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負けず嫌いの転生 〜今度こそ幸せになりたいと神様にお願いしたらいつの間にかお姫様に転生していた〜  作者: 山里 咲梨花


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側近選び 〜現時点の判断〜

アデルにとって『自覚』についての大きな転機が訪れました。

自覚なくモテている事で、お兄様方を振り回しながら、絶好調のアデルです。

 時間をほんの少しだけ巻き戻そう。


 王子・王女が各テーブルを廻り終り、参加者が思い思いにグループを作り歓談している時、公爵家のテーブルの近くでは、ディー、シル、アンドレの三人が、小声で立ち話をしている。


「兄上、予想どおりアデルに好意を抱く輩が、結構な数いましたね」


 シルがアデルがいる方向に視線を向けると、ディーとアンドレもそちらを見る。波打って光り輝く銀の髪に、好奇心でキラキラ輝く明るい緑の瞳をしているアデルの周りには、ご令嬢方が群がっている。それを遠巻きにして、アデルをチラチラと見るご令息が何人もいる。

 尤も、アデルを見ている三人の周りにも、遠巻きにして見ているご令嬢が大勢いるのだが、三人揃って近寄るなオーラを出していれば近寄って行けるはずもない。


「そうだね。我々が睨みを効かせていれば、不埒な真似をする輩は現れないだろうが、我らの不在時を考えると、これから先もアデルに危険が及ばない様、注意する必要があるな」

「王女殿下の愛らしさにやられた奴は大勢いたが、肝心の王女殿下が全く気付いていないのは、如何なものか」

「ああ、アデルは自分の魅力に本当に無自覚なんだよ。自覚させるのは、まだ早いと思っていたけど…。兄上は、どうするのが良いと思いますか?」

「少なくともノビスタスコラ入学までには、ちゃんと理解させないといけないのだろうが…。その辺りは、母上とも相談してみようと思う」

「おいおい、過保護だなぁ! お前達の様なのを、重度のシスコンと言うんだぞ」

「ははは、シスコンの何が悪いのかな? 兄として妹を守る。当たり前の事じゃないか。ところでアンドレ、お前こそ輩になってるだろう? 違うか?」

「えっ! アンドレ殿がアデルを?」


「…何故、そう思う?」

「目だ。アデルを見る優しげな目。それに、お前は大事にしている弟を放り出してわざわざアデルに付いて廻った。あの、お前がだ」


 アンドレは、王女であった母親の美貌を受け継いでいて、非常に美しい。青みがかった銀の髪に、濃い青の瞳、整った顔立ちに惹かれたご令嬢方に、取り囲まれる事が度々あるが、その度、冷たい視線と口調で追い払っているのだ。


「あのって何だよ。だが、そうだな。あの妖精のような外見に反して、冷静な受け答え。確かに、王女殿下は他の令嬢方とは全く違う。とても面白い」

「アンドレ、お前…」

「何だ。俺では不足か?」

「いや、そう言われると、条件で言えば、お前以上の者はいないのだが…」


「アンドレ殿、アデルはまだ7歳です。アデルの心の成長に合わせた対応をして

ください。それから、アデルを困らせたり泣かせたりしたら、絶対に許しません。

すぐ父上に、いや、イザークおじ上に報告します」

「ははは、分かったよ、シル殿下。俺はそこまで馬鹿じゃない。王女殿下がこの国の宝だという事は、父上から叩き込まれた。もちろん、大切にする事が大前提だ」


「はーっ、何にせよ、まだまだ先の話だ。何がどう転ぶかなんて先の事は、誰にも判らないんだ。全ては、アデルの気持ち次第だ。それで良いな!」

 ディーの言葉に頷くシルとアンドレ。


 兄達がこんな会話をしていた事を、アデルは全く知らない。




 お茶会の翌日、お母様の居間に集まって、お茶会の結果を話し合う。

 メンバーは、お母様、ディー兄様、シル兄様、私。そして、私が心の中で勝手に任命したオブザーバーとして、メアリ、お母様の筆頭文官パトリス、以上4+2名である。


「まずは、アデル。お茶会を終えて、どんな感想を持ちましたか?」

「はい、お母様。いろんな方とお話しするのは楽しかったです。それに、たくさんの同世代の方とご一緒したのは初めてだったので、どうしたら良いのか戸惑う事もありました。私、お兄様方以外では大人としか接していなかったので、ちょっと…ね」

