45 土の神ソルテール
土の神ソルテールとの面会が始まりました。
レオアウリュムが玉を賜ってパワーアップしたので長時間になりそうです。
「私は土の神ソルテールである。コントラビデウスの一族よ、会えて嬉しいぞ」
ソルテール様は第一声でそう言うと、お父様を見て言葉を続けた。
「其方が当代王のルーチェステラだな。早速だが、家族を紹介してくれぬか」
「畏まりまして承ります。ご指摘のとおり、私が当代国王のルーチェステラ・ル・ロワ・コントラビデウスでございます。左隣に控えますのが私の妻アデリーヌでございます。右隣に控えますのが長男のディーヴァプレ、その右隣が次男のシルヴァプレでございます。そして妻の左隣に控えますのが長女のルーチェオチェアーノスでございます」
ソルテール様はお父様の紹介に合わせて視線を向け、確認しては頷いている。
「更に、後列中央に控えますのが私の弟グラーチェステラ、後列左側に控えますのがアールブムビィアの孫イザーク、後列右側に控えますのがフォルゴランスの長男ロベールでございます」
「うむ、皆、息災で何よりである。さて、ルーチェステラに皆を紹介させたが、今日はルーチェオチェアーノスと話がしたくてな。皆、来てくれたのに済まぬな」
「畏れ多い事でございます。さあ、アデル、ご挨拶しなさい」
「はい、お父様」
私はお父様に返事をして、正面よりやや右斜め前の宙に浮いているソルテール様を見上げて挨拶する。
「お初にお目にかかります。わたくしがルーチェオチェアーノス・ル・セス・コントラビデウスでございます」
「こうして顔を合わせるのは初めてであるが、私はいつも其方を見守っている。
其方が憂いなく充実した日々を過ごしている様子が、我ら六つ柱にとって何よりも嬉しい事である」
ソルテール様は、優しい目をして柔らかい口調で私に語りかけてくる。
「また、今度は我らの要望を受け入れてくれた事、心から嬉しく思っているぞ」
「畏れ多い事でございます」
「六つ柱それぞれと一年に一回、偶数の月に会う、という事だが、それは今年から始めてくれるのか?」
うーん、今年から始めてずーっと会う事になるのは何だかなぁ。
ここんとこ毎月会ってるしなぁ。
一度、リセットしたいから来年からじゃダメかにゃ?
「畏れながらわたくしの都合で誠に恐縮でございますが、今日のソルテール様との謁見で今年の分、つまり一巡目の終わりとし、来年の2の月から二巡目を始めさせていただきたくお願いを申し上げ奉ります」
「相分かった。先は長い。慌てる必要は無かろう」
あー、良かった!
これで両親やおじ様方に心配かけずに済む。
「皆、楽な姿勢に変えてくれ。私もそうする」
そう言ったソルテール様は、宙に浮いたままスーッと私の前に来ると地上に降り立ち、屈んで私に両手を差し出した。
「ルーチェオチェアーノス、立ってくれぬか」
「かしこまりました」
私はソルテール様が差し出した両手に自分の両手を委ねて立ち上がった。
私が立ってソルテール様を見上げると、長身のお父様よりずっと背が高いように見える。近くに寄って初めて判ったが、顕現した神様は人間より一回り大きい。
「ふむ、思ったよりも小さいのだな」
そう言ったソルテール様は、いきなり私を子ども抱きに抱き上げて、そのまま宙にふわりと浮いた。
おわっ! 浮いたよ、このヒト!
ちょっ、どうする気?
驚いた私の身体が強張ったのを見たお母様が、思わずといった風に私に向かって手を伸ばす。
「案ずるな。そこに一緒に座るだけだ」
お母様に目線で御台を示したソルテール様は、私を抱いたままスーッと移動して御台の上に胡座で座る。
私を自分の片膝の上に座らせてご満悦のソルテール様が、お父様とお母様に向かって
「ここならば其方達からも見えて安心であろう? 我らが愛し子に危害を加える事などあるはずも無いのだから、落ち着いて見守る様に」
と言い、私の事を心配する大人達を見回して苦笑した。
冷静になって見れば、お爺ちゃんの膝に乗せられた孫の構図だ。その様子を見たお母様は、まだ不安な様子を残したまま元の姿勢に戻った。
あー、ビックリした!
