表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/22

第5話 盗人にも三分の理

東西東西──(とーざいとーざい)!



盗人ぬすっとにも三分の──



られる方にも三分の油断ゆだんがある。



ましてや天の宝蔵てんほうぞうとあらば、その油断は宝の山より高く、雲より分厚ぶあつい。



稲光いなびかりの中、二郎真君じろうしんくんの剣がうなりを上げる。



その一振ひとふりはさんがを割り、銀河てんがつ。



まともに受ければ五右衛門とて灰も残らぬ。

だが──刀は抜かれない。



五右衛門は宝棚から一つのたまを指先ではじいた。

千年龍せんねんりゅう吐息といきを封じた“龍珠りゅうじゅ”が、空気を裂き、あおい嵐をこす。



二郎真君の外套がいとうひるがえる。



「宝に手を出すか!」



「盗人が宝を使わずにどうする。」



嵐に乗って、五右衛門は影へと溶けた。

次に姿を現したのは真君の背後。



だが剣が瞬時しゅんじり返り、閃光せんこうせまる──。



五右衛門、もう一つの宝をかかげた。

時を逆転させる“時の輪”。



光刃こうじんが迫る瞬間、時間が一拍いっぱくだけもどる。



ろされた剣は、まだ構えの途中に戻っていた。



「真っ向勝負まっこうしょうぶ剣士けんしの理。

 人の裏を突くのが、盗人のルールよ。」 


その隙に五右衛門は棚奥たなおく黒壺くろつぼを開け放つ。



“永遠の影”──入ったものの影を壺に封じ、本人を行動不能こうどうふのうにする至宝しほう

二郎真君の足元から影がまれ、身体が石のように固まる。



剣が床に落ち、雷光らいこう途絶とだえる。

「三分の、七分のうで、あとは運。

 今日は運まで俺に味方みかたしたらしい。」

五右衛門は壺を結界けっかいの外に放り、天宝蔵の中を悠々《ゆうゆう》と歩く。



棚から一つ、金の巻物まきものふところに収め、煙管きせるの灰を弾く。

「宝は使ってこそ値打ちがある──命も、剣もな。」

外では雷鳴らいめいとともに、封じられた真君の怒声どせいが遠く響いた。


、──第5話、幕。





次回予告


「俺様の仕掛は、天も地獄もひっくり返すぜ。」

そう言い放った五右衛門の前に、最強の神々が立ちはだかる。

しかし、本当に敵は彼らだけか? 蠢うごめく影、交錯する思惑。

次回、第6話  石川五右衛門、三つ巴の乱入


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