表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/31

002 世界の救世主、実は全然覚えてない

リチャードの言葉が、私の頭に響く。


「ユイナ様が命をかけて世界を守り、今、新たな命を授けられました。この世界で、あなたの役割を果たすために。」


私は言葉を失った。ただ、それを飲みこむしかなかった。自分が誰で、何をしていたのか、全く思い出せない。全てがぼんやりとして、遠くに感じられる。


「私が…英雄だったの?」と、私はぽつりと呟く。


リチャードは少しだけうなずいた。


「どうして、私は転生したんだろう…」と、胸の奥からわき上がる問いを口にする。リチャードはしばらく黙っていた後、おだやかに答えた。


「お嬢様、私が執事としてお仕えしている以上、私はお嬢様の過去も未来も、全ての責任を持って見守るつもりです。その答えも、必ずお嬢様の中にあります。ですが、今はただ、世界があなたを必要としたからだとだけお伝えしておきます。」


「世界が…私を?」と、私は驚きと不安をこめて尋ねる。


リチャードは私をじっと見つめ、おだやかな声で続けた。


「はい。この世界で、あなたには果たすべき役割があります。それを理解し、受け入れることが、あなたの使命です。」


その言葉を受け、私はしばらく何も言えなかった。今、自分の目の前に広がっているのは、過去でも未来でもない。ただ「今」だ。その重さが心にずっしりと響く。


「役目…」と、私はその言葉を何度も繰り返した。


リチャードは優しく微笑んだ。


「お嬢様ならできる。それを証明するために、私はここにいます。執事として、常にお手伝いさせていただきます。」


その言葉に、わずかながら希望を感じる。しかし、心の中の不安や恐れは簡単には消えない。


私は深呼吸をして、リチャードを見つめる。過去も未来もわからない。それでも、今、ここで何をすべきかだけは、はっきりと感じていた。


「私は…やらなきゃいけないのね。」

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