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現状把握

転生したことを受け入れることが出来たとはいえ、情報不足で不安なアデル。

色々考えたり、メアリに聞いたりします。

最後にメアリが良いアドバイスをくれました。

 さて、生まれ変わったのだと頭では理解しても感情はついてきてくれない。私の感覚では数時間前に死んで、生き返ったと思ったら実は転生していたのだから…。

 

 はーっ、まずは現状の把握ですね。


 ベッドを出てみた。問題なく自分の足で立てる。部屋を見渡す。さっきの走馬灯で見た自分の寝室だ。思ったより広い。居間と衣装部屋が、続き部屋になっているはずだ。鏡台の前まで歩き、自分の姿を見てみる。


 おおお、可愛い!!


 長い銀の髪にグリーンアイ、さくらんぼのような唇、スジの通った鼻、

 この子は将来すごい美人になるぞ!

 …あ、いや、今は私だった。


 今、何歳なんだろう。小学校の低学年くらいかな?

 やっぱり中身が大人だとバレないようにした方が良いよね。

 子どもの頃、どんな話し方してたっけ? 

 ああ、幼い頃はコミュ障気味だったなぁ。

 記憶の中のアデルは、ちょっとおませな王女様らしい話し方をしてた。

 その真似っこからやってみるか。


 そんな事を考えながらソファに座る。座って落ち着いたとたんに気付く。


 あまりにも突然の転生にパニクっていたんだなぁ。

 今の私は顔にアザが無いどころか色白美人だよ。

 おまけに両親も揃って健康そうだし、アデルは両親に愛されてる。

 なんかすごい得した気分。

 あとは、自分の健康状態が気になる所だけど、

 メアリが帰って来たらいろいろ尋ねてみようかな。


 扉がノックされ、メアリがワゴンを押して入室する。

「姫様、ベッドから出られてお身体は何ともございませんか?」

「はい、大丈夫です」

「ではお食事はこちらで召し上がられますか? それとも居間になさいますか?」

「居間に行きます」

 居間に移動してテーブルに付くと、メアリがテキパキと準備してくれる。


 スープは、コンソメに何か分からないけど柔らかく煮た野菜が入っていてとても美味しい。リゾットの様なものはミルク粥だ。穀物が何なのか判らないけど、蜂蜜のような甘さがとても美味しい。


 食べるとお腹が空いていたのがよく分かる。前世も含めてすごく久しぶりの食事だから、嬉しくてゆっくりと楽しみながらいただく。


 ふと、メアリを見るととてもニコニコして私を見ている。

「メアリ、どうしてそんなにニコニコしているの?」

と尋ねると、メアリは眉毛を下げた顔になり

「姫様が美味しそうにお食事なさっている姿を見られて嬉しいからでございます。何しろ姫様は、三日間眠っておられたのですから…。いつ目覚めるか判らなかった時は、とても不安でございました。姫様が目覚められて本当に良うございました」


 私の体感では、死んでから数時間後に目覚めた様な感覚だったが、実際は三日も眠っていたのか。


「メアリ、私はどうして三日も眠っていたの?」

「姫様は、川に落ちて助け出された時には腕に怪我をされていて、既に意識がございませんでした。詳しくは、国王陛下からお話があると存じます」

「私が国王陛下とお話しするの?」

 ビックリした私が尋ねると、メアリは

「はい、お父上様であらせられます国王陛下が、先ほど姫様に、後で話をしよう、と仰せになっておられましたでしょう?」

と不思議そうな顔で答えた。

 それを聞いた私は絶句する。


 なんですと?! お父様が国王陛下?!

 貴族の娘じゃなくて、正真正銘、本物のお姫様だったよ!!


 絶句した私を見たメアリが、ハッとした様に私に尋ねる。

「姫様は、お父上様の事がお判りになっておられなかったのでしょうか」

「いえ、お父様だと解っていましたが、お父様が国王だとは知りませんでした。あ、いえ、忘れてしまったという事でしょうか」


「姫様は、ご自分の事もお忘れになっているのでしょうか」

「んー、自分の名前だけでなくて、家族の名前も忘れているみたい。でも家族の顔は解ったのよ。あと、メアリの事もちゃんと解ったわ。会った事がある人の、顔と名前は覚えているけど…。何故、自分と家族の事だけ忘れてしまったのかしら」


 メアリは、痛ましげな顔でひとつ頷くと、私の名前を教えてくれた。

「姫様のお名前は、アデリエル・ル・セス・コントラビデウス殿下と申されます。このトールトスディス国の第一王女殿下で在らせられます」


 トールトスディス? 聞いた事がない国名だ。


「という事は、ディー兄様とシル兄様は王子様なの?」

「左様でございます。ディーヴァプレ・ル・ハフ・リテ・コントラビデウス王太子殿下、シルヴァプレ・ル・ハフ・コントラビデウス第二王子殿下でございます」


「お父様とお母様のお名前も教えて」

「はい、ルーチェステラ・ル・ロワ・コントラビデウス国王陛下、アデリーヌ・ル・レヌ・コントラビデウス王妃殿下でございます」


 メアリが教えてくれたので、名前の中に身分を表す冠詞が入っている事が判る。国王が「ロワ」、王妃が「レヌ」、王子が「ハフ」、王太子が「ハフ・リテ」、姫が「セス」である。

 また、国王は陛下と呼ばれるが、王妃は殿下と呼ばれる事から、王妃には国王と同じ権限が与えられている訳ではない事が判る。


 名前、覚えなきゃ。

 他の情報はお父様に聞かないと教えてもらえないのかな?


「ねえ、メアリ。お父様はいつ私とお話ししてくれるのかしら」

「先程、お食事をお持ちする前にランベール宰相様から、明日の午前中に、陛下の執務室に姫様をご案内するよう仰せつかっております」

 そう言いながら、メアリは食後のお茶とお菓子を出してくれる。


「分かりました。ところでメアリ、私は三日間眠っていたと聞いたけど、特に身体が弱いなんて事があるのかしら。あまり寝込んだ記憶がないのだけど…」

「いいえ、姫様は、これまで三日間も寝込まれた事はございませんでした。ですから余計に心配でございました」


 あー、良かった! 特に虚弱体質という訳ではなさそう。


 メアリは、深刻な顔をして私の両手を取り跪く。

「姫様、姫様のお身体は川に落ちた後、意識がなかった事で多少体力が落ちていると思われますが、その内元の体力に戻るでしょう。ですが、今大切な事は、姫様が忘れてしまった事がたくさんあるという事です」


 あっ、もしかして記憶喪失と思われている?


「私は、主治医のホワイエ男爵夫人から、直接、診断結果を伺う事は叶いませんが陛下は全てご存知のはずです。陛下との会談は、姫様が忘れてしまった事を明らかにして、今後の事を考える良い機会となるでしょう。どうぞ、お父上様をお頼りになって姫様の憂いを無くしてくださいませ」


 メアリは、これまでのアデルを知っていて、今の私に違和感を持っている。その理由として記憶喪失を想定して、私の事をすごく心配して考えてくれている事が、よく解った。


「メアリ、ありがとう。よく解ったわ。私も忘れた事がたくさんある様な気がするけど、何を忘れてしまったのか、お父様とよく話をして自分でも把握できるようにするわね」

「はい、それでよろしゅうございます。さ、姫様、今日はもう充分です。夜も遅いですから早く休んで明日に備えましょう。お召替えをいたしましょうね」

少し気持ちが落ち着いたでしょうか。

次はいよいよお父様との話し合いです。

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