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負けず嫌いの転生 〜今度こそ幸せになりたいと神様にお願いしたらいつの間にかお姫様に転生していた〜  作者: 山里 咲梨花


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神罰の残骸

明けましておめでとうございます。

今年はもっと投稿出来る様に頑張りますのでどうぞよろしくお願いします。

 お父様がテルミノスモンス子爵とお仕事の話をしている間、私は子爵夫人と合流した子爵令息夫人の3人でお茶会をしていた。

 お祖母様やお母様以外の大人の女性とお茶会をするのは初めてだったけど、緊張していた割には落ち着いて王女らしく振る舞えていたと思う。

 それに、イヴォンヌおば様に話を聞いていたのであろう子爵夫人と子爵令息夫人は、随分と優しく私に接してくれた。

 

 自分の側近達と一緒だったから緊張より安心感が勝っていたもんね。


 その後は昼餐会の予定だったから、控え室として準備してもらっていた領主邸の客室に案内してもらった。

 控え室では少し休憩した後、昼餐会の予定に合わせて、その場に相応しいドレスに着替えた。


 昼餐会は、お父様とお父様の側近がメインの招待客であり、私はおまけである。なので、邪魔にならないように静かに食事を終えると、サッサとその場を辞した。


 だって騎獣に乗れるように着替えなきゃならないんだもん。

 ホント、お着替えも王女の仕事のうちなんだよね。


 今回の衣装は、秋も終わりの季節という事もあって長距離移動に耐えられるように防寒着を着込んでいる。

 シンプルな白のブラウスに明るい茶色のキュロットスカート、揃いの色のベストを着たら、その上からワンピースタイプの毛皮のコートを着ている。

 足元は、濃い茶色の膝下まであるブーツだ。


 これで防寒になるのかと首を傾げるような軽装だが、騎獣が飛行中に自然と使う風除けの魔法があるので、そこまでガッツリ防寒しなくても良いのだそうだ。


 まあ、私が子どもだから念を入れたという事なのでしょう。


 今回は、護衛の対象者はまとまっていた方が良いという理由で、お父様の騎獣に乗せてもらう事になっている。

 玄関から外に出て行くと、セブランの騎獣ペルル、マティアスの騎獣クラジュ、マルクの騎獣バハンが待っていた。


 騎獣達を引き連れて側近達と一緒に集合場所に行くと、イザベルの騎獣リィスが近付いてくる。


 お父様の騎獣メテオは、久しぶりの遠出が嬉しいらしくとても機嫌が良い。

 初対面の時の渋々といった様子は、微塵も見えない。


 メテオったら現金だなぁ。

 お父様と飛べてご機嫌だよ。

 今日のメテオはちゃんと神秘的なペガサスに見えるよ、うん。


 お父様に呼ばれた私は、メテオに近付いてご挨拶をする。

「メテオ、今日はわたくしもお父様と一緒に、貴方に乗せていただく事になりました。どうぞよろしくお願い申します」


 私の挨拶を受けたメテオは、ブルルと鼻を鳴らした。


「お父様、メテオはなんと言っているのですか?」

「任せろと言っている」


 多分だけれど、お父様が苦笑している所を見ると、メテオは『任せろ』以外の事も言っていたのだろう。

 メテオは本当に分かり易い。

 メテオが嫌がらずに私を乗せてくれるのであれば、仮にメテオがお父様に恩着せがましく文句を言っていたとしても、私としては全く問題はないのだ。


「メテオ、ありがとう存じます」

と、ニッコリ笑ってお礼を言っておいた。



「総員、騎乗」


 ロベールおじ様の合図で、皆、一斉に騎乗する。

 お父様と私を乗せたメテオの右側には、ノアールに騎乗したロベールおじ様が、左側にはペルルに騎乗したセブランが並び、先頭にはデュポン副団長とマティアスが並んでいる。


 私とお父様の背後には戦闘職ではない人達が続き、周囲を護衛の近衛騎士が取り囲んでいる。


「アデル、しっかりと(つか)まっていなさい」


 お父様はそう言うと、私の手を鞍の前端の出っ張りに置き、私の手の上から自分も握り込むと、小さな声で呪文を唱えた。


フォルマーレ(成形)


 すると私の手の中の鞍の端っこはスルスルと形を変えて、私が掴まりやすい手摺になった。ちょうど自転車の後ろに付ける子ども用の椅子のような具合である。


 私は驚いて、思わず振り返ってお父様の顔を見上げる。

 すると、気付いたお父様は私を微笑みながら見下ろすと、

「アデル、魔法はイメージが大切なんだよ。長時間の騎乗には便利だろ?」

と、ウインクして言った。


 おおーっ、魔法ってホントにスゲーよ!

 お父様もスゲーよ!

 私の語彙力を破壊しちゃったよ!

 スゲー!