「ホホホ、アデルったら途中で子守をしているお姉さんの顔になっていましたよ」

「えっ! そうなのですか? 母上」

「あら、ディーもシルも気付かなかった? アデルは精神年齢が高いから、お花畑に住んでいるご令嬢や成長の遅いご令息の対応に苦慮していたみたいだけど、全体としては上手く対応できていたわね」

「本当ですか? ありがとう存じます、お母様」


 わーい♪ お母様がずっと私を見守ってくれてたんだ! 

 嬉しい!


「では、側近候補を選ぶという点で、気になった事があれば教えてちょうだい」

「はい、私、アプローチの仕方が分からなくて、最初は率直に、側近候補を探していると言っていたのですけど、アンドレ様から相手の申し出を待つように、と注意されまして、ディー兄様に相談して相手の申し出を待つ事にしました」

「まぁ、アンドレが?」

と言いながら、お母様がディー兄様とシル兄様を見る。

「はい、どうやらアンドレは、イザークおじ上から、アデルは国の宝だと叩き込まれたらしくて、アデルのやり方が心配になったらしいです」

「本当にそれだけかしら? 黙っている事が、嘘をつく事と同じになることもあるのですよ?」

と、お母様が言うと、シル兄様が

「補足しますと、侯爵家の最初のテーブルで、2人のご令息がアデルの魅力に当てられた様子でしたので、兄上がやんわりとアドバイスしたのですが、状況が改善されず、それに苛ついたアンドレ殿が介入してきたという流れです」


 あれ? 

 セドリックは真っ赤になってたけど、ジルベールは普通だったよね?


「なるほど、その説明であれば納得できます。アデルは好意を寄せられる事をどう思ったのかしら?」

「え? あの…悪い事をしたかなぁと思いました」

「悪い事? なぜ悪い事なの?」

「なぜ悪い事…」


 ちょっと考え込んでしまった。

 なぜ? なぜって…。

 あれ? なぜなんだろう。

 アデルが美少女だから?

 あ、アデルは私だ!

 て事は、私が美少女なんだ!

 あらぁ? 

 私、自分が美少女だって自覚が無い?

 あー、知識として知ってるけど自覚が無いんだ!

 自己満足で終わってる!

 (かん)(ぺき)他人(ひと)(ごと)

 だからかぁー…アハハハハ、私って変てこりん!

 おっと、お母様がニコニコして私の答えを待ってるよ!


「お母様、分かりました。私は、自分自身に好意が向けられているのではなくて、私の容姿に好意を向けられていると思って、他人事のように考えていたから、悪い事をしたと考えたのだと思います」


 あれ? 

 お兄様方が変な顔になってる!


「まぁ、うふふ。変わった理由だけど、アデルが自分で考えてその答えに辿り着いたのなら、その答えを受け取りましょう。それでアデルは、自分の容姿をどの様に考えたのかしら?」

 お母様が真剣な目で聞いている。


 え? 

 これってそんな重要な事? 

 うへぇ! 

 ちゃんと考えねば…。


「えっと、私が可愛い容姿なのは知っていました。可愛い容姿の自分が好きだなぁとか、お父様やお母様、お兄様方に可愛いと言われるのは嬉しいなぁとか、そんな感じです。でも、私の容姿が他人にどういう影響を及ぼすのかは、考えた事がありませんでした。自覚が足りなかったと思います」


「あら、ちゃんと私が求めていた答えに辿り着きましたね。アデル、貴方は王女なのです。良くも悪くも周囲への影響はとても大きくなる立場にあります。これから先、公の場に出る事が増えていきます。だから、容姿の事も含めて、王女としての自覚を持てるようになりましょうね」


 うーむ! 

 これは難問だ!

 根っから庶民の私には難し過ぎる!


