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負けず嫌いの転生 〜今度こそ幸せになりたいと神様にお願いしたらいつの間にかお姫様に転生していた〜  作者: 山里 咲梨花


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53 行幸の準備

アデルは魔力操作の練習で、新たな力を開花します。

一方、お母様はアデルの為にアデルに見えない所で奔走しています。

 両親から私が愛し子である事を打ち明けられた時は驚いていたメアリとセブランだったが、今は普段と変わらない様子で仕えてくれている。

 最近ではお母様とメアリの打ち合わせの頻度が増えていて、私の初めての遠出に向けて側近全体で準備を進めてくれている。


 今回は、必要に迫られてメアリとセブランに愛し子の事を打ち明けた。他の側近には申し訳ないけど、現時点では二人以外には秘密にする方針になっている。


 で・も!

 私としては頼りになる二人に知ってもらう事ができてとても心強い!


 他の側近達に秘密にするからには、納得してもらえる説明が必要になる。

 そこで、建国の祝祭の時に私がジャンピエールに、領民の為に祈る、と言った事を利用する事になった。

 他の側近達には、私は祈りの為に神殿に参拝する、と説明する訳だ。


 フィデスディスレクス領は旧デクストラレクス領だ。

 行幸に先駆けて私が領民の為に祈る事は、王女が建国の祝祭という公の場で発言した言葉に責任を持つという意味で、当然の事と認識されるだろう。


 ところで、フィデスディスレクス領に王家全員で行幸する事に決めたのは良いのだけど、お兄様方はノビリタスコラに通学しなければならない。

 夏休暇は既に終わり、新学期が始まっている。長期休暇は9の月の終業日まで無いのだ。


 それに、王家全員で移動する事に対して、全ての局長が揃ってお父様に反対意見をもって説得に来たらしい。

 結局、全員のスケジュール調整がし易いノビリタスコラ終業日前後で調整していく事になった。



 私は行幸までに、転移陣設置についてレオアウリュム様からレクチャーを受けておかなければならないのだが、驚いた事に、そのレクチャーにお父様以外の人間が立ち会う事を、レオアウリュム様がお禁じになったらしい。

 その上で、お父様の定例参拝の日とは別の日に、私とお父様の二人で神殿に来るようにお命じになったのだそうだ。


 んー、なんか仰々しいなぁ。

 大袈裟じゃね?


 その話を一緒に聞いていた私の家族はレオアウリュム様の言葉に驚いて、皆一様に心配する顔になってしまった。お母様は不安そうな顔をしているし、お兄様方は入れ替わりで私の頭を撫でたりギュッと抱き締めたり……。

 お父様に反論したいけど、レオアウリュム様のお言葉に逆らえずに無理矢理我慢しているといった風情だ。


 そんな家族の様子を見た私は、まずお母様に、次にお兄様方を順番に、ギュッと抱き締めて安心するように声をかけて回る。

 家族に対する有り難くて嬉しい気持ちで一杯になったけれど、私が頼りないせいで安心させてあげる事が出来ずに申し訳なく感じる。


 あーあ、また心配かけちゃったよぉ。

 だいたい国王一人で設置できないと判ってる物を壊すなんてどういう事?

 ちょーっとばかし考えが足りないんじゃない?

 まぁ……元はと言えば私の為なんだけど……。

 だから私が尻拭いするのは(やぶさ)かではないんだけどさぁ。

 なーんか釈然としないよねぇ。

 なんで今更、私の家族をシャットアウトするんだろ?