「総員、陣形を維持したまま浮上」


 全員の騎獣が2mくらい浮上した。

 見送りに来ていたテルミノスモンス子爵とご家族が礼をして声を揃える。


「行ってらっしゃいませ」


 お父様が右手を挙げてそれに応え、私は皆に手を振る。所謂、お手振りであり、友達にバイバイと手を振る様なものでは無い。


「高度、陣形を維持して前進」


 領主館の敷地を出ると、ロベールおじ様は高度を上げる様に指示し、全体の高度を5m程度にさせた。

 これで、街中の建物の屋根の上を飛んでいける。


 今回の移動は街道に沿って行く事で、魔物との遭遇率を下げる事になっている。だから、あまり高度を上げる必要はないのだそうだ。

 それでも、陣形を維持するには街道は狭いので、障害物に当たらない程度の高度は維持すると聞いている。


 テルミノスモンスの領都からフィデスディスレクスの領都に通ずる街道は、デイテーラ領を経由するものと、直通のものがあって、距離はほとんど変わらないのだそうだ。


 今回は、領地視察を兼ねてデイテーラ領を経由する街道を行く。

 デイテーラ領も今回の騒動に巻き込まれた領地なので、ほんの一部ではあるが、荒れ具合を直接確かめて見るのだそうだ。


 30分くらい飛んだ所で、テルミノスモンスとデイテーラの領界にやって来た。

 領界門のだいぶ手前で停止した私達を残してロベールおじ様が着地し、テルミノスモンス側とデイテーラ側、それぞれの門番の兵士と話をしている。


 話がついたらしく、ロベールおじ様がお父様の隣に戻ると、そのまま門を飛び越えて街道に沿って前進する。


 すると、10分くらい飛んだ所で大きな三叉路に行き当たる。

 右に行けばフィデスディスレクスで、左に行けばデイテーラの領都だ。


 一行は、右に進路を取り、また10分ほど飛んだ所で、街道の右側に大きな広場がある所に出た。

 ここで、一度、休憩をする。


 景色を楽しんでいる私の体感的には、ここまで1時間くらいだが、実際は2時間飛んでいたらしい。

 騎獣達は、水飲みタイムだ。

 私は、メアリとクリストフが用意した敷物に座り、水分補給だ。

 お父様はメテオに魔法で出した水を与えると、私の隣に来て腰を下ろした。


「どうだ、アデル。疲れていないか?」

「お父様、大丈夫です。見るもの全て初めてなので、少し興奮しているかもしれません」


 私がふふふと笑いながら答えると、お父様は真面目な顔で頷いた。


「ここから先、領界の森に差し掛かると、魔物に遭遇するかもしれん。心配はしていないが、領地が荒れると魔物も増える傾向にある。万一、魔物に遭遇しても大声を出したり逃げ出そうとしたりしない事。アデルの事は、私が必ず守る。だから、この二つは必ず守ってくれ。出来るな」


「分かりました、お父様」

 私は、ウンと頷いてお父様に答えた。


 だいじょぶだよ、お父様。

 人間、本当に恐ろしい時には声も出ないし動けもしない。

 そうじゃなければ、冷静でいれるって事だよ。

 冷静でいれるのなら約束は守れるよ。


 お父様は、私の頭を優しく撫でながらため息を吐く。

「こういう時は、アデルの精神年齢が高くて有難い、と思うべきだろうがな。何故だか寂しくもある。これはどういう感情だろうかな」


 お父様、ご不満?

 甘えん坊な私を発動した方が良かったかなぁ?

 でも意識してやると態とらしくなるんだよねぇ。

 ゴメンねぇ、お父様。


 休憩を済ませて再び陣形を取ると、早速、広場を出発した。

 騎獣が浮上すると、すぐ目の前に領界の森が広がっている。


 森に近づくと、デイテーラ側の領界門が見えてきた。

 お父様が説明してくれた所によると、領界の森を挟んでそれぞれの領界門が設置されていて、森に現れる魔物に対する警戒や駆除を共同で行うための拠点としても活用されているのだそうだ。


 ロベールおじ様は全体停止の号令をかけると、領界門に降りて門番の兵士と話を始めた。

 確かに、門と言うより砦といった雰囲気の大きな建物が隣接している。お父様の説明のとおりだと納得できるような(いか)めしさがあった。

 

