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嫁して3年、子なしは去れ!と言われたので、元婚家の政敵の屋敷でお世話になります!  作者: 江本マシメサ
第四章 悪を討て

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まさかまさかの危機

 再度、注目は聖人インゴルフに集まった。

 その瞬間、彼は恍惚こうこつの表情を浮かべる。

 どうやら人の関心を引くことが、快感になっているようだ。

 呆れたとしか言いようがない。

 それよりも、私を偽物扱いするとは……。


「彼女は聖女を騙る、まったくの偽物!」


 人々は戸惑いの表情と共に、聖人インゴルフと私を交互に見る。

 残念ながら私自身が本物の聖女という証拠はない。

 そのため、どうしたものかと思っていたら、エーリク様が言い返してくれた。


「何を言っている。ここにいるのはメクレンブルク大公家に尽くし、聖教会での活動に加え、慈善活動にも精力的だった、メクレンブルク大公家の聖嫁と呼ばれていたお方だ!」

「流行りに乗じて、どこぞの舞台女優を立てただけでは?」

「何を言っている?」


 聖人インゴルフが楽しげな様子で言う。


「誰か、オルデンブルク大公と一緒にいる女性が聖女ギーゼラだと証明できる者はいるだろうか?」


 声をかけるも、反応はない。

 その点に関して、申し訳なく思う。

 聖教会では常にベールで顔を隠しており、このような夜会に顔を出すことはなかった。

 そう、つまり、私の顔はまったく知れ渡っていないのである。

 大聖堂で聖騎士相手に通用したのは、彼らの前でだけは比較的顔を晒していたからだ。

 周囲を見渡すも、家族や知人の姿はない。

 終わった……と思ってしまう。

 申し訳なく思ってエーリク様の顔を見るも、彼は聖人インゴルフを睨み付けていた。

 気持ちで負けてはいけない。そう思って私も顔を上げる。


 それにしても、まさかここで偽物扱いされるとは夢にも思っていなかった。

 一方、私達の登場に関して、聖人インゴルフは驚いた様子がない。

 まさか、作戦をわかっていたというのか。

 さすがの彼も、この状況は想像できていなかったと思うのだが……。

 なんて考えていたら、さらなる出来事が私達を襲う。


「彼女こそ、本物の聖女だ!」


 聖人インゴルフがそう叫んだあと、白い修道服に身を包みベールで顔を隠した女性が、ロイス司教と共に登場する。


「なっ――!」

「彼女はいったい……!?」


 あれは私がよく、大聖堂で身に纏っていた服装である。

 私に扮した女性は手を掲げ、口元に笑みを浮かべながら言葉を発した。


「みなさん、長らくご心配をおかけしました。わたくしはこの通り、元気ですので」


 私の声にそっくりで、ギョッとしてしまう。

 それを聞いた人々は即座に反応した。


「メクレンブルク大公家の聖嫁様だ!」

「ああ、メクレンブルク大公家の聖嫁様に間違いない!」

「やっとお会いできた!」


 皆、突然現れた偽聖女のもとへ集っていった。

 エーリク様は信じがたい、という瞳で目の前の状況を見つめている。


「あの者はいったい……」


 思い当たるのは一人しかいない。


「おそらく、聖女を演じているのはイゾルテでしょう」


 舞台女優イゾルテ・グリーム――彼女にかかってしまえば、聖女を演じることなど容易いことなのだ。

 舞台女優に偽物を演じさせていたのは、聖人インゴルフのほうだったのだ。


「なっ、イゾルテ・グリームだと?」

「ええ」


 身長や立ち姿から推測するに、間違いないだろう。

 修道服は腰回りがゆったりしているので、妊娠しているお腹が目立たない。

 イゾルテにとって都合がいい装いのようだ。


 聖人インゴルフはしてやったり、という眼差しを私達に向けていた。

 そんな中で、彼は予想だにしない発表を行う。


「聖女は隣にいる、ロイス司教との結婚が決まったんだ。皆、祝福するように!」


 どうやら作戦は私達とまったく同じ、婚約を発表することによって、聖女は手の内にあると訴えたかったのだろう。

 それを聞いたエーリク様は「やられた!」と吐き捨てるように言った。

 次の瞬間、何か発見したようで、ズンズン歩き始める。私も離れないようにあとに続いた。


「おい、お前――!」

「ひい!」


 エーリク様が腕を掴んだのは、見覚えのない男性。

 ぐっと接近し、周囲の人々には聞こえないような声で話しかける。


「情報を漏らしたな!?」

「も、も、も、申し訳ありません!」


 彼は新聞社の記者らしい。

 私達の作戦を知る唯一の人物でもあった。

 エーリク様と懇意にしていたようだが、聖人インゴルフに今日の作戦について話してしまったという。


「つ、妻と、こ、子どもを、人質に、さ、されていまして……」


 どうやら聖人インゴルフは手段を選ばず、卑怯な手を使ってでもこの場を支配したかったらしい。


 エーリク様は記者の腕を放すと、悔しそうに背を向ける。

 この一ヶ月間、秘密裏に動いていた作戦が失敗した。

 聖人インゴルフはそんな私達の姿を見て、嬉しそうに微笑んでいる。

 本当に性格が悪い、と思ってしまった。


 ここで、国王夫妻が登場した。


「ああ、我らが国王に王妃――ちょうどいいところにいらっしゃった」

「ずいぶんと盛り上がっていたようだな」

「楽しそうね」

「ええ、ええ、そうなんです。前代未聞の事態となりまして」


 聖人インゴルフは聖女に扮したイゾルテを紹介したあと、私達を手で示しながら言った。


「ご覧ください、このおめでたい席に、偽物聖女がやってきたんです」

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