 愛し子と聞けば普通は良い事尽くしの愛されキャラというイメージだと思うが、現実は、と言うか私に限っては全く違う。

 冷静に考えると、神の都合に振り回される事が何回もあった。多分、これからも振り回されるんだろう。

 改めて、早くこの愛し子という立場を割り切って考えられるようになりたいものだと思うのであった。


 ※ ※ ※


 とある日の午後、王妃アデリーヌは身なりを整え、自身の側仕えと共に近距離用の馬車に乗り込んだ。

 行き先は王太后の住まう離宮・花の宮だ。

 花の宮では玄関先に王太后の家令が待っており、花の宮の名の由来となっている美しい花園の中にある壮麗な東屋に、王妃を案内した。


「お義母様、本日はお招きをいただきましてありがとう存じます。わたくしに相談があるという事でございましたが、何か心配事でもございましたか?」

「アデリーヌ、よく来てくれました。早めにお話したいと思う事がありましたの。急に呼び出したから驚いたでしょう? まずは、お茶にしましょう」


 王太后の親愛の込もった態度に肩の力を抜いた王妃は、王太后に勧められるまま東屋の椅子に腰掛けた。

 そこに、すかさず王太后の側仕えがお茶とお菓子を給仕する。


「今日のお菓子は弟のルイが手土産に持って来てくれた物です。味見してみたけどとても美味しかったわ。さあ、召し上がれ」

「はい、いただきます。……まあ、美味しい。初めてのお味ですわ」

「そう、貴女の口に合ったのなら良かったわ」


 二人は和やかな雰囲気のままあれこれと他愛のない話をしながらお茶とお菓子を堪能していたが、王太后がさりげなく本題に話を誘導した。


「ところで、以前から話をしていたアデリエルの筆頭文官ですけど、アデリーヌのお眼鏡に叶う方は見つかりましたか?」

「それが、まだ」

「中央貴族でないとダメなのかしら?」

「そのような事はございません。わたくしの力不足です」

「まぁアデリーヌ、力不足だなんて事はありませんよ。貴方は良くやっています。それにね、王妃という立場だからこそ入ってこない情報もありますからね。アデルの筆頭文官がまだ決まっていないのならば、私の弟のルイが持ち込んだ相談事が役に立つかもしれませんね」


 王太后は、我が意を得た、とばかりに嬉しそうに微笑んでいる。


「テルミノスオーチェア侯爵が? どのような相談なのか、わたくしがお伺いしてもよろしいのでしょうか?」

「ええ、もちろん。ルイの末の娘の事なのです」


 王妃は、王太后の姪にあたるテルミノスオーチェア侯爵の末の娘と親しくした事はほとんど無く、人の話に聞いた事がある程度だった。


「テルミノスオーチェア侯爵の末の娘さんは確か……、リリアン様でございますね」

「ええ、そうよ。面識があったかしら?」

「いえ、面識があると言うか、ご挨拶程度でございます。学生の頃、グラーチェ様とテルミノスオーチェア侯爵のご嫡男はわたくしと同級生でしたから、グラーチェ様と一緒に侯爵家のお話を伺った事がございました。確か、リリアン様が自領内の子爵家とご婚約が整ったというお話だったと存じます」


 王太后は、王妃の言葉に頷いて見せると話を続けた。


「リリアンはノビリタスコラを卒業してすぐにバラードン子爵家に嫁ぎましたけど、可哀想にたった2年の結婚生活で夫を事故で失いました。リリアンはそのショックで流産してしまいましてね。夫と子どもを一度に失う事になってしまいました」


「まぁ、それは……。とてもお気の毒な事でございましたね」

「ええ、リリアンはすっかり憔悴してしまって……。今は婚家から実家に戻っているのですけど、そろそろ3年になりますから、父親のルイが心配して私に相談に来たのです。再婚を勧めても絶対に嫌だと言うし、どうにかしてリリアンを元気にする事は出来ないものだろうかとね」


「まぁ、それはテルミノスオーチェア侯爵もさぞご心痛の事でしょうね」

「父親であるルイは娘の幸せを考えた上で再婚を勧めたのでしょう。でも私はね、リリアンの気性を知っていますからね。あの娘には再婚を勧めるよりも、生きる為の拠り所を見つける手助けをしてあげた方が良いと思っています」