一瞬、拉致られんのかと思ったよ!
「さて、ルーチェオチェアーノス。其方の親族の男達は、其方に『おじ様』と呼ばれて喜んでいる様だが、試しに私の事を『おじ様』と呼んでみてくれぬか?」
ソルテール様の言葉を聞いた私は、一気に体の力が抜けて脱力のままソルテール様の顔を見上げる。
え?
何言ってるの?
ソルテール様は私の親戚じゃ無いよね!
……まぁ……いいけど……。
「えと、ソルテールおじ様?」
「ふむ、もう一度」
「ソルテールおじ様」
「ふむ」
ソルテール様は、顎に手を当てて何か考えている。
「ソルテール様もわたくしが『おじ様』と呼ぶと、その……嬉しい? のでしょうか」
「いや、何とも無いな。私には『おじ様』と呼ばれる喜びは理解できぬらしい」
でしょうね。
神様だもの、人間とは感情の動きは違うよね。
たぶん……違うよね?
「しかし、こうして其方を膝に乗せて愛でるのは心地良い。其方の魂の清々しさ、魔力の温かさをより近く感じる。うむ、これは良い。フォルゴランスが好んで其方を抱き上げておったが、ふむ、これは良い」
これは良いって2回言った!
そんなに良いの?
訳分からん!
ソルテール様が相好を崩して私に笑いかける。
「ふふ、確かに我らに家族と呼べるものは存在しない。しかし、人間の感情というものは太古の昔から見続けてきて、知識としては知っている。家族への愛、伴侶への愛、信頼や友情など、人間の感情は我らが美しいと思う反面、醜いとも思うものだ。私自身が誰かを愛いと思ったのは、この箱庭では其方が初めてである」
あれ?
初代王は愛し子じゃなかったっけ?
そう聞いてたんだけど……?
「ソルテール様、わたくしは初代王が愛し子だったと聞いたのですけれど、違ったのでしょうか?」
「確かに同じ愛し子と呼ばれる者ではあるが、私にとってプリーミスアレックスとルーチェオチェアーノスでは感じ方が全く違う。あれは愛いというよりも手を貸してやりたくなるという感じの奴であった」
「左様でございましたか」
という事は?
私に対する感情も六柱それぞれに違うのかな?
ソルテール様が私の頭を撫でながら満足そうに笑っている。私はソルテール様の顔を見上げてニッコリ笑う。
なんかさ、
ソルテール、心の唄
とか言って、俳句を詠みそうな感じだよ。
まるで、ちびアデルちゃんとソルじいさん……プッ、笑える。
おっと、神様相手に不敬すぎるかな?
「フッ、何だそれは? ところでルーチェオチェアーノスは騎獣は要らぬのか? 何なら私が新たにレオの様な神獣を創ってやろうか?」
ゲッ! 神獣?
とんでもない!
却って後が厄介ですぅ!
「んんっ?! ソルテール様。わたくしは今の所、騎獣が欲しいとは思っていないのです。必要になったらお兄様方の様に自分で探したいと思っています」
私は慌ててソルテール様に断りを入れる。神獣なんか授けられたら王太子であるディー兄様の立場を脅かしかねない。
「そうか。今は要らぬか。残念だのう」
ソルテール様が、孫にプレゼントを拒否されたおじいちゃんのように見える。
膝に乗せられているからなのか、ソルテール様が一番、神への畏れを感じさせないように思う。
「ソルテール様」
「うむ、何だ?」
「代わりに御教えを賜る事はできますでしょうか?」
「ふむ、良い。何でも申せ」
「ありがとう存じます。実は、お兄様方が騎獣と契約した時に、黄緑色に発光している様に見えましたけれど、あれはソルテール様の御力なのでしょうか?」
「ほう、属性の色が見えたのか。人には見えないはずなのだがな。ディーヴァプレは見えたか?」
急に声をかけられたディー兄様は、特に慌てる様子もなく冷静に答えた。
「はい、ソルテール様。私には属性の色は見えませんでした。暖かい光に包まれた体感が有っただけでございます」
「ふむ、シルヴァプレは見えたか?」
「いいえ、見えませんでした。兄上と同じでございます」
「ふむ、ルーチェオチェアーノスだけであったか」
ソルテール様はお兄様の返事を聞くと、再び顎に手を当てて考え込んだ。すると見守っていたグラーチェおじ様が、ソルテール様に発言の許可を求めてきた。
「畏れながらソルテール様に発言の許可をいただきたく存じます」
「おお、グラーチェステラか。そうじゃ、其方がおったな。うむ、良い。許す」
「有り難く存じます。属性の貴色の見分けについてでございますが、人間の魔力を使った魔法の場合、私を含めてほとんどの者がその魔力の属性の貴色を見分ける事が出来ます。一方、神の御力を由来とするものは、私でも属性の貴色を見分ける事が出来ません。顕著な例として、結界が挙げられると存じます」
「ほう、そうであったか。ならばルーチェオチェアーノス、其方に神力の属性色が見える事は、家族以外に口外せぬ方が良いな。おそらく、其方が落とし子である事が原因であろうからな」
あわわ、うっかり言わなくて良かったぁー!
