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ブラックジョークの魔王、最近太ってきたのでダイエットに挑戦する。魔王は外見も重要なのだ。

登場人物と概要:


ヴィクター: 冷酷無比な悪役。ブラックジョークで世界を混乱に陥れることを企む。

ミスティ: ヴィクターの忠実な腹心。ヴィクターを盲目的に崇拝するが、どこか抜けている。

アキレウス: 正義感溢れるヒーロー。ヴィクターのジョークが理解できず、イライラしてしまう。

 地上を漆黒に染め、 ブラックジョークを駆使して世界を我が手に収めようとする私、魔王ヴィクターは、いつの間にか腹囲がずいぶんと膨らんでいた。


「腹が減っては戦はできぬ……とはいうものの、この肥満では説得力がまるでないではないか!」


 世界征服を企む魔王たるもの、外見もまた然るべく整っていなければならない。それゆえに、過去私を嘲笑った愚か者たちへの復讐を遂げるためにも、このたるんだ体を何とかせねばならぬと痛感したのだ。


 私はかのコメディアンのごとく、極上の自己嫌悪を糧にダイエット計画を策定した。

 ブラックジョークの魔王がカロリー計算に余念ない日々を送るなど、なんともシュールな光景であった。


「ミスティー、俺の腹回りをなんとかする方法を教えてくれよ。ダイエットしたいんだ。」


 私は太り気味で、服がキツくなってきたのだ。相談相手は私の腹心、ミスティー。彼女のダイエット方法はいつも奇抜で、聞いているだけでお腹がよじれそうになる。


「キャットフードを食べるんです!」 


 ミスティーの第一声は衝撃的。猫の餌でダイエットするとは、いったいどういうことだ?


「猫じゃないだろ、俺は。」 私は当然のように否定した。


「でも、キャットフードは低カロリーで満腹感が長続きしますよ。」 ミスティーは食い下がらない。

「それより、もっとまともな方法はないのか?」 私は真剣に尋ねた。


「じゃあ、ヴィクター様、一日中鏡を見つめましょう。自分の太った姿を見れば、食べる気が失せます。」 


今度は鏡ダイエット。ますます現実味がなくなってきた。


「冗談だろ?鏡を見るたびに食欲が増すよ。」 私は苦笑した。


「わかりました。それなら、寝る時にお腹に重しを置きましょう。そうすれば、寝ている間もカロリーを消費できます。」 重しダイエット?もはや拷問に近い。

「それは拷問だ。俺は眠れないよ。」 私はさすがに断固拒否した。


「でも、ダイエットには効果的なんです!」 ミスティーは相変わらず真剣だ。

「ふざけるな。もういい加減にしろ。」 私はついにキレてしまった。ミスティーのダイエット方法は、どれもとんでもなさすぎて、実践する気にはなれなかった。


◇◆◇


 私は眠れない夜に、窓辺から夜空を仰ぎ見るのが習慣だ。漆黒の闇に瞬く星々は、まるで誰かの冷笑のように皮肉に光っている。そんな中、私の腹心、ミスティーが飼っている猫のことを考えている。


 ミスティーの猫は、丸々と肥えた三毛猫で、名はモリー。毛づくろいを怠らないせいで、いつも艶やかな毛並みだ。彼女の娘のように可愛がられ、常にミスティーのそばにいる。


 そんなモリーが、私には不思議で仕方ないのだ。なぜ彼女は、クソつまらないジョークを連発する私などそばにいるのか?私にとって、ジョークは復讐の武器であり、世界を嘲笑するための手段だ。しかしモリーは、私のジョークに決して笑わない。


 彼女はただ、温かい瞳で私を見つめ、喉を鳴らすだけだ。その姿が、私の冷酷で皮肉な心を少しだけ揺さぶる。私は、モリーにジョークを言うのをやめた。なぜなら、彼女にだけは、私がまだ失っていないかすかな人間らしさを見せてあげたいからだ。


 モリーは、私が世界を憎む中で、唯一の安息の地だ。彼女の存在が、私の孤独を少しだけ和らげてくれる。まるで、暗闇の中でかすかに光る、嘲笑に満ちた星明かりのようにな。


 ◇◆◇


 私の視線は、バスルームの鏡前の散らかった棚に置かれた奇妙なオレンジ色のボトルに囚われた。その派手なラベルには、「ミラクル・ダイエット・ピル」と誇らしげに記されていた。私はあきれて笑いをこらえた。


「本当に?これがダイエットに効くのか?」と私はつぶやくと、ボトルを手に取った。ラベルには、この魔法の薬が脂肪を瞬時に溶かし、夢のような体を叶えてくれると約束されていた。思わず首を傾げた。本当にそんなことが可能なのか?