 王妃の顔をジッと見つめて自分の考えを述べた王太后は、一息入れると、王妃の反応を窺うように静かに話を続けた。


「それで、貴女への相談なのですけれど……。まず、決して身内贔屓から言い出した訳ではない事を言っておくわね」

「はい」

「リリアンをアデリエルの筆頭文官の候補に入れるのはどうだろうか、と思ったのですけど、アデリーヌはどう思いますか?」


 今までの王太后の王家への献身を考えると、王太后は決してゴリ押しをしようとしている訳ではない、と王妃は思った。そこで率直に疑問を口に出す。


「リリアン様はそんなに優秀でいらっしゃるのでございますか?」


 王妃の反応に安心した王太后は、いつもの調子で王妃の質問に答える。


「ええ、ノビリタスコラの成績はプルミエでした。夫と共に領政に携わっていたと聞いていますから、文官の基礎は心得ている筈です。肝心なのはアデリエルとの相性だと思うのですけど、一度、面接してみてはどうかしら」


「リリアン様のお気持ちはどうなのでございましょうか」

「私はリリアン本人に今の気持ちを直接聞いた訳ではありませんし、ルイにも私の考えを話していませんから、分からない、と答えるしかありませんね。ただ……」

「ただ?」

「私が知っているリリアンは、貴族の義務や矜持をしっかりと心得ていました。

そこは変わっていないはずです。王家に仕える事を誇りに思い、誠心誠意、アデルを支えてくれると思いますよ」


 王太后の言葉を聞いた王妃は、(おもむろ)に考え込む。

 本来であれば、アデルの筆頭文官は洗礼後すぐに付けるべきであった。

 しかし、一連の洗礼の行事の中で、我が娘アデリエルが背負うものが、他の王女と比べてかなり特殊である事が判明してしまった。

 だから、母親として、王妃として、慎重の上に慎重を重ねて人物を厳選しているのだ。急ぐ必要はあるが、慌てる必要はないと考えていた。


 王太后にはこれまでも子ども達の側近選定に力を借りている。王妃はこれも縁だと思う一方で、今まで慎重にして来たのだからここで軽はずみな真似はしたくないとも思う。

 ここまで考えた王妃は、王太后に感謝の微笑みを浮かべながら返答した。


「お義母様、貴重で有り難いご提案をありがとう存じます。ですが、この件は少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか。陛下にもご相談申し上げた上でお返事をさせていただきとう存じます」


 ※ ※ ※


 同じ頃、アデルが何をしていたのかと言うと、母親である王妃の苦悩に気付く事もなく至ってマイペースに日々を過ごしていた。最近の悩みは、如何にして魔法の練習時間を捻り出すかである。


 どうしてもベッドに入ると自分の意思に関係なく寝落ちしちゃうのよねぇ。

 私って発育真っ盛りだから、睡眠は必要不可欠なんだけどさぁ。

 寝る子は育つって言うし、仕方ないんだけどね!

 魔法の練習したいのに眠くて堪らないのよ。

 あー、ジレンマだぁよー!


