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嫁して3年、子なしは去れ!と言われたので、元婚家の政敵の屋敷でお世話になります!  作者: 江本マシメサ
第二章 聖教会での騒動

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朝食を作ろう

 まずは朝食を用意しよう。

 ふわりんと共に蒸留室スティルルームに転移する。


「さて、朝食のメニューを考えませんと!」


 まず、食材を把握してみる。

 自給自足をしていると聞いていたが、いったいどんな物を作っているのか。

 食品庫にはニンジン、ジャガイモ、カブ、キャベツ、カボチャ、ホウレンソウなど、種類豊富な野菜がある。

 他、乾燥キノコや魚の水煮、ジャム、小麦粉などの保存が利く物もある。


「どの食材を使いましょうか」


 ひとまず、主食を作るために必要な小麦粉を手に取る。

 今から調理に取りかかるので、発酵に時間のかかるパンは難しい。

 もっと手軽に簡単なものを、と考えていたらハッと閃く。


「パンケーキを作りましょう!」


 材料は小麦粉に砂糖、塩、ふくらし粉にバター、牛乳――それから卵。

 パンケーキなんて久しぶりだ、とわくわくしながら卵を手に取ったあと、緑色の黄身だということを思い出してしまう。


「これを使ったら、緑色のパンケーキになりますわね」


 卵がなくとも、パンケーキは作ることができる。別の料理に使おうと思い、そっと戻しておいた。


 ボウルに目分量で小麦粉や砂糖、ふくらし粉、塩を入れていく。


「あとは牛乳を――」


 床下にある地下収納を開いたが、牛乳は見当たらない。

 昨日、牛乳は毎朝搾って新鮮なものがある、という話を聞いていたのだが。


「もしかして、切れているのでしょうか?」


 なんて呟いた瞬間、蒸留室スティルルームの床に魔法陣が浮かんだ。


「あら?」


 エーリク様かと思ったが、浮かんだシルエットは小さい。

 私の膝丈くらいだろうか。

 光に包まれていたその姿が露わとなる。


『ンー?』


 私を見て小首を傾げていたのは、二足歩行をした大根ラディッシュみたいな生き物。

 三角帽子を被り、片眼鏡モノクルをかけていて、木の枝のような手には牛乳が入った瓶を抱えていた。


「あなたは?」

『メルヴ・ウィザードダヨ!』

「ど、どうも、初めまして。わたくしはギーゼラ・フォン・リンブルフと申します」


 葉っぱの手先を差しだしてくれたので、そっと握った。

 この子――メルヴ・ウィザードとはいったい何者なのか、と思っていたが、そういえばエーリク様が使い魔がいる、と話していたのを思い出した。


「メルヴさんはエーリク様と契約をされている使い魔ですの?」

『ソウダヨ!』


 朝から乳搾りをして、牛乳を運んできてくれたようだ。

 魔法で殺菌もしているようで、すぐに飲むことができるらしい。


「わたくし、料理に牛乳を使おうと思っておりまして、いただいてもよろしいでしょうか?」

『イイヨ!』


 メルヴ・ウィザードは快く牛乳を差しだしてくれた。


「ありがとうございます」


 感謝の気持ちを伝えると、気にするなとばかりに手を振ってくれた。


『料理、手伝ウ?』

「よろしいのですか?」

『イイヨ!』


 力仕事が得意だというので、二品目に使う卵料理のメレンゲ作りを任せることにした。

 私はふわりんに見守られながら、パンケーキ作りに集中する。

 先ほどのボウルに新鮮な牛乳と油を注いでかき混ぜる。

 生地が完成したら、熱した鍋にバターを落とし、生地を流し込む。

 表、裏ときつね色になるまで焼いて、最後に弱火で蒸し焼きにしたらパンケーキの完成だ。

 次なる調理に取りかかる。カットしたホウレンソウを茹でて乳鉢ですり潰し、ペースト状にした。


『メレンゲ、コレデイイ?』

「はい、ありがとうございます!」


 メルヴ・ウィザードが作ってくれたメレンゲに、緑色の黄身、それからホウレンソウペーストを加えて混ぜる。刻んだベーコンも入れて、コショウで軽く味付けをしてから焼いていく。

 メレンゲを崩さないよう、慎重に焼くのがコツだ。


「上手く焼けました!」


 ホウレンソウとベーコンの、スフレオムレツの完成だ。

 これは緑色の黄身が気にならないように考えたメニューである。

 ホウレンソウが入っていると思えば、拒絶反応もなく食べることができるだろう。

 あとはソーセージを焼き、付け合わせの温サラダを添えて盛り付けたら、ワンプレートモーニングの完成だ。


「メルヴさん、ありがとうございました。とても助かりました」

『イイヨ!』


 まだ仕事があるらしく、メルヴ・ウィザードとはここでお別れとなった。

 エーリク様はお気に召してくれるだろうか。ドキドキしながらふわりんと共に食堂へ転移する。

 まだエーリク様はいないようだ。

 紅茶を淹れ、蒸らしている間にエーリク様がやってきた。


「エーリク様、おはようございます!」

「……おはよう」


 エーリク様は朝が弱いのか、顔が見えなくなるくらい頭巾を深く被っていた。


「お食事を用意しました。お口に合えばいいのですが」

「これ、朝から作ったのか?」

「はい」


 毒見など必要があればしてほしい、と自ら申告したものの、しなくてもいいという。


「食卓には毒に反応する魔法をかけてある」


 どのタイミングで毒が混入されるかわからないため、念には念を入れているようだ。

 さすがとしか言いようがない。


 エーリク様は椅子にすとんと腰を下ろし、食前の祈りを始めた。

 私も同じように、手と手を合わせる。


「いただくとしよう」


 ドキドキしながらエーリク様が食べる様子を見守る。

 まずはパンケーキから食べるようだ。

 上に載せたバターがほどよく溶け、食べ頃となっている。

 エーリク様は一口大にパンケーキを切り分け、ぱくりと頬張った。


「――!!」


 エーリク様は突然、口元を押さえたのでギョッとする。


「あの、おいしくなかったですか?」

「違う……とてもおいしい」


 その言葉を聞いて深く安堵する。


「こんなにおいしいパンケーキは、生まれて初めて食べた」

「よかったです」


 他の料理もお口に合ったようで、ホッと胸をなで下ろす。

 朝から頑張ってよかった、と思ったのだった。

 

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