 魔物に遭遇する事なく順調に領界の森を抜けると、そこには広大な畑地が広がっていた。


 フィデスディスレクス側の領界門に話をつけるために、ロベールおじ様が一行を停止させた。その間に、豊かな穀倉地帯を眺める。

 フィデスディスレクスは国の西南端にあり、国内でも有数の穀物の産地なのだ。


 秋も終わりに近付いているからか、収穫が終わった畑地が半分以上ある。

 全体が収穫前であれば、黄金色の小麦畑が一面に広がって圧巻の景色だったのだろうな、と思わせる景色だ。


 再び出発した私達は、幾つかの村と思われる集落を素通りして飛び続けている。

 やがて、前方にフィデスディスレクスの領都が見えてきた。


 領都の北側の小高い丘の上に、夕日を浴びてオレンジ色に輝く領主館が見える。

 一行は、領主館を目指して飛んでいる。すると、近衛騎士が二人、集団から抜け出して先行していった。騎獣が着地する場所の安全を確認する為だ。


 先行の近衛騎士が戻って、ロベールおじ様に安全確認の報告をする。

 ロベールおじ様は頷いて号令をかけた。


「騎士は筆頭を残して先行。陛下の安全を確保せよ。他は合図するまで待機」


 はっ、という返答と共に、騎士達の騎獣が領主館の南側に降りて行く。

 半数は着地する場所の上空を警戒する為に残り、半数が着地して周囲を警戒している。

 領主館の前では、領主とその家臣達が出迎えて待っていた。


 すぐにロベールおじ様が着地の合図を出したので、私達は、近衛騎士とその騎獣達が円陣を組んでいる中心に着地した。

 上空を警戒していた近衛騎士達も付き従って来ている。


 フィデスディスレクス侯爵は家臣と共に領主館の前に待っていたが、私達が無事に着地した事を確かめると、柔らかな物腰で前に進み出た。

 そして、侯爵と家臣達は一斉に嬉しげに跪く。


「陛下、無事のご到着、祝着至極にございます。家臣一同、陛下のご来臨を心待ちにしておりました」

「うむ、ウリエル、無事に着いた。其方(そなた)らにも苦労をかける」

 

 昨年末の『王家の宴』で新領主に任命されたフィデスディスレクス侯爵ウリエル様は、お爺様(ランベール大公アールブムビィア)の次男である。

 地方領主になっても王家の血筋だ。

 当然、お父様と親戚としてのお付き合いの実績がある。

 侯爵の目元には、まるで歳の離れた弟を案じる様な慈愛が溢れている。

 それでいて主君として敬う様子が、二人の信頼関係を表している様に思えた。


「アデリエル王女殿下、無事のご到着、祝着至極にございます。初の遠出でさぞやお疲れの事でしょう。まずは建物の説明をしながら御息所(みやすどころ)までご案内いたします」

「お心遣いありがとう存じます。どうぞよろしくお願いします」


 私が侯爵の申し出を受け入れる事を了承すると、侯爵家の家臣が素早くロベールおじ様に駆け寄り、騎獣の世話を申し出ている。

 ロベールおじ様は二名の近衛騎士とマルクに後の事を指示して、素早くお父様の護衛体制を取った。

 それを見届けたお父様が、私をエスコートする為に手を差し伸べてくれた。

 私は、セブランとメアリを連れてお父様と一緒に歩き出す。


 フィデスディスレクス領主館は、落雷で半壊した領主館をそのままにして新しく建て直されていた。

 現場を始めて見るお父様に、侯爵が時々立ち止まりながら、領主館や周辺施設についての説明をしている。

 お父様にエスコートされている私を気遣いながらも、侯爵は淡々と被害の大きさと進捗状況を説明していった。

 歩きながら見渡しただけでも落雷の被害の大きさは良く分かった。


 神罰の残骸かぁ。

 神に(あだ)なす者には祟り神になり、神に奉仕する者には守護神になる。

 これって当たり前の事だけど、以外と当たり前で無かったりするからねぇ。

 人の理と神の理。

 愛し子だと知らなかったとは言え、この惨状の原因は私だ。

 的外れかもしれないけど責任を感じてしまうよねぇ。


 半壊した館の壁の奥は全て崩壊している様で、窓から見える向こう側には明るい空が見えている。まるで何百年も放置された廃墟のようだ。

 遠くに見える円形の礎石は、倒壊してしまった犯罪者を収容していた塔の跡だ。瓦礫は撤去されて二次被害が起こらないように整理されている。

 その向こうには、焼け落ちた厩舎の礎石が見える。落雷の後に、大規模な火災が起こった事が窺い知れる。


 人の手が入って見苦しく無いようになってはいるが、神罰の痕跡は未だに色濃く残っている。


 侯爵が新領主に任命されてこの地に着いた時は、領主館の敷地内は全く手付かずの状態で放置されていたらしい。

 一族郎党を引き連れてやって来たのに住む屋敷が無くて、暫くは敷地内で野営をして寝泊まりしていたのだそうだ。そのつもりで準備して来て良かった、と侯爵は笑っている。

 実質7ヶ月でここまで後始末をして、新しい領主館を建設した侯爵の手腕は、実に有能だと言える。


 侯爵はさらに嬉しげに、領民達が新しい領主を大歓迎して協力してくれたのだ、とお父様に報告している。

 それを聞くお父様も満足げに頷きを返している。


 新しい領主館に導かれて歩きながら、想像を超えた惨状を目の当たりにした私はどうしても気持ちが沈みがちになるのを抑えられずにいた。

アデルは遂に自分の目で神罰の実態を確かめました。

何か心境の変化が有るのでしょうか。

次回は、巫女姫の誕生です。

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