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負けず嫌いの転生 〜今度こそ幸せになりたいと神様にお願いしたらいつの間にかお姫様に転生していた〜  作者: 山里 咲梨花


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親族会議

さあ、アデルにとっての正念場となる家族会議に出席します。

ですが、アデルの思惑とは少しズレた方向に話が進みます。

この世界の常識を手に入れる事が出来るのでしょうか。

 神殿からお父様の居間に戻ると

「会議室に移動する」

とお父様が、全員に聞こえるように言う。


 私の中では、自分の部屋に戻ってお披露目会の準備をする、という予定になっていたので、メアリとセブランに小声で予定変更を告げる。

「予定変更よ。私も会議に出なくてはいけないの。対応をよろしくね」


 部屋で待っている側仕えに予定変更を伝え、遅くなっても対応できるように準備をお願いするために、オリビアには先に部屋に戻ってもらう。

 他の方は、会議室へ移動したので、私もメアリと護衛騎士三人を連れて、会議室へ向かう。すると、お母様が途中で待っていた。

「アデル、少しは落ち着きましたか? 皆様の前でちゃんとお話ができるかしら、心配だわ」

「ありがとう存じます、お母様。何とかなるでしょう」


 そう、女は度胸! 

 いや、愛嬌だろ!


 会議室の前ではイザークおじ様が、会議室に入る事ができる側近は、側仕え一名と護衛騎士一名で、他は控室で待つように指示をしている。

 私は、メアリとセブランを連れて会議室に入る。

 会議室には、10名が座れる大きさのテーブルと椅子が準備されている。


 お父様がお誕生日席に座ると、左側に私、お母様、お祖父様、ロベールおじ様の順で座る。私の正面からお父様の右側に長老格のステラルクス様、ラファエル様、グラーチェおじ様、イザークおじ様の順で座る。

 そして、それぞれの護衛騎士は、主人の後ろに立つ。

「まずは、皆、疲れたであろうから、お茶にしよう」

 お父様の言葉にそれぞれの側仕えが、主人にお茶とお菓子を給仕する。


 お茶を一口飲んだステラルクス様が

「アデリエル姫殿下、本日の洗礼にて全属性のご加護を賜った事、親族を代表して心からお喜び申し上げます」

と、とても優しい笑顔で言ってくれたので、緊張していた私は、嬉しくなって

「ありがとう存じます」

と、にっこり笑ってお礼を言う。


「イザーク、盗聴防止の魔法を頼む」

と、お父様が言うと

「かしこまりました。騎士と側仕えは、魔法の範囲から出るように」

と、イザークおじ様が指示をして、盗聴防止の魔法をかける。


 何も知らないメアリとセブランが、心配そうにこちらを見ていたので、にっこり笑って頷いて見せた。すると、二人とも頷き返して、部屋の壁際に控えてくれた。


「さて、今日の洗礼では常と違う事が二つあった。ひとつは、アデルが名を賜った事。ひとつは、アデルの魂の事だ。まずは、ステラ叔父上、ご意見をお聞かせください」

「そうですな。私は、二つの事は関連していると思っている。姫殿下の魂は異世界から渡って来た上、前の記憶があるが、(すが)しくて(この)もしい。だから、名を授ける。という事だと解釈している。他の方々は、いかがですかな?」


「レオアウリュム様のお言葉と態度から、私もステラルクス様と同じ解釈をした。しかし、レオアウリュム様は姫殿下に記憶の乱用を禁じ、わざわざ陛下への協力を承知させた。私は、六つ柱の大神が禊の時に姫殿下の記憶を査定した。その上で釘を刺したのだろうと思う」

と、ラファエル様が発言すると


「だがな、エルちゃんの何をもって、名を賜るという異例の事態になったのかが、わからん。エルちゃんは賢いが飛び抜けて優秀という訳ではない。これまでに誕生した姫たちと何も変わらんように思うのだが…」

と、お祖父様が疑問を投げかけて

「他の三人は、どう考えるか意見を述べよ」

と言い、ロベールおじ様を見る。


「私も父上と同意見です。六つ柱の大神が、姫殿下に何を期待して名を授けたのかがわかりません」

と発言したロベールおじ様は、グラーチェおじ様を見る。


「私も、相談役のお三方とほぼ同じ事を考えていました。名を授けて、釘を刺す、矛盾しているなと…」

と答えて、イザークおじ様を見る。


「六つ柱の大神は、ただ単に、姫殿下を囲い込みたかったのではないでしょうか」


 全員の意見を聞き終えたお父様は、私を慈愛を込めた目で見る。そこに

「私も、母としての意見を述べさせてくださいませ」

と、お母様が発言の許可を求める。


 お父様は、全員の顔を見て、拒否の反応がない事を確かめると、お母様の発言を許可した。

「まず、発言権のない私に、発言の場を与えていただき、皆様に感謝を申し上げます。私は母として、アデルの側近と密に連絡を取り、この子の成長を見守って参りました。私は、先の襲撃の折、この子が部分的に記憶を失った事が気になっております。あの事件のあと、この子が目覚めた時から、以前とは違う、そう、変化、を感じております。それが、父の懸念の解消の鍵になるのではないかと考えます」

と発言したお母様は、私の手を握ってニコリと笑いながら頷いてくれた。


 今まで、私に違和感を持ちながら、それを受け入れた上で私の味方をしてくれるお母様。愛情の深さが心に染みる。


「では、アデル。そなたにも言い分があるだろう。何か言いたい事があるならば、話してくれないか?」

「はい」


 私は、この場にいる人達が、私の転生と前世の記憶持ちである事をすんなり受け入れた事に驚き、その異常性に恐ろしさを感じていた。その反面、この世界の常識を何も知らない事にも気付かされた。

 

 どのみち、もうバレてるんだから、まな板の上の鯉だ!

