決着
乃蒼は黒沢に真摯に向き合った。
「死んでも良いと思ってました。僕の命が、このエリュシオンの役に立てればいいと思ってました。でも……!!」
乃蒼は最終形態のピアノに座ると、曲を弾いた。
「この曲は……」黒沢が怯んだ。
乃蒼の音色で次元が開き、智紀・光・蘭・史郎・蓮羽が吸い込まれた!!
「智紀君!!」
「光ちゃん、蘭君、史郎君、蓮羽君!!」
星哉と小夜の声が遠くから聞こえた。
…
…
智紀達は、最初に来たアテーナイエの城、マルクト王国に召喚された。
コロ爺が歩み寄り、
「お久しぶりですじゃコロ。小さき者たちよ」コロ爺は続けた。
「女神アテーナイエさまの訃報は爺の耳にも入ってきてますのじゃ。悲しいことじゃが、最後に一番会いたかった乃蒼様に会うことができ、アテーナイエ様も浮かばれていることでしょうコロ」
「コロ爺さん……」
コロ爺が涙を白いハンカチで涙を拭っていると、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴと城から大きな音がした。
「この城……なんかだんだん小さくなってない?」史郎が言った。
「ほっほっほ。真のマルクト城の姿をお見せしましょう!!ひとまず、城の外に避難じゃ!!」コロ爺が片腕を広げた。
「逃げろー、逃げろー、ラララララ~」メイド天使たちが歌いながら逃げ惑う。
智紀達が城の外に避難すると、マルクト城はだんだん小さくなっていき、なんと、剣の姿になった!!
水晶の剣がキラキラと輝いた。光を受け虹色に見える。
「マルクト城自体が剣だったんだ!!」
コロ爺はその剣をナイトである智紀に託した。
「必ずや、ご無事で」コロ爺が頭を下げると、次元が開き、智紀達はふたたびザルガバース城に転送された。
「うっ…」
ザルガバース城に戻ると、乃蒼はピアノによる召喚術で弱っていた。あまりにも、大きな召喚だった。
「叔父さん!!」
「智紀、僕は平気だ。それより、その剣でザルガバース…ううん、サムソンと黒沢を倒すんだ!」
「乃蒼君は、俺らが守るからだいじょうぶだ!!」
星哉、加奈子、小夜の英雄チームたちが乃蒼を守るように囲んだ。
竜騎士の蓮羽が智紀を連れ、上空に飛んだ。
「行け!!」
「連携技を!!」智紀が叫ぶ。
「任せて!!」
黒魔導士史郎が剣に2倍の力を与える魔法をかける。
「智紀君、受け止めて!!」
白魔導士光が聖の魔法を剣にかける。
サムソンである黒沢が反撃しようと構えた。
「そうはさせねーよ!!」
銃使いの蘭が黒沢に銃を打ち込み、阻止した。
ナイトの智紀は上空から剣を振りかざし、一気に下した。
光の刃がサムソンである黒沢を貫き、彼は倒れた。
「……やったのか?」
「そうみたい」加奈子が言う。
サムソンが光の中に居る。
目の前には、愛した人、マリアンヌが微笑んでいた。
そして、乃蒼の目の前に、アテーナイエが現われる。
「試練に立ち向かい、よく頑張りました。愛していますよ」
アテーナイエが微笑みながらそう言うと、乃蒼は涕泣し、
「僕は死なない。有難う、母さん」
と、アテーナイエに告げた。
黒沢を倒し、ザルガバース城の外の草原に出てきた智紀達。
光に包まれ、それぞれの融合者から英雄たちが抜け出た。
「お別れだな、智紀たち、星哉」英雄ジークフリートが笑う。
「ありがとう、エリュシオンを救ってくれて。感謝します」英雄の巫女ネイトがお礼をした。
「また遊びにきてもいいわよ」英雄アンナがウインクする。
「またおじさん、おばさんに戻っちゃったな」星哉が笑った。
皆も笑った。
「……チビノア」
乃蒼が最終形態のピアノの破片を手に取った。
それは、王冠に変わった。
「エリュシオンの宝、ステファノスを君に授ける」
乃蒼は、チビノアに王冠をかぶせ、抱きしめた。
「ありがとう」
「永遠の王の誕生だ!!」
智紀が嬉しそうにはじゃいだ。
「かっこいいぜ、チビノア!」蘭が喜ぶ。
「良かったな」蓮羽が笑う。
「エリュシオンを頼んだよ……」史郎が言う。
「英雄が皆ついてるから大丈夫よ!!」光が言った。
新たな王のチビノアと英雄たちが手を振ってる。
智紀達の意識がだんだん遠くになっていく。
遠く……遠く……。
いつも読んでいただき、感謝です!41話よろしくお願いします!!
楽しんでいただけたら幸いです。