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負けず嫌いの転生 〜今度こそ幸せになりたいと神様にお願いしたらいつの間にかお姫様に転生していた〜  作者: 山里 咲梨花


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側近選び 〜護衛騎士・文官〜

アデルにとって、あまり気乗りしないお茶会が始まります。

上手く乗り越えられると良いですね。

 今日は、お披露目のお茶会当日だ。

 7歳以上の入学前の子ども、つまり、7歳、8歳、9歳の子供を持つ貴族を招待している。親の同伴はあるが、子どもの交流がメインの、顔合わせを兼ねたお茶会である。

 王家主催のお茶会なので、会場は、王城の大広間である。


 側近を選ぶなんて、何を基準にすればいいのか全くわからないよ! 

 お兄様方が張り切っていたから、何やら楽しいことの様な気もする。

 うん、そういう事にしよう!

 こんな感じに私のテンションは全く上がらない。


「アデル、緊張しているのかい?」

「お父様、来てくださったのですね!」


 大広間の控え室で待っていたら、お父様とお母様が来た。このところ、お父様とは夕食の席ですら会えなかったので、嬉しくて思わず駆け寄ると、私を抱き上げたお父様が謝る。

「王家の主催だからね。挨拶だけで仕事に戻るけど、母様はずっと一緒に居るから心配はしなくて良いんだよ。ずっと一緒に居てやれなくて、すまないね」


「お父様、まだお忙しいのですね。いつまで続きそうですか?」

「ああ、全て方が着くには、もう暫くかかるかな」


 主犯が捕まっているのに、一月半経っても終わらないなんて、何が問題になっているんだろう。


「そうですか。お父様、体調だけは気を付けてくださいね」

「ああ、ありがとう、アデル」


 そこに、ディー兄様が入って来た。

「父上、おいでになれたのですね。良かった」

「ああ。だが、挨拶が済んだら仕事に戻る。後の事は、ディー、頼んだぞ」

「そうですか。残念ですが、公務とあれば仕方がありません。後の事は私にお任せください」

 そこに、シル兄様もやって来た。


 公務とはいえ久しぶりに家族全員が揃ったので、私のテンションも少しだけ上向きになった気がする。


 時間が来たので、王族専用出入口から、お父様とお母様を先頭に大広間に入る。大広間には、親子連れの貴族が大勢集まっている。


「皆、本日はよく集まってくれた。先日、第一王女が無事に洗礼式を終え、全属性のご加護を賜った事は、既に承知の事と思う。貴族各家でも、7歳の洗礼を受けたトールトスディスの新しき子が、六つ柱の大神のご加護を賜った事は、国王として大変喜ばしい事だと思っている。後で、子ども達の席に王子・王女が回ってくる。ノビリタスコラ入学前の良き交流の場となる事を願っている」


 今回、国王であるお父様に直接挨拶するのは、洗礼を受けた子とその親だけだ。お父様とお母様が壇上中央の玉座に座り、私達兄妹が玉座に向かって右側に用意された席に座ると、上位貴族から挨拶の列が出来る。


 最初に挨拶に来たのは、ルグラン公爵家のイヴォンヌおば様と三人の男の子だ。


 ロベールおじ様は、仕事で来れないんだろうね。

 あら?

 今回は挨拶より、賜った加護の報告といった意味合いが大きいみたいだね。


 お父様達の次は、私達の前にも列ができる。洗礼式のお披露目会のように挨拶が続いていくが、今回は7歳の子がいる家だけなので、あの時よりずっと早く終わりそうだ。

 挨拶を終えた家族は、お母様の側仕えが、テーブルに案内してゆく。7歳の子がいない家族は列に並ばず、直接、案内を受けて席に着いている。


 全ての挨拶が終わって全員が席に着くと、お父様を先頭に壇上から降りて、全体が見渡せるよう一段高い所にあるテーブルに着く。いわゆる王族席だね。

 それを合図に一斉にお茶とお菓子が給仕される。お父様が作法どおりお茶をひと口飲み、お菓子をひと口食べて見せて

「今日の茶と菓子は、王太后の生家から献上された物だ」

と言って、右手でどうぞと促す。

 私もお茶をいただいてみたらとても美味しかった。子どもの口には砂糖やミルクが必要かもしれないけど…。


「アデル、そろそろ動いてもらうが良いか?」

「はい、お父様。頑張ります」

「皆、これから王子・王女が各テーブルを回る。私は中座するが、王妃は残る。皆、よろしく頼む」

 お父様はお母様を軽く抱擁し、私達の肩に手を置いて優しく微笑んでから颯爽と退室して行った。


 それを見送った私とシル兄様は、お母様の文官が導くとおりに子どもだけが座る最初のテーブルに向かう。最初は、公爵家のテーブルのようだ。ちなみに、親は隣のテーブルの席に着いている。

