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神の話のかけら

お父様への質問タイムのはずが、国の秘密の一端に触れる事に!

アナタハカミヲシンジマスカ?

「さあ、アデル。尋ねたい事があるなら言ってごらん」

「お父様、私は何故、襲撃されたのでしょうか。私は嫌われているのでしょうか」


「そんな事は無い。そなたはまだ公の場に出た事は無いし、そなたの周囲に仕えている者達の評判も良い。個人的にどうこうと言うより、王家に対して思う所がある者の仕業と考えた方が良いであろう」

「では、これからも今回の様な事があるのでしょうか」

「それは判らぬ。判らぬから万全の体制を取るのだよ」


 私はふと思いついた疑問を口に出す。


プルガーバプティーモ(洗礼のための禊)スは、危険だと判っていても絶対にしなければならないのですか?」

「ああ、そうだ」

「どうしてですか?」

「王家の洗礼は、特殊だと言ったな。そなたの洗礼の直前に話そうと思っていたが良い機会だ。話して聞かせよう。ランベール宰相、盗聴防止の魔法をかけてくれ」

「かしこまりました。魔法をかけたら、他の者は魔法の範囲から出るように」


 そう言うと、ランベール宰相は小さな声で何か呟く。すると、私達を中心に直径4m程のお椀を伏せた様な半球状の水色の膜が私達を覆った。

 騎士や側仕えは、その範囲から出て私達を見守る。

「さあ、これで何を話しても私達以外には聞こえない」


 ランベール宰相、すごい! ここは魔法ありの世界だと、治癒魔法と聞いた時に思ったけれど、こんなに早く実際に見られるとは思わなかった。


「アデル、今から話す事は王家の秘密に関する事だ。この事は、王家の者と公爵家の当主以外は誰も知らない。神との契約により他に話す事を禁じられているのだ。秘密にできるかな?」

「はい。…えっと、本当に神様と契約しているのですか?」

「ああ、そうだよ」


 ちょっと待って! 

 神様と契約ってどうやってするの? 

 神が実在するって事? 

 この世界では普通の事なの?


「王家が神と契約しているという事自体は、建国の由来の話として広く知られておりますよ。姫殿下は、聞いた事はございませんか?」

「あ…、いえ、ありません」

「もっとも、お伽話と思われている様ですが…」


 宰相がニコニコしながら教えてくれる。


「あら、話して聞かせた事無かったかしら?」

 お母様が右手を頬に当て、首を傾げて呟いている。


「王家のコントラビデウスという名は、初代国王が建国の際、神から賜った名だ。古い言葉で神の契約者という意味なのだよ」

「そうなのですね」


 初めて聞く話にワクワクする。


「洗礼も神との契約が関係するのだ」


 私は、お父様に理解できている事を伝える為に、頷きながら話を聞く。


「洗礼の時に神から加護を賜るのは皆同じだが、王族とその他の者ではその方法が違う。他の者は、礼拝堂にあるデアラピス(神の石)と呼ばれる魔石に魔力を奉納し、祈りを捧げる事で加護を授かる。だが王家の者は、デアフォルフォンス(女神の泉)で3週続けて(みそぎ)を行い、城の一番奥にある神殿で魔力と祝詞を奉納する。そこでは、神の化身である黄金の獅子が顕現(けんげん)するのだ」

「黄金の獅子ですか?」

「ああ、御名をレオアウリュム様という」

「その獅子様が神様なのですか?」

「いや、人間と神の仲介役と言った方が近い」


 いや、本当の事なの? 

 まあ、でもお父様が嘘つく訳ないし…。

 しかも話がドンドン壮大になってるし…。

 ワクワクからドキドキに変わってきたよ。


「アデルは、六柱の神の御名を覚えているか?」

「いいえ、覚えたかもしれませんが、忘れてしまっています」

「デアフォルフォンスで祝詞を奏上したはずだが…」

「…えっと、覚え直さないといけないですね」

「うむ、そうしなさい。祝詞には必ず六柱の神の御名が必要になる。

 レオアウリュム様は、六柱の神の化身であり、代弁者でもある。

 顕現されて、直接、王家の者に寿(ことほ)ぎのお言葉と加護を授けてくださるのだ」

「直接、加護を…」


 前世での神は私にとってとても理不尽で、気まぐれで、祟るものというイメージだった。


「洗礼の最中にあった事は、立ち会った者以外、誰にも話してはいけない」

「はい。解りました、お父様」


「レオアウリュム様のお姿は、王家の者として登録された者にしか見えない。

見えないものはいくら説明しても理解が得られず混乱を招く。決して言ってはいけないよ」


 登録? 