 今の所、私がした魔法の実験は火を出現させるくらいのものなのだが、しっかり室内に痕跡が残ってしまい、誤魔化すのに苦労した。

 痕跡を残さず周囲の大人にバレないように出来ないのなら、コッソリする意味が無いし、これ以上の魔法の実験は危険だと思っている。

 だから、やっと確保できたわずかな時間には、今のところ基本の魔力操作の練習しかしていない。


 私が魔法を発動する時は、体内の魔力を使わず、体外から魔力を取り込んで発動する事が判っている。

 この事実が判明してしまった時点で、私が他人から魔力操作の方法を学ぶ事が出来なくなってしまった。

 何故なら、私と同じように体外から魔力を吸収して魔力を操作する人は、国内にいないからである。


 こうなると私は、自分で練習方法を構築する必要がある訳だけど、それもどうしたものかと思う。理論的に考えるよりも感覚で覚えた方が、逆に理に適っている気がするのだ。


 落とし子じゃないと同じ事は出来ないもんねぇ。

 なんかさぁ、特訓メニューを自ら考案するって……。

 ◯◯◯ス・リーや◯◯◯◯ー・チェンの映画みたい。

 いやいや、カンフーの修行じゃないっつーの。


 兎に角、この事に気付いた以上、少しでも多く魔力を扱う練習がしたい。魔力を扱っているうちに、良い訓練方法が見つかるのではないかと思うから……。


 当てにしていたノビリタスコラでの授業は、期待していた内容からズレている事が想像できて、本当の意味では役に立たない。

 自衛を自力でどうにかしたい私にとって、魔法を自在に操れる様になる事は死活問題なのである。


 いやいや、焦ってませんよ。

 心配になっただけですからっ。

 あれ?

 同じ事かにゃ?


 ある日、思い通りにならないもどかしさでジタバタしているうちに、私が出来るようになっているある事に気付いた。

 短時間で集中して魔力を扱っていたからだろう。

 魔力操作の練習をしているうちに、いつの間にかいつでも魔力を視認できるようになっていたのである。


 神力とか魔法の色は前から見えてたけど、魔力まで見えるとは……。

 これって良い事なのか、悪い事なのか。

 誰にも聞けないから判断に困るなぁ。

 そのうち人体内の魔力の動きを見る事が出来るようになるかもしれないねぇ。

 訓練次第かなぁ?

 それが出来たから何だって話だけどねぇ。


 ところで、余談だけど、私には自分の身を守る為の魔法として是非とも習得したいと思っている魔法がある。

 それは、国を守っている結界を小規模にして自分の身体を覆う魔法だ。


 イメージで言うと、盾とかバリアとかになるのかなぁ。


 出来るなら、フィデスディスレクスに行く前に身に付けらると良いな、と思ってヒントを探して魔法関連の本を読み漁ったりしているけれど一向に埒が開かない。


 ノビリタスコラで学ぶ魔法を正統派とするならば、今の私の魔法は自己流だから非正統派と言える。何しろコッソリやった実験では、漢字ではなく火や水そのものを思い浮かべて出現させた事があったのだ。

 詠唱すらせずに、魔法理論を完全に無視している。


 ただ、神から賜った『鑑定魔法』と同じように、頭の中に思い浮かべて念じる事で火を出現させたという点では、感覚に頼る事はあながち間違いではないとも考えられる。

 結界の魔法も、同じ理屈で発動できるんじゃないかな、と考えてしまうのだ。


 問題は私の空想力というか妄想力だよね。

 結界って実体がある物なの?

 って言うか目で見える物なのかしら?

 頭の中に結界を思い浮かべる事が出来ないでいるのよねぇ。

 

 私にしては珍しくダラダラと葛藤しながら魔力操作の練習を隠れてする一方で、表立ってはフィデスディスレクスの情報を仕入れる事を始めた。

 領地の歴史や地理については授業で学んでいるので、それらを復習するとして、交流に必要なフィデスディスレクス侯爵家の家族構成や人となりについて、事前に知っておきたいと思ったのだ。


 知らずに困るのは自分だからね。

 ある程度の事は、メアリに尋ねれば大丈夫だと思う。

 あと、念の為にアリエルおば様にも教えを乞おう。

 姉妹だからこその情報があるかもしれない。


 結局の所、フィデスディスレクス侯爵家については警戒の必要や思惑などは一切なく、基礎知識で充分と思える予習になってしまった。

 

 感覚的には身内なんだもの。

 そんなもんだよねぇ。


 私の心の事前準備が整い、あとはレオアウリュム様のレクチャーを受けるだけだと思ったある日、お父様から神殿に参拝する日を告げられた。

 それを聞いた私は、少し緊張するけどお父様と一緒だから大丈夫、と自分に言い聞かせたのだった。

頭デッカチのアデルは、魔法を難しく考えてしまっている様です。

もっとノリでぱぱーっと出来ないのでしょうか。

次回は、魔法の神髄です。

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