「皆様、お待たせしました。第二王子シルヴァプレと第一王女アデリエルです。

本日は、よろしくお願いします」

 シル兄様が挨拶してくれたので、二人並んで空いている席に座る。


 王族席を見ると、席に着いたままのお母様と立ち上がったディー兄様が、何やら話している。それからディー兄様は、さりげなくこちらに来て私の後ろに立った。


「先ほどご挨拶させていただきました、ルグラン公爵の次男、ダニエルです」

「同じく三男のジョエルです」


 瓜二つだから、一卵性の双子ちゃんかな?


 この世界では基本、洗礼が終わるまで子どもが公の場に出る事はない。だから、従兄弟だけど会うのは初めてだ。いや、会えなかったのは私が王女だからで、特殊事例なのかもしれないなぁ。


 続けて、ダニエルとジョエルの後ろに立っている男の子が挨拶する。

「僕は、ルグラン公爵の長男のルネです。今日は、父の代わりに弟達の付き添いで伺いました。アデリエル王女殿下には、お初にお目にかかります」

「ルネは、ノビリタスコラでの私のクラスメイトなんだ。そして、私の護衛騎士見習いを勤めてくれているんだよ」

と、ディー兄様が後ろから小声で教えてくれる。


 あ、そうか。

 ディー兄様とシル兄様の側近候補の方もいるのよね。

 迂闊だったわー!


「僕は、ランベール公爵の次男、ジョルジュです。アデリエル王女殿下には、お初にお目にかかります。年齢は、シルヴァプレ殿下と同じ9歳です。どうぞお見知りおきください」

 シル兄様と同じ年なのかぁと思いながら、シル兄様の方を見ると

「ジョルジュは、僕の文官見習いとしての勉強をしてくれているんだよ」

と教えてくれた。


 続いて、ジョルジュの後ろに立つ男の子が口を開く。

「私は、ランベール公爵の長男、アンドレと申します。本日は父の代理で弟の付き添いとして参りました。アデリエル王女殿下にはお初にお目にかかります。どうぞお見知りおきください。それにしても、王女殿下はとても大人しい方なのですね。先程から一言もお話になっておられない」


 え? 私? 

 顔と名前を覚えようと必死ですが、何か?


 敢えて右手を頬に当てておっとりと話す。アリエルおば様、直伝の技だ。生意気なガキにムカつく時は、これが一番良い。

「ここにいらっしゃる方は皆様、私とは従兄弟になるのですよね。お兄様方は既にご存知だと思いますけれど、私は初対面ですから、皆様のお顔とお名前を覚えようと一生懸命なのですわ」

とニッコリ笑って言う。


「アンドレ、妹は大人しいのではなく、大人らしいのだよ。同年代のご令嬢とは、一味も二味も違う女の子だよ」

 ディー兄様が笑いながらフォローしてくださる。


 ん? フォローだよね? 

 私の中身が大人だと知ってるんだものね!


「アデル、アンドレは私より一つ年上だけど、私の文官見習いをしてくれている。そして、将来は宰相になるべく努力している。冷たいと誤解を招くことも多いけど、本当にいい奴なんだよ」

「そうなのですね。ところで、このテーブルにいらっしゃる方で側近候補になっていらっしゃらない方は、ダニエル様とジョエル様なのかしら?」

「「そうです」」


 わーお!

 さすが双子ちゃん!

 見事なシンクロ!


「お二人は、将来の希望とかございますの?」

「僕達は、父上の様な強い騎士になりたいと思っています。な、ジョエル」

「うん、僕達は、父上の様な強い騎士になりたいと思っています」

「そうなのですね」

 可愛い二人に私はついつい微笑んでしまう。


 美少年のツインズ、可愛いなぁ! 

 あ、でも、一応同じ歳だから、絶対に口に出しちゃあダメだよね。

 気を付けよう!


 チラリと隣のテーブルを見ると、アリエルおば様とイヴォンヌおば様が、こちらの様子を窺っている。お二人とも私の先生なんだよね、と思うと、思わず背すじが伸びてしまう。


 このテーブルに来て、実感したよ。

 私は、一族の中の同世代で、たった一人の女の子なんだなって!