落とし子特典が落とし穴になってるよ!
はぁ、まだ落とし穴があるのかなぁ。
早くこの世界の常識を叩き込まなきゃ心配だよぉ。
「ふふ、そのように落ち込むな。愛い奴よ。さて、質問の答えだが、魔獣との契約は私とラファーリエの合作だ。契約をラファーリエが、全ての命を私が司っているのでな」
合作?
黄色と緑で黄緑色?
ひょっとして絵の具と一緒?
んな安直な……。
まあ、分かり易くて良いけどねぇ。
それに命を司る?
冥界はティーネブラス様だよねぇ。
魂はどちらにも関係するけど、どうなるの?
「ソルテール様が命を司っておられるのならば、魂はどなたが司っておられるのでしょうか?」
「魂そのものは上位の神が司っておられるので、六柱は手出し出来ぬ。生から死へ見送るだけである」
「左様でございましたか」
なるほどね。
ティーネブラス様が私の魂についてあれこれ聞いたのはそういう事だったのね。
神様なのに何で分からないのか疑問だったけど……。
そもそも担当が違ったのね。
うーん、これ以上の事は、触らぬ神に祟り無し、だな。
すると、ソルテール様が話題を変えてきた。
「私からも其方に質問をしても良いであろうか?」
「はい。何でございましょうか」
「其方に改良して欲しい物が有るのだが、頼みを引き受けてくれるであろうか?」
改良?
一体何を?
いくら私に前世の知識があると言ってもねぇ。
何でも作れる訳じゃないんだけどなぁ。
しょーがない、聞いてみるか。
さあ来い、ほら来い、ばっち来ーい!
「わたくしにできる事でしょうか?」
ソルテール様が穏やかな様子のままサッと右手を上げたので、私もそれにつられてソルテール様の右手を見ると、手首の先が消えて見えなくなっている。よくよく見ると、右手の消えた部分がブラックホールの様な空間に差し込まれていた。
おおーっ、これは!
空間収納ってヤツじゃないの?
スゲーッ!
ソルテール様がブラックホールの様な空間からスルッとガラス瓶を取り出して私の目の前に差し出した。
「これだ」
ソルテール様が差し出したガラス瓶には、半透明で黄緑色の液体が入っている。
「ソルテール様、これは何でございますか?」
「これはガイスト聖国の聖女が開発したリンスという物なのだが、其方はリンスを知っておるか?」
「はい、存じております。我が国にはまだ無い物でございます」
トールトスディス王国には、前世の様なシャンプーもリンスも無い。では、どうしているのかと言うと、洗髪は石けんだ。
一言で石けんと言ったが、魔力を使って調合する物らしくよく泡立って汚れ落ちも良い。洗髪後は、側仕え達が調合した香油を丁寧に塗り込んでブラッシングしてくれるので、私の髪は常にキラキラさらさらなのだ。
別にリンスが必要だと感じた事は無いのだけど……。
「うむ、さもあろう。これを聖女とやらがルーチェンナに奉納したらしいのだが、粗悪品であったらしい。そこでだ。其方にこのリンスの改良を頼みたいのだ。どうであろうか」
えー、脳内お花畑ちゃんの尻拭いなのぉ?
