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負けず嫌いの転生 〜今度こそ幸せになりたいと神様にお願いしたらいつの間にかお姫様に転生していた〜  作者: 山里 咲梨花


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現実ときどき神話

いつの世も、勉強に好き嫌いが生じるのは、お約束のようなもの

アデルもこの世界で生きる為の知識を身に付けようと頑張っています

「姫殿下、歴史の先生がお見えになりました」

 扉前で護衛をしていたマルクから声が掛かったので、私は立ち上がってお出迎えする。

 扉から入って来られたのは、先々代ランベール公爵のアールブムビィア様だ。

 アールブムビィア様は、お披露目会で初めてご挨拶させていただいた、先々代の国王陛下の弟君だ。今は、臣下に降っておられるとは言え、王家の直系男子として神から名を賜り、神との契約をご存知の方だ。ディー兄様とシル兄様にも、歴史を教えておられると聞いている。


「アデリエル王女殿下、この度、歴史を教えてやって欲しい、と国王陛下に頼まれまして、老骨がお役に立てるならと喜んでやって参りました。アールブムビィア・ル・ハフ・コントラビデウス・ランベールでございます。どうぞよろしくお願い申します」

「こちらこそよろしくお願い申し上げます。私は、貴方様をどのようにお呼びすればよろしいのでしょうか?」

「ならば、爺とお呼びくだされ。王太子殿下、第二王子殿下にも、その様に呼んでいただいております」

「いえ、それはちょっと、恐れ多いかと…」

「何を申されますか。この身は、とうの昔に臣下に降った身。どうぞ爺と」

「分かりました。では、お爺様、私の事はアデルと呼んでくださいますか?」

「おお、ありがたや。アデル姫、これから仲良うしましょうぞ」

「はい! よろしくお願い申します」


 席に着いてお茶を勧めると、お茶をひと口飲んだお爺様が

「アデル姫は、歴史に興味がおありかな?」

と聞いてきた。

「はい。この国の事を知ることができるので、楽しみにしておりました」

「ふむ。それは良い。ではまず、この国の始まりから話しましょうかな。


昔々、この世にある三つの大陸では、魔物が跋扈(ばっこ)し、人々の暮らしを脅かし続け、

国という形を造る事が、なかなか叶わなかった。

国ができては、スタンピードで滅びてしまう。

そんな事を千年以上繰り返したある日、

この土地の荒れ野で暮らしていた若者に、

六つ柱の大神が問いかけた。

『若者よ、人が生きてゆくのに何が必要か』と。

若者は答えた。

『魔物に脅かされず、安心して暮らせる、穏やかな場所が必要です』と。

続けて六つ柱の大神は、こう問いかけた。

『穏やかな場所があれば、人は生きてゆけるのか』と。

若者は、こう答えた。

『穏やかな場所があれば、私が人々を導いて安心して暮らせる国を造ります』と。

そこで、六つ柱の大神は若者に言った。

『では場所を与えよう。その代わり、人が神に祈り尊ぶ事を約束せよ』と。

若者は、真摯な気持ちで

『お約束します。私達、人に生きる場所をお与えください』

と、六つ柱の大神に申し上げる。

すると、六つ柱の大神は

『諾。契約の証にコントラビデウスの称号を授ける。この箱庭を良く治めよ』

の言葉と共に、魔力をお授けになった。

若者は、授けられた力を振るって結界を創り

また、授けられた力を揮って人々を導き

授けられた力を奮って魔物を退け

魔物に脅かされず、安心して暮らせる国を造った。


 これが、初代王アレックスプリーミス・ル・コントラビデウスの話じゃ。アデル姫は、知っておったかね?」


 なんか前世にあった宗教の教本に載ってる神話に似ているけど、

 この世界では、神話じゃなくて現実だからなぁ。


「はい、お伽話として部分的には聞いた事があります。こんなにちゃんとしたお話として聞いたのは、初めてです」

「ほほっ、そうかね。ところでこの話には所々、真実と違う所がある。その事は、知っておられるかな?」


 おーっと、ディー兄様に教えていただいた話の事だよね。

 お口チャック案件だから、注意して答えないと!