 登録ってそのままの意味? 

 どこに、いや何に登録されるんだろう。

 その時になったら分かるのかな?


「はい、お父様。あの、もしうっかり話してしまったらどうなるのでしょう」

「そうだな、神の怒りに触れてこの国を守る結界が消えてしまうかもしれない」

「結界、そんなものがあるのですか?」

「ほう、アデルは結界の事を知っているのかな?」

「あ、いえ、すみません。知りません」

「そうだろう、教えていない事は、知り様がないからな。まぁ、大変な事になると覚えてくれれば良い」


 怖っ! 

 やっぱり祟るんじゃん! 

 お口チャック厳守だ。


「はい、解りました。決して誰にも言いません」

「結界の事を含めて他にも契約に関する事があるのだが、それらは君が知るべき時が来た時に話してあげよう」


 私は頷きながら、お口チャックは厳守するけど疑問点がある時に困るなと思って尋ねる。


「何か聞きたい事がある時は、お父様にお尋ねすれば良いのでしょうか。それともお母様でしょうか」

 私は振り向いてお母様を見る。


「私は王家の者としての登録が無いので、判らないことの方が多いの」

「えっ! でもお母様は王家の人ですよね」

「ああ、登録は神殿で洗礼を受けた者のみが対象なのだ。だからアデリーヌは登録がないんだよ」

「なるほど! でもこのお話はお母様も聞いて大丈夫なのですか? 神様のバチが当たったりしませんよね」

「ははは、大丈夫だ。神に婚姻の報告をした時に許可を得ている。そうでなければアデリーヌに隠し事をする事になって嫌われてしまうよ」


 お父様が茶目っ気たっぷりに笑うとお母様も一緒になって笑い出す。両親の仲が良いと子どもって嬉しくなるんだね。


「聞きたい事があれば、私かイザークに尋ねると良い」

「そうなのですね。ランベール宰相、よろしくお願いいたします」

「おや、姫殿下はもうおじ様とは呼んでくれないのかい?」

「あっ、ごめんなさい。でもお願い事はキチンとした方が良いかなと思ったの」

「ふふふ、姫殿下がおじ様と呼んでくれるのは、私の自慢の一つなのだから今後もそう呼んで欲しいな」

「あら、そう言えばアデルがおじ様と呼べるのは、イザークとグラーチェ、それにロベール兄様の三人だけね。アデル、大人になるまで甘えさせていただきなさい。そんなに早く大人にならなくて良いのよ」


 お母様の言うグラーチェおじ様は、お父様の実弟のゴディエル公爵の事だ。魔法師団の団長をしている研究者肌の方だ。ロベールおじ様はお母様の実兄でルグラン公爵の事だ。騎士団の団長をしている。


「はい、そうします。あとね、猪は何処から来たのかなって思ったんですけど…。これってどうでも良い事なのかしら?」

「猪?」

「そう、マルクに体当たりした猪。いくら周りが森でも人がたくさんいる所に動物が近づいて来るのって変だと思ったんですけど…」

「姫殿下、良い着眼点です。それも既に調査しておりますからご安心ください」

「はい」

 私は褒められた事が嬉しくて、イザークおじ様にニッコリ笑って返事する。


「他に聞きたい事は無いかい?」

「神様の名前や祝詞を覚えたいのですけど、どうしたら良いですか?」

「以前の資料があるはずだから、メアリに尋ねてごらん」

「はい」

「他には?」

 少し考えてから答える。

「今はありません」


「では、話はこれで終わりにして皆でお茶にしようか」

 お父様がそう言うと、イザークおじ様が魔法を解除した。すると、すぐに側仕えがお茶とお菓子を出してくれる。それから私は両親に甘えられる喜びに浸りながらティータイムを過ごした。


この世界の神様は、日本の神様とは少し違う様です。アデルは、少しだけ、その一端を知りました。

次は、プルガーバプティーモスを実体験です。

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