く」
東西東西、戦いはまだ始まったばかり!