「はい、お母様。これからもご指導をよろしくお願い申します」

「はい、よろしい。今のところ上出来ですよ。さて、ディー、シル」

 私を褒めてくれた後、お母様がお兄様方を見る。

「アンドレの事ですけど」

と言われて、ディー兄様がハッとした顔をしてからシル兄様の顔を見る。シル兄様が頷いたのを確認して、私の顔とお母様の顔を交互に見て、ディー兄様は言いにくそうに口籠った。

「あら! まぁ! それは本当? ちゃんと確認したの?」

「はい、直接聞きました」


 え? 何? 何の事? 

 何で会話が成立してるの?


「僕もその時、一緒にいました。ちゃんと釘を刺しましたよ」

「ホホホ、解りました。ディー、シル。ちゃんと報告してくれてありがとう。それから、貴方達の事もちゃんと相談してちょうだいね」

「もちろんです。それに、さすが母上です。シルと二人で悩んでいた事が、母上の手にかかればあっという間に解決しました」


「ディー兄様、何の事ですか?」

「え? ああ、アデルにどうやって自覚を促すか、という事だよ。母上が、糸口を作ってくださったから、これからアデルに具体的な注意をしてもちゃんと理解してもらえると思って良いのだよね?」

「えっ? あ、はい。たぶん大丈夫だと思います」

「たぶんて…。アデルは鈍いからなぁ。昨日の茶会でも、目をハートにしたご令息が沢山いたけど、どうせアデルは気付いてないだろう?」

「シル兄様、それは…えっ? それは本当ですか?」

「ほら、やっぱり気付いてないじゃないか。これだからなぁ。兄上も僕も苦労するのが目に見えるよ。たった一回の茶会で、妖精姫なんて呼ばれてるんだぞ! 

ちゃんと自覚! してくれよ」


 うひぃー。

 何でそんなに怒ってるの?


「はい、分かりました。気を付けます」

私は、シュンとなって答える。


「ホホホ、シル、今日はそれくらいにしてあげてちょうだい。本題に戻しますよ。アデル、側近候補の申し出はあったのですか?」

「あ、はい。申し出というか、希望を伝えるという感じだったのですけど、二名の方からありました」

「どなたか覚えていますか?」

「はい、二人とも護衛騎士を希望しています。一人は私の側仕えのオデットの妹でアメリー様、確か9歳です。もう一人は、ルロワ伯爵令嬢のステファニー様です」

「パトリス、資料を」

 パトリスが、オデットの家名をメアリに確認して、お母様に資料を渡した。


「なるほど。デュポン子爵の三女ね。父親が騎士団の副団長だから、もうお稽古を始めているかもしれないわね。それから、テルミノスオーチェア領のルロワ伯爵、こちらも領の騎士団に所属されている方の次女、8歳なのね。たしか、お義母様のご実家には、この子が仕えられる年頃のご令嬢はいなかったわね。二人とも女の子だけど、ディーとシルはどう思いましたか?」

「私は二人とも可能性はあると思います。アデルは女の子ですから女性の護衛騎士はどうしても必要になります」

「僕も悪くないと思います。二人とも体幹がしっかりしていました」

「アデルはどう考えていますか?」

「私は、できれば二人の希望を叶えてあげたいと思います。騎士の修行は大変でしょうけど頑張って基準に達する事ができるのであれば、側近にしたいと思います」


「分かりました。では、文官はどうしましょうか」

「王妃殿下、一人、親からの相談を受けているのですが、その話をしてもよろしいでしょうか?」

「パトリス? そういった事は、王族の側近として有るまじき事ですよ?」

「いえ、王女殿下の側近にしたいという相談ではないのです」

「どういう事ですか?」

「王妃殿下は、魔法師のルー伯爵をご存知でしょうか?」

「ええ、昨日のお茶会で挨拶を受けました。たしか今年、洗礼の子が男の子だったかしら」


「はい、まさにその子の事です。男の子なのに男でいる事に嫌悪感を持っている様で、女の子の服を着たがったり、可愛い物を好んだりするそうで…。

 親は、個性として受け入れられるが、ノビスタスコラでは虐められるのではと、今から心配しているそうで、どうしたら良いかという相談です」

「パトリス、何故その話を今ここでするのですか?」

「はい、王女殿下の側近候補として殿下に庇護していただければ、虐められる事は減るのではないか、と考えました。この話をルー伯爵にしても良いか、お伺いしたかったのです」

「…アデル、今の話を聞いてどう思いますか?」


 トランスジェンダーかな? 

