009 ああ、勝負?それよりダンジョン最深部よりもタツヤンの顔が深い…
<リカ>
ユイナ、リチャード、エルフィーナの三人は、酒場のにぎやかな雰囲気の中で楽しいひとときを過ごしていた。焼きたての肉がジューシーで、色とりどりの野菜が見た目にも美しく、パンの香りが鼻をくすぐる。まさに、心地よい満足感に包まれていた。
その時、酒場の扉がガラガラと開き、クリムゾン・ガーディアンズの一行が登場した。酒場の空気が一変したのは、まるで映画のワンシーンみたいで、ちょっとした興奮を覚えた。みんながその登場に注目し、ささやき声が広がる。
「おお、ついに来たか…」
「本物の勇者たちだ!」
本物の勇者たちって、こういう風に注目されるんだ、と感心していると、まるで舞台の上を歩く俳優のように、クリムゾン・ガーディアンズが堂々と歩みを進めてきた。ああ、やっぱりあの気取り具合、いかにも「勇者」って感じだなー。なんて思っていると、その中のタツヤンが突然、私に向かって歩み寄ってきた。
「ユイナ、貴様、生意気にも『暗黒の迷宮』に入るだと?」
うーん、ここで「生意気」って…まるで私が宇宙一の悪党みたいな言い回し。少し驚きながらも、私は冷静にタツヤンを見返す。
その後ろから、リカが皮肉を込めて言葉を投げつける。
「だめよ、あんたなんて、二度と帰ってこなければいいのよ。」
おお、これまた定番の台詞! まるで悪役のセリフそのまんまだ。あまりにも予想通りすぎて、思わず笑いそうになる。私は心の中で「お疲れ様です」とつぶやきながらも、表情には出さない。
そして、デナヤンが冷笑しながら口を開く。
「オーガキングを倒したぐらいでいい気になるなよ。」
もう本当に、みんな「最強の相手」って感じで来るんだな、とちょっと面白くなってきた。でも、こういうの、私も慣れてるからなー、と思いながら、ポカッチがにやりと笑って言う。
「どうせマグレだ。」
なるほど、「マグレ」。大丈夫、そこまで私を軽く見てもらって全然構わないよ。でも、このノリが懐かしい。気がつくと、どこか楽しくなっている自分がいた。
そのとき、思わず「まさか、こんなところで言われるとは思わなかった」と呟く。でも、すぐに笑顔を引っこめ、少し真剣な顔に切り替える。
「そういうことなら、私たちのパーティーも負けません。」
エルフィーナがにやりと笑って言うと、タツヤンは一瞬言葉を飲みこんだかのように見えたが、すぐに顔を引きしめ、こちらに歩み寄ってきた。
「ふん、いいだろう。ならば、ダンジョンでどちらが先に最下層に到達できるか、勝負だ。」
この流れ、すごく面白い。いかにも「勇者同士の激闘」みたいで、今までの人生でこんな状況、あんまり経験したことがない。どこか新鮮な気分だ。
リカがにっこりと不敵な笑みを浮かべて続ける。
「最下層に到達するのは、我々だ。」
それにリチャードが、さらっと言う。
「それなら、遠慮なく挑戦させてもらおう。」
もう、この二人のやりとりが最高に楽しい。私もつい笑顔になってしまう。
「じゃあ、どちらが先にダンジョンの最深部にたどり着けるか、楽しみだ。」
エルフィーナも腕を組みながらクリムゾン・ガーディアンズを見つめている。お互い、心の中で火花を散らしているんだろうな。
「負けないから!」とエルフィーナが言ったとき、酒場の空気は一気に盛り上がった。みんな、どちらが先に最下層に到達するかが気になって仕方がない様子。観客たちの興奮の声が次々に響いていた。
さて、どんな冒険になるんだろう。この後の展開が楽しみすぎて、正直言ってワクワクしている。クリムゾン・ガーディアンズに勝つのは簡単じゃないだろうけど、私たちには負けない理由がある。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。