表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五右衛門、異世界で神と天下と有頂天を盗む  作者: 武者小路団丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/30

第9話 天下の寝首

東西東西──(とーざいとーざい)!

蓬莱宮の屋根が震え、四つ巴の影が天を裂く。


孫悟空の如意棒が風を切り、

二郎真君の剣が稲光を放ち、

牛頭馬頭の鎖が地獄の咆哮を響かせる。


だが──五右衛門は笑っていた。

煙管をくゆらせ、月光の下でニヤリと。


「秀吉の寝首をかいた時も、こんな夜だったな……

権力者の影は、いつも隙だらけだぜ。」


その時、蓬莱宮の奥から黄金の光が溢れ出た。

天帝の玉座──天界の心臓部。


そこに鎮座するのは、豊臣秀吉を彷彿とさせる威厳の男。

金冠を被り、天下を見下ろす冷徹な瞳。


「五右衛門……お前の反逆はここで終わる。

秩序を乱す者は、全て抹殺せよ!」


天帝の声が轟く。

天兵の群れが押し寄せる。

秀吉の時代、権力を固めるために非情な排除を繰り返したように──

天帝もまた「天の法」を発動。


光の壁が五右衛門を囲み、空間が歪む。


五右衛門、煙管の灰を弾く。

影を伝ってすり抜ける。


「秀吉も天帝も、同じ匂いがするよ……

権力者の寝首は、いつも甘いな!」


悟空が爆笑しながら飛び込む。

「ハハハ! 秀吉の寝首?

俺も昔、天界にツバ吐いたぜ!

お前と組めば、天帝の玉座も盗めそうだな!」


二郎真君、剣を構える。

「天帝の秩序は絶対! 反逆者ども、斬る!」


牛頭馬頭も鎖を振り、迫る。

「閻魔様の命令だ、五右衛門! お前の寝首、持って帰るぜ!」


四つ巴の混戦が再燃。

五右衛門は「金の巻物」を広げ、天帝の「天の法」の影を盗む。


光の壁が崩れ、玉座が露わになる。


「秀吉の首を狙った時も、こんな隙があった……

天帝、お前の玉座、頂戴するぜ!」


天帝の目が驚愕に染まる。

「おのれ……!」


その時、玉座の足元から這い上がる死者の影。

天帝の裏切りで処刑された魂たちだ。


「五右衛門……なぜ天帝に屈した?

秀吉のように、俺たちを棄てたのか……?」


五右衛門、煙を吐く。

影の記憶を盗み、天帝の過去──反逆者を封じた陰謀が浮かび上がる。


「天帝のルール?

秀吉の天下と同じく、偽善だぜ。

俺は寝首をかくだけだ!」


影が暴走し、天兵を襲う。

混戦は頂点に達する。


五右衛門、玉座の前に歩み出る。

月光が背を照らし、足元から黒い影が噴き上がる。


「天帝……お前の天下も、秀吉のそれも、同じ“芝居”だ。」


煙管の火が赤く灯る。

灰が宙に舞い、影に包まれる。


階段を一段、また一段と染め上げ──


最後の段に足をかけ、五右衛門が両腕を広げる。


「知らざあ言って聞かせやしょう──

天下の寝首、今宵ここで盗み申す!」


だが、口上が終わる前──

地底から這い上がった死者が五右衛門の体を取る。




雷と地獄の炎が交錯し、天帝の瞳がカッと見開かれた瞬間──

五右衛門の体が硬直し、天兵たちが一斉に取り押さえる。


鎖が音を立てて締まり、五右衛門は動けない。

玉座の間には、勝者の空気が満ちる。


天帝は冷ややかに告げた。

「この反逆者を極刑に処す。釜茹での刑だ」


天兵が五右衛門を引き立て、玉座の間を出て行く。

その背を見送る群衆の中──


悟空が、柱の陰からじっと五右衛門を見ていた。

その口元には、笑みともつかぬ歪み。

右手の袖には、小さな木偶人形が握られている。


(さて……この芝居、最後まで付き合ってやるか)


悟空は何事もなかったように、玉座の間を後にした。


──第9話、幕。








第10話 次回予告


「天下の大泥棒、天を盗む!」

神々の芝居は、五右衛門の熱き魂とぶつかり合う。

盗まれた秩序、揺らぐ天界──

五右衛門が最後に盗み出すものとは、一体何なのか?

天帝との直接対決!そして、ついに悟空が動き出す


第10話 天界釜茹で大芝居 


次回もあなたのハート盗みます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