 ここで、お母様の文官が

「そろそろ次のテーブルへお願いします」

と、声をかけてきた。

「僕達は次のテーブルに行かなくてはならない。すまないが、後で話をしよう。さ、アデル」

 シル兄様が私を促して、エスコートしてくれる。

「皆様、ありがとう存じました」

 席を立って次のテーブルに移動して同じ手順で席に着く。すると、なぜかディー兄様だけでなく、アンドレ様も付いて来て、ディー兄様と一緒に私の後ろに立つ。


「私、マルタン侯爵の長女、カロリーヌですわ。アデリエル王女殿下、是非とも私とお友達になってくださいませ。先ほどご挨拶させていただいた時に、ビビビッと来ましたの。どうかお願いいたします」


 おーっと、お友達ですか! 

 黒髪・ブルーアイで可愛らしいご令嬢だなと思った子だね! 

 両手を胸の前で組むお願いポーズ! 

 こりゃ確信犯だよ! 

 何て返事したらいいんだろ?


「おい、カロン。何を言い出すんだ! 私は、マルタン侯爵の長男、ジルベールと申します。王女殿下、妹が突然変な事を申し上げました。大変申し訳ありません」

「別に変な事ではありませんわ。私とお友達になりたいと思ってくださった事は、とても嬉しい事ですもの」

と、ジルベールに言って、カロリーヌの方を向いてニッコリ笑う。

 カロリーヌの顔が、パッと花が咲いた様に綻ぶ。


「あの…私も…いえ。私、先ほどご挨拶させていただきましたマテュー侯爵の長女、フロランスと申します。あの…私も王女殿下とお友達になりたいです」

「まぁ…」


 この子は、ふわふわ茶髪にブラウンアイの、

 また違ったタイプの可愛子ちゃんなんだよねぇ。

 思わず笑顔で頷いちゃったよ!


「ははは、アデル。モテモテだね」

と、シル兄様が笑い出す。

「そうですわね。私も驚いておりますわ。…ところで、こちらの方は初めましてですよね?」

「あ、僕は、マテュー侯爵の次男、セドリックと申します。王女殿下には、お初にお目にかかります」


「うふふ、カロリーヌ様とフロランス様は、私のお友達になる事を希望なさいましたからダメでしょうけど、私、側近候補になってくださる方を探していますの。

ジルベール様は、いかがかしら?」

「あ、いや。僕は王族の側近は…。僕は将来、魔法師になりたいのです」

「まぁ、ステキ。それは素晴らしい目標ですわ。私、応援いたしますわね。では、セドリック様はいかが?」


 あらら、セドリック、真っ赤になっちゃったわ。

 あー、アデル美少女だからねぇ! 

 悪い事したかな?


「あの、僕は…その…」

「将来について何も決めていないのであれば、そう言って構わないのだよ」

 黙ってしまったセドリックに、ディー兄様が微笑みながらアドバイスする。

けれど、セドリックは真っ赤になって俯いたまま、モジモジして何も言わない。


「チッ!」

 突然、後ろから聞こえた舌打ちに体がビクッとなった。

 ディー兄様が、アンドレ様の足を踏んでいる気配がする。

 すると、アンドレ様が

「そろそろ次のテーブルに移った方が良いのではありませんか」

と言い、お母様の文官を見る。

お母様の文官はニッコリ笑うと

「そろそろ次のテーブルにお願いします」

と、私達に声をかけた。


「皆様、ありがとう存じました。カロリーヌ様、フロランス様、また後ほどお話しいたしましょうね」

と、声をかけて、次のテーブルに移るため歩き出す。


 さっきは、私の後ろで何の攻防があったんだろ?

などと考えながら歩いていると、追いついたアンドレ様が小声で

「王女殿下、側近候補を探しているなどと、こちらから口に出してはいけません。相手からの申し出を待つのです。いいですね!」

と、アドバイスしてくれる。

 ビックリした私が、思わずディー兄様を見ると、ディー兄様は何かを考えている様子で、アンドレ様を見ている。私は、ディー兄様の袖をツンツンと引っ張って、注意を引く。

「ん? アデル、何だい?」

「アンドレ様のアドバイスのとおりにした方がよろしいのでしょうか?」

「ああ、そうだね。私もアンドレの意見に賛成だよ」

「分かりました。ではその様にしますね」

という事で、アドバイスどおりに申し出を待つ事にする。


 でもねー。

 最後までテーブルを回っても、意思表示をしてくれたのは、

 たった二人だけだったんだよね!

 こんなんで、側近候補なんて選べるのかな?

 本当にただの顔合わせで終わった感じだよ!

 でも、お友達候補が二人も名乗りを上げてくれたのは、凄く嬉しかった!


 最後にプライベートなお茶会に誘う約束をして、今日のお茶会を終了した。

終わってみると、いろんな事が起こったお茶会でしたが、アデルは、

側近候補を選ぶというノルマが達成できなかった事ばかりに目が向いて、

全然気付いていません。

次は、側近選びの話し合いです。

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