第19話 雷光の記憶、秩序の影
東西東西──(とーざいとーざい)!
今宵語るは、天界の夜に揺れる雷光の記憶。
義に生きる神将・二郎真君が見つめるは、秩序の奥に潜む影──そして、語られぬ真実。
天帝の屋敷、その奥深く。
夜な夜な、淡い光が点滅していた。
雷ではない。冷たく、脈打つような神性の歪み。
それは、秩序の裂け目。
真君はその光を見続けていた。
誰も気づかぬ闇を、誰も語らぬ兆しを。
最近、神々の失踪が相次いでいる。
神籍から名が消え、任務中に姿を消す者もいる。
「点はある。だが、線にはならぬ……」
彼は雷光の神将。忠に生き、義を守る者。
だがその“義”が、今、揺らいでいた。
記憶がよみがえる。
かつての任務で訪れた神域──
そこには、神格融合の痕跡が残されていた。
天帝の命令で封印された記録。
誰も語らぬ儀式。
そして、消えた神々。
真君は知っていた。
天帝が何かを始めている。
だが、証はない。声もない。
それが秩序の救済なのか破壊なのか……判じ得ぬ。
雷光は語らず、ただ闇を見つめていた。
そして、もうひとつの記憶──石川五右衛門。
天帝の宝を盗んだとされ、釜茹けの刑に処された男。
その目は澄んでいた。
罪を犯した者の目ではなかった。
「あれは……本当に罪だったのか?」
秩序の名のもとに、罪なき者が裁かれる。
それは、義なのか?
それとも、秩序の暴走か?
真君は静かに呟く。
「義を貫くには、秩序の外に立つ者が必要だ……」
かつて天界を騒がせた猿の影──孫悟空。その奔放な眼差しもまた、胸をよぎった。
自分では動けない。
だが、彼らなら──秩序に縛られず、真実に届くかもしれない。
雷光は沈黙する。
だが、その沈黙の奥に、確かな“希望”が灯っていた。
──第十九話、幕。




