エリュシオンからの帰還と15年前の事件の終結
智紀達が目覚めたのは、もといた事件のあった叔父の旧家だった。
「エリュシオンから戻ってきたんだ……」智紀が言った。
「夢だったのかな」史郎が呟く。
「ううん、夢なんかじゃない」蘭が言った。
「そうだな……」蓮羽も同意した。
「あれ見て!!」光が怯えたように叫んだ。
そこにいたのは、ボロボロになった黒沢だった。
手に庭に咲いてあるダリアを持っている。
黒沢はダリアの花を眺めながら、ポツリと口をひらいた。
「……ダリアの花言葉を知っているかい?ダリアの花言葉は……『裏切り』」
そしてゆっくりと語りだした。
「事件の真相をおしえてあげるよ。乃蒼君の父である、義光は、大學卒業後、音楽作家として華々しく活躍し、美しい妻、由紀と子供2人を得た。俺は義光に大學のサークル仲間の縁で、作曲を提供した。しかし、あいつは『これはつかえない』と笑った」
「悔しかった…悲しかった。あいつのすべてを破壊してやろうと思った」
「その日、義光の家にいき、口論になった。口論の末、持ってきたナイフで義光をめった刺しにした」
「おれのほうがすごい!!おれのほうがすごい!!」
憎しみと涙が溢れ、何度も刺した。
死に際、「驕るな。お前は世界も狭く、自分の事しか考えてない。尊敬されるためには尊敬するべきだ」義光は俺に、この俺に説教してきたんだ!!
「うるさい、うるさい、うるさい!!」
義光は絶命した。
その後、妻の由紀を手籠めにして胸を刺した。
長男の正は家に部活でいなかった。
2階に次男の乃蒼がピアノを弾いていた。由紀は刺された体を引きずり、乃蒼を守るため体を這ってきた。俺は由紀にとどめを刺した。
俺は二階に上がった。
扉を開くと、なじみのある曲が聞こえてきた。
「……ザルガバース城で叔父さんが弾いてた曲ですね」
智紀が言った。
「それは俺が作った曲だった。義光に貰ったのか、自分で発掘したのかわからなかったが。涙が溢れた。この子を殺したら、俺はもう何もなくなってしまう……楽しかった大学時代も、夢も、音楽作家を志す大切な意思も……」
「殺せなかった……殺せなかったんだよう……」
黒沢はその場にへたりこんだ。
そこにエリュシオンから帰還した、星哉、加奈子、小夜が黒沢を捕らえた。
外には警察のパトカーが何台も止まっていた。
こうして15年前の事件は幕を閉じたのである。
42話よろしくお願いします。いつもよんでくださり、感謝です。