リンスかぁ。
前世で使ってたコンディショナーにはたくさんの成分表示があったよねぇ。基本的には石けんのアルカリを中和する酸性の物なら何でも良いはずだけど……。
それに私が使ってる石けんは前世の石けんと違って髪がキシキシしないんだよね。王族だから良い物使ってるだろうし……。ふむ……。
「ソルテール様。このガラス瓶の液体の成分について御教えを賜る事は出来ますでしょうか?」
「おお、そうだな。中身は……。いや、それよりも其方に鑑定の魔法を授けよう」
「ええっ、鑑定の魔法ですか?」
そんなモノもらっていいのか?
私は思わずお父様とお母様の顔を交互に見てしまう。
すると、お父様は私を安心させる様に大きく頷いてくれて、お母様も私を安心させる様にニッコリ微笑んでくれた。そのおかげで、私の気持ちも少し落ち着いた。
「ルーチェオチェアーノス、他者に知られぬ様に無詠唱とする。頭の中で水の星の文字で鑑定と思い浮かべてみよ」
「あ、はい」
私は、ソルテール様の言うとおりに頭の中に漢字で『鑑定』と思い浮かべた。
「ほう、複雑だな。これは良い」
そう言ったソルテール様が、私の頭の上に手を乗せた。自分の体全体が緑色の光に包まれている。驚いた私がソルテール様を見上げると同時に発光が収まり、私の頭に置かれたソルテール様の手も外された。
ソルテール様は、私の頭に乗せた手の反対の手に持っていたガラス瓶を私の目の前に再び差し出した。
「ルーチェオチェアーノス、これを鑑定してごらん」
私は黙って頷くと、ガラス瓶の中の液体を見つめて漢字の『鑑定』の文字を思い浮かべた。
すると、ガラス瓶の上に虹色の薄い油膜のような物が出現した。それには、こちらの世界の文字で鑑定した物の説明が記載されている。
ガラスの瓶
リンスが入っている
リンス
オリーブオイルとオランをすり潰したものを混ぜた物
割合 オリーブオイル 93% オラン 7%
おうふ、ウインドウらしき物が出たよ!
テロリロリンとエフェクトが付いたら完璧にアニメだねぇ。
このオランって何だ?
それにしても雑だなぁ。
オイルリンスのつもりかぁ?
よく見ると分離してるし……。
「ソルテール様。そもそもの疑問ですが、女神様は洗髪をなさるのでしょうか?」
「わははは、気付いたか。我ら神は汚れない。汚れ・穢れは寄せ付けないと言った方が正しいな。しかし、其方らには有った方が良い物なのだろう? 既にガイスト聖国にある物を改良するのであれば、其方の前世の知識を使っても其方が落とし子であると疑われ難いのではないか?」
おほ?
これはヒントでは?
ステラおじ様が欲しがっていた定義に、繋がるんじゃね?
「それはわたくしが発明者にならなければ良いという事でしょうか?」
「そうとも言うな」
ソルテール様は急に真面目な顔になって、私に諭す様に話し出す。
「其方はラファーリエと話した時に、即座に自分の尺度で危険な知識を分類したであろう? 其方にはこの箱庭の現状や結界の外との関わりについて冷静に判断する力がある。まずはこの世界を知る事だ」
判断する力?
そうなのかなぁ。
もちろんこの世界を知る為の努力はしますけどぉ。
「ルーチェオチェアーノスよ。よく学びながら世に出して良い知識と、世に出す事で秩序を乱す知識を正しく選択できるようになってくれ。それまでは、其方の言う発明者になってはならぬ。しかし、改良ならばしても良い物もある。例えば、菓子などはいつでも改良して奉納してくれて良いぞ」
あらら、私のおやつのメニューが増えている事を指してますね?
うーん、でも取り敢えずはリンスですかねぇ。
たぶん貴族層は困ってないだろうから平民向けかな?