「いいえ、全部はまだ聞いておりません」

「おお、良い答えじゃ。アデル姫は聡い子じゃ。気に入ったぞよ」

「あ、ありがとう存じます」

「その違う所を教えるのはわしの役目ではない。それは理解しておられるかな?」


 ん? 

 それはお爺様に、神の契約に関しての質問をしてはいけない

 と釘を刺しているのかな?

 ならば、答えは一択だ!


「はい。必要に応じて、お父様が教えてくださると仰っていました」

「うむうむ。非常によろしい。ではわしは、どの様にして初代王がこの国を整えていったかを話して聞かせましょうかな。そして、次回からは、歴史がまとめられた本を紐解きながら、共に学んで参りましょう」

「はい、お爺様。よろしくお願い申します」


「では、参りますぞ。初代王がこの国を建国したのは350年以上前の事と言われております。その頃のこの国がある平野は、東に海、西に砂漠、南はサバンナ、北に大森林が続いておりました。今では西はサバンナになり、南に国ができた事以外は変わっておりませんがの。いずれも魔物の巣窟が多い地域ですな。もともとサバンナだったこの地域にも、小さな集落が点在しておりましたのが、…。」


 夢中になって、お爺様の話を聞いていたら、あっという間に8刻(午後4時)の鐘が鳴った。


「おお、もうこんな時間ですな。わしの話は、退屈ではありませんでしたか?」

「いいえ、とっても楽しく聞いていました。お爺様のお話は、とても面白いです」


 お爺様の授業は、前世と違って全く眠くならなかった。

 本当に面白くて楽しかった。

 これなら、楽しく歴史が学べる。


「そう言っていただけて安心しました。どうですかな? 勉強は、続けられそうですかな?」

「はい! 次回も楽しみにしています」

「ほほっ、大変結構。それでは、今日はこれにて御前失礼いたします」


 次の日、午前中のマナーの授業の先生として来てくださったのは、イザークおじ様の奥様、アリエルおば様だ。今のアリエルおば様は公爵夫人だが、お父様の姉君であり、降嫁された元王族の方だ。

 長らく王女としての勤めを果たして来られた方が、他の貴族とは違う、王女としての立ち居振る舞いを教えてくださるのだ。

 私の中のアリエルおば様は、優しくて柔らかい雰囲気の方だったのだが、一気に印象が変わった。優しい口調で厳しい事を仰るのだ。柔らかい雰囲気に騙されてはいけない。最初の挨拶からチェックされている。

今もお茶をお勧めしたら

「アデリエル姫はまだ7歳でいらして手の力も弱くていらっしゃるでしょうから、この様にしてカップをお持ちになるとよろしいと存じますの」

と注意される。

 直訳すると、カップの持ち方が違う! こうやって持って! という事だ。

 負けじと私もニッコリ笑って

「こうでしょうか」

と持ち方を直してみせる。

「そうですわ。そうやってお持ちになれば、とても優雅に見えましてよ」

「はい、ありがとう存じます」


 アリエルおば様の直接的に言わず、遠回しに、だけど相手にちゃんと伝わる言い方のテクニックも見習うべき良いお手本だ。


 ものすごく、しんどい。

 特にメンタルが…。

 でも、負けないぞ!


 午後の授業は、裁縫だ。先生として来てくださったのは、ロベールおじ様の奥様のイヴォンヌおば様だ。

 イヴォンヌおば様は公爵夫人だけど、結婚する前のテルミノスモンス子爵令嬢の時代に、刺繍作家として活躍しておられた。その腕を見込まれて私に刺繍を教えてくださる事になったそうだ。


「私の子どもは三人とも男の子でございましょう? 娘が生まれたらこうして刺繍を教えたい、とずっと考えておりましたのよ。でも、こういう事は、なかなか思いどおりにはならないものですもの。殿下にこうして、お教えする機会をいただけて本当に嬉しゅうございますの」

と本当に嬉しそうに、甲斐甲斐しく教えてくれる。


 うっ! 不器用で申し訳ありません。

 …でも、負けないぞ!


 後日、私には算術の授業は必要ない、という事になり、代わりにダンスの授業が入って来た。


 うう、淑女教育包囲網が…。


 こうして、私の新しい一日のサイクルが回り始めた。

王女としての勉強が、本格的に始まりました

次回は、側仕えの選出です

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