 前世では、身近にいなかったけど、特に嫌悪感はない。

 マイノリティーは、イジメの対象になり易い。

 私も前世でずっとイジメられていたから、その辛さは良く分かる。

 誰か一人でいいから、家族以外の理解者がいれば、

 イジメに立ち向うための強さを得られるチャンスはある。

 私がその一人になれるかな?

 結局は人間同士、気が合うか合わないかだものね。


「ルー伯爵に話をしてみても良いと思います。その上で、側近候補を希望するのであれば、直接会って話してみたいです」

 すると、お母様が

「少しの間、内緒話をするので盗聴防止の魔法を施します。皆、魔法の範囲から出なさい」

と言って、胸のペンダントを外して魔力を込める。


 魔法が展開され、皆が範囲から出るとすぐ、お母様が

「アデル、貴女は大丈夫なの? もしその子が側近候補を希望したら、受け入れられるのですか?」

「お母様、大丈夫です。前世では、ルー伯爵令息のような殿方は、沢山いました。それに、人間同士、気が合うか合わないか、ですから」

「その子がずっと、男性らしさを取り戻せなかったら?」

「お母様、もし私の前世と同じケースなら、ルー伯爵令息は一生、今のまま変わらないと思います。もちろん、こういった方への偏見があれば本人は辛い思いを沢山するでしょう。ただ、私のスタンスは王女として変えられませんから、その範疇で力になるだけです」


「もしかして、原因が判っているのですか?」

「前世では、母親の体内にいる時のホルモン環境のせいで、身体の性と脳が認識する性にズレが生じるのではないかと考えられていましたが、明確な原因は判っていませんでした」

「ホルモンとは何です?」


 あー、ヤバい! 

 レオアウリュム様がタタリ神になっちゃう!


「お母様、これ以上は、レオアウリュム様とのお約束に抵触してしまいます」

 ハッとなったお母様が呟く。

「あ…。そうですね。私としたことが…」

「お母様、心配してくださるのはとても嬉しいです。私は問われたので、自分の考えを答えましたが、お母様の判断で会う事もダメだという事であれば、そう仰ってください。私は、お母様に従います」

「…分かりました。私を信頼してくれてありがとう、アデル。私の可愛い娘」

 そう言ったお母様は、私を抱きしめてくれた。


「はー、アデルに前世の記憶があるという事は、こういう事か」

と、ディー兄様が言えば、シル兄様が

「兄上、アデルの前世の記憶と転生者だという事は、セットにして絶対バレない様にしないと!」

と言う。

 すると、お母様が顔を上げて笑いながらふざけて言う。

「まぁ、ディーとシルに今の会話を聞かれてしまったわ。うふふっ、アデル、どうしましょう」


 いや、笑いながらどうしましょうって、今更…

 !!! 

 待て待て、疑問を解消するチャンスだ!


「ディー兄様、シル兄様、どうして前世の記憶がある事や転生者である事を秘密にしないといけないのですか?」

「アデルには、まだ話してないのか? ああ、父上が急に多忙になったからだな。アデル、少し長い話になるし、私も全てを知っている訳ではない。だから、父上に時間ができるまで待ってくれないか?」


 えーっ!

 気になる〜!

 でも、理由があってディー兄様もこう言ってるんだろうからなぁ。

 仕方ない。我慢しよう。


「分かりました。絶対、話してくださいね」

「大丈夫だよ」

「では、魔法を解除しますよ」

と言って、お母様は魔力を込めるのを止めると、ペンダントを胸にかけた。


「皆、待たせましたね。パトリス、ルー伯爵に話をする事を許可します。側近候補を希望しても、しなくても、私に結果を報告しなさい」

「かしこまりました」

「申し出のあった二人には、正式に要請します。パトリス、頼みましたよ」

「かしこまりました」

「文官の件は、もう少し時間をかけましょう。アデル、それで良いですね」

「はい、お母様」

「疲れましたね。さぁ、お茶にしましょう」

お父様を除く家族が、アンドレのアデルに対する好意を共有しました。

アデルとお父様が知らないという所が、どんな展開を呼ぶのか、楽しみですね♪

次回は、新しくできたお友達との交流です。

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