メアリに平民がどうしてるのか聞いてみよーっと。
「かしこまりました。リンスについては少し考える時間をいただきたく存じます。今のわたくしは民の暮らしを全く知りません。我が国の民に本当に必要な物なのかどうかを検討いたします。本当に必要であれば、民のために改良してみたいと存じます。それでよろしいでしょうか」
「うむ。それで良い。頼んだぞ」
「はい、承りましてございます」
「さて、そろそろ暇乞いじゃな」
ソルテール様は膝の上から私を抱き上げて宙に浮び、御台の前に進んで両親の前で降り立った。
「ルーチェステラ、今日はルーチェオチェアーノスを身近に感じ、話をする事が出来て嬉しかった。そうじゃな、ルーチェオチェアーノスの伴侶が定まる頃までは、こうして話をさせて欲しいと思っている」
「承りましてございます」
お父様の返事を聞いたソルテール様は、私をその場にそっと下ろすと私の顔に手を添え、私の顔を優しい目でじっと見つめて
「では、また相見えようぞ」
と言って、御台の上に戻って行った。
私は元の位置、お母様の隣に戻って左膝をついた。両手を胸の前で交差させて、ソルテールを見上げる。
「では、次回を楽しみにしている」
ソルテール様が宙に浮いたまま一回転すると、バッと緑の光が拡がり、その光が収束してレオアウリュム様を形作る。一際眩しくカッと輝くとレオアウリュム様が顕現した。レオアウリュム様は軽やかにタンと音を立てて御台に降りると、お父様に向かって問いかける。
「ルーチェステラ、今日の会談で何か質問があるかい?」
「畏れながら一つ御教えを賜りたく存じます」
「何かな? 言ってみて」
「はい。本日はソルテール様からルーチェオチェアーノスに、前世の知識の活用について御教えを賜りました。以前、ラファーリエ様からは、ルーチェオチェアーノスの知識が国の秩序を乱す事を危惧して流布を禁じているのだ、と御教えを賜っております。もし仮に、ルーチェオチェアーノスが選択を間違ってしまった場合に、神罰が降されるのか御教えを賜りたく存じます」
「うん、ちょっと待ってね」
レオアウリュム様は目を閉じて静かになった後、目を開いてお父様に回答する。
「以前からステラルクスが望んでいた『前世の知識の過度な流布』の定義として、以下の事を申し渡す。
一つ、『前世の知識の過度な流布』の定義は、ルーチェオチェアーノスの選択の結果が六つ柱の大神の意思から外れている場合、とする。
一つ、選択が間違っている場合は、即座にルーチェステラに通達し、六つ柱の大神が必要な指導を行う。
一つ、ルーチェステラ及びコントラビデウス一族が大禍なく間違いを是正できた場合は、不問とする。
一つ、ルーチェステラ及びコントラビデウス一族が間違いを是正できなかった場合は、その選択の結果ごとルーチェオチェアーノスを神界に召し上げ箱庭から隔離する事とする。
以上だよ。僕はルーチェオチェアーノスの魂が歪まない限り大丈夫だと思うよ。他に何かあるかな?」
ヤバイよ、ヤバイよ!
しくじったら神界に拉致られる!
余計な事はずぅぇーったいしない!
やっぱこえー、神の意志!
私がビビりまくっているのを尻目に、落ち着いた様子のお父様がレオアウリュム様にお礼を言っている。
「有り難く存じます。他に質問はございません」
「じゃあ、僕は帰るね」
「本日も過分なご配慮を賜りまして誠に感謝申し上げ奉ります。今後とも我らコントラビデウスをお導きくださいますよう心からお願い申し上げ奉ります」
「うん、分かってるよ。じゃあ、皆またね」
天井の光源から一条の光が差し込み、レオアウリュム様がその光に溶け込むように姿を消した。
神殿内に静けさが戻るとすぐにお父様が立ち上がって私の方に歩み寄って来た。
「アデル、鑑定の魔法を賜った様だが、身体は何とも無いか? 身体の痛み・苦痛は無いか?」
「お父様。身体は何ともありません。ただ、精神的に凄く疲れました」
私の答えを聞いたお父様は、顔を顰めて私をサッと抱き上げ、ギュッと抱きしめて呟く。
「ソルテール様がアデルを抱き上げた時は肝が冷えたぞ。生きた心地がしないとはこの事だと思ったよ」
大きなため息のようなお父様の呟きを聞いてお母様が同意する。
「陛下の仰るとおりですわ。無事に戻してくださって本当に良かったです」
それな!
私自身が拉致を疑ったもんね。
またしても心配させちゃったよ。
両親をこんなに心配させるんなら愛し子なんて辞めたいよ。
本当にもう!
抱っこされたり、鑑定の魔法を賜ったり、ソルテールは本当にアデルラブですね。
前世の知識についての定義も示されました。この波紋はどう拡がるのでしょうか。
次回は、リンスの改良です。




