ケセドの港と船ビナー
帝国ケブラーは北の土地に在った。現時点のティファレトの南の地からは、ラクチョボでは行けず、船で行かなければいけなかった。
ティファレトで食料を調達した智紀達は、ティファレトの近くのケセドの港を目指した。
ケセドの港は観光地になっており、大型客船も寄港する港周辺は、レストランやカフェが軒を連ね、プロムナードになっていた。
近場の海で捕れた新鮮な魚介をふんだんに使ったグルメのレストランがあり、その匂いが鼻腔を擽った。
「わーーーーーーーーおいしそう」智紀達が目を輝かせると、
「ティファレトで食料は調達してるよ。無駄遣いはよそう」チビノアに牽制された。
レストランのTVのニュースで、
「魔王ザルガバースの城に討伐に向かっていた、マルクト王国の王エリュオニム様がザルガバースに敗れました」と、ひっきりなりに報道されていた。
「まさか……エリュオニム様が!」
皆が騒いでいる。
「最初に転送されたお城の王様!!魔王ザルガバースに倒されたの?由紀おばあちゃん…ううん、アテーナイエさんは?」
「アテーナイエ様は、このことを知り、ここケセドの港にいるらしい。ビナーの船で夫・エリュオニム様の仇を取るためにザルガバース討伐に赴くようだ」
ケセドの街の人がうわさ話している。
「女神アテーナイエが、ここケセドの港町にいるんだ!!合流しよう!!」
智紀達が港に急いだ。
港に着くと、多くの船が止まっていたが、女神アテーナイエが居るビナーの船はすくわかった。大きくて豪華な戦闘も兼ねそえた船だった。
中に入ると、女神アテーナイエが護衛の者と一緒に立っていた。
「アテーナイエさん……」
智紀達はなんて声を掛けていいかわからなかったが、女神アテーナイエは気丈に、
「ああ、かわいい子達よ、なんと久しい事でしょう。精悍な顔立ちになりましたね」
と微笑んだ。
「魔王ザルガバースを討伐に行くんでしょう?僕たちは、魔王ザルガバースと戦争を始めた帝国ケブラーをめざしているんです」智紀がアテーナイエに言うと、
「わかりました。このビナーの船で一緒にまずは帝国ケブラーを目指しましょう」
アテーナイエが頷いた。
「私ならば、帝国ケブラーの皇帝と謁見を設けることができます。英雄サムソンの召喚についても役立てるでしょう」
「ありがとう。まずは帝国ケブラーに行き、皇帝と謁見をしよう」
チビノアが言った。
女神アテーナイエの船、ビナーは、北の地帝国ケブラーに帆を進めた。
第26話よろしくおねがいします。楽しんでいただければ幸いです。
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