 好奇心と懐疑心が交互に湧き上がった。私はボトルの蓋を開けると、鼻を突く甘い香りに包まれた。錠剤は驚くほど小さく、キャンディーのようだった。ひとつ摘み上げ、迷いながら口に入れた。


 味は予想外に甘く、ハーブの味がした。しかし、まもなくして異変を感じた。腹部に鈍い痛みと吐き気が襲ってきた。私は慌てて鏡に向かい、自分の顔色が蒼白くなっているのに気づいた。


「これはヤバい」


 私は叫んだ。トイレに駆け込むと、何度も激しく嘔吐した。ようやく収まった頃、私はぐったりと倒れ込んだ。ダイエット薬のくだらない用途を思い知らされたのだ。私は二度とこんなものを口にしないと誓った。


 ◇◆◇


 数値ばかりを追いかける自分に呆れながらも、それでも私は不屈の闘志を燃やした。


 走りに走り、筋を鍛え、そして己の食欲と対峙した。気がつけば、 ブラックジョークの切れ味も一段と鋭くなり、腹囲も次第に引き締まっていった。


「我が肉体は日に日に鍛えられ、ジョークもかつてないほどに研ぎ澄まされていく。これはまさに、新たな伝説の始まりではないか!」


 そう、私はかつてないほどの自信に満ち溢れ、悪のカリスマとして再び世界に君臨する時が来たことを悟ったのだ。

 しかし私のダイエット作戦は大惨事だった。カロリー計算が災いして、私はコメディアン並みの自己嫌悪に陥るどころか、単なるイライラ製造機になってしまったのだ。


「おっと、皆さん!私はかつてブラックジョーク界の頂点に君臨した大魔王です。だが、今は生まれ変わりました。ブラックジョークではなく、純粋な笑いをお届けします」


 シャレにならない悪夢にうなされながら、ダイエットになんとか成功?したのだ。


 私の忠実な部下ミスティは、私の体型変化を大いに喜んだ。彼女は、

 

 「魔王様、ますます素敵にならないでくださいよ...」


 と、私のかつてのふくよかな魅力を熱弁した。一方、英雄アキレウスは、私のダイエットを「世界征服への新たな策略」と疑い、警戒を強めるばかりだった。


 しかし、私のダイエットは外見の変化だけにとどまらなかった。空腹を紛らわすために始めたブラックジョークの妄想が、やがて過激で残忍なものへと変貌していった。私のジョークは単なるユーモアを超えて、真の闇へと落ちていったのだ。


◇◆◇


 鏡に映る自分の姿は、かつての私とは別人のように映った。鋭い目つき、痩せこけた頬、そしてどこか影を帯びた表情。私の体は痩せ細ったが、その内面はかつてないほど荒廃していた。


 ジョークが私の精神に作用し始めたのだ。私はある人物を崖から突き落とす妄想に取り憑かれ、その場面を事細かに想像した。血が飛び散り、骨が折れる音が聞こえてくる...。その残酷さは、私を震え上がらせた。


「例えば、なぜ葬式で遺体がいつもおめかししているのかわかりますか?それは…最後のデートだからです!」


 私は自分が壊れていくのを感じていた。ダイエットは私を痩せさせるどころか、私の人間性を奪い取ろうとしていた。このままでは、私は真の怪物になってしまう。


 私は決断した。この悪夢のようなダイエットをやめるのだ。もう二度と、カロリー計算なんてするまい。そして、このブラックジョークの妄想から自分を解放しなければならない。


 だが、その道は険しいだろう。私の内面には、闇が巣喰っている。私はそれを打ち負かさなければならないのだ。

私はこの小説をとても面白く読みました。ブラックジョークの魔王という一見威圧的な存在が、ダイエットに挑戦するというギャップが最高です。


魔王は、一見強くて恐ろしい存在ですが、実は外見を気にしたり、ダイエットを頑張ったりと、意外な一面が見られます。そんな人間の姿をした魔王に親近感が湧きました。


ダイエットの過程では、魔王がジョークを飛ばしながらも、誘惑に負けそうになったり、挫折したりする様子が描かれています。魔王のユーモアと人間らしさが相まって、笑いながら読み進めることができました。


この小説は、ただ単にダイエットの話を描いているわけではありません。魔王のダイエットを通して、努力することの大切さや、外見だけでなく内面も磨くことの重要さを学べます。


魔王がダイエットを成功させ、自信を取り戻す姿は、とてもカッコよかったです。私も魔王のように、困難に負けずに努力し続けたいと思いました。


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