 正直に話そう。

 少なくとも、お父様とお母様は、受け入れてくれるはず…。


「私の前世の記憶が戻ったのは、襲撃事件のあと、三日間眠っていた時です。

 目覚めた時は前世で死んだ時の記憶になっていましたので、周りの人の顔も名前も分からない状態でした。そのあと、この世に生まれてからの記憶が上書きされるように戻りました。

 ただ、その時、全ての記憶の上書きがなされた訳ではなくて、今世で得た知識に関する記憶のほとんどを失っています。それと、以前のアデルが思い出したくない事の記憶も無いようです。

 何をお話しすれば良いのか判りませんでしたので、お母様の発言への回答のつもりでお話しさせていただきました」


 ここで一息ついて、お父様の顔を見ると、唖然としている。

 他の人たちの顔を見ると、皆、驚いている。

 お母様はというと、しきりに頷いて納得の顔をしている。


 あれ? またやらかしたのか?


「君の前世とやらは、いったい何歳の記憶なんだね?」

ステラルクス様に尋ねられたので

「37歳です」

と、正直に答える。


「なるほど! 理路整然とした物言いをすると思って驚いたよ」

「姫ちゃんは、大人の考え方ができるという事だね。驚いたよ。六つ柱の大神は、それが気に入って名を授けたのだろうか」

「いや、安易に結論を出さない方が良いだろう。神の(ことわり)と人の(ことわり)は違う。それを忘れてはいけない。」

と、お父様が答え、私に尋ねる。

「アデル、君が大人の考え方ができるというのなら、私達が疑問に思っている事を質問しても良いかい?」

「はい、大丈夫です、お父様。私は、この世界の常識が分からないので、むしろ聞いてもらった方が助かります」


「では、私から良いかね?」

と、ステラルクス様が尋ねる。私は、ステラルクス様の方を向いて頷く。

「レオアウリュム様が仰っていた、過度の知識の流布を禁ずる、とはどういう事だろうか」

「まず、私の前世の世界には、魔法がありません。その代わりに科学が発達していて、とても便利ですが、その分兵器も発達しています。それから」

「ちょっと待った」

「はい?」

「科学とは何だね?」


 なぬ? 

 科学の概念がないのかぁ。

 どう説明しよう。


「そうですね。自然の理を解析・研究して、人間の生活に役立つ物を具現化する学問と技術、で通じますか?」

「うむ…。例えばどんな物があるのかね?」

「ええと、雷を自在に操る電気とか、その電気をエネルギー源にして機械を動かすとか、化石燃料を使って機械を動かすとか、でしょうか」

「魔法なしで雷を操るのかね?」

「雷で機械を動かすなんてできるのか? 黒コゲになるだろう!」

「化石燃料とは何だ? 化石が燃えるのか?」


 あちゃー、だよねー。

 こりゃ、理解を得るのに時間がかかるなぁ。

 いや、理解を得ちゃイカンだろ!


「とにかく! 私の前世の知識は、この世界の常識からかなりズレている、と思います。ですがもし、この知識が広まって再現されるような事になったら、あらゆる方面で大きな変革が起こって、この世界の価値観がひっくり返ってしまいます。

技術や成果品を競って奪い合う事になり、争いの種になるのです」

「アデル、兵器が発達していると言ったね。どういう物があるのかい?」

「お父様、言っても分からないと思いますけど、ミサイル、爆弾、銃などです。

神様が一番広めたくない物だと思います」

「ふむ」

「ステラルクス様、これで説明できたでしょうか」

「“過度の知識“の定義が欲しいところだな。それほど姫殿下の知識に興味がある」


 うえ〜。

 

 私は、思い切り苦い顔で答える。

「定義ですか…。わかりません」


 そんな怖い事、決められませんて! 

 レオアウリュム様が、タタリ神になったらどうするんですか!


「ステラ叔父上、この件に関しては、日を改めて議論しましょう。他の質問がある者はおるか?」

「良いか?」

「フォルゴ叔父上、どうぞ」

「エルちゃんや、君の幼い頃の記憶は、確かに残っておるのだよな? 今日の君はわしの知るエルちゃんとは別人のようだ」

「お祖父様は、私の中にある幼い記憶では、甘えられる大好きなお祖父様です。

だから、今の私も無条件にお祖父様が大好きです。別人に見えても、私は私です。アデリエルである事に間違いありません」

「そうか…。そうか。良い。わかった」


「ところで、姫殿下が賜った名は、どう取り扱うのか決めなくて良いのか?」

 イザークおじ様の発言で、一同がハッとなった。


「六つ柱の大神から名を賜ったという事は、名実ともにコントラビデウスの一員になったという事だ。とは言え、これまで同様、世間にこれを公表する事はない。」

 ステラルクス様の発言に、ラファエル様が続く。


「王族の直系男子は、産まれてすぐレオアウリュム様に謁見し、名を賜ってきた。そのため、公表を賜った名でしているが、アデリエル王女殿下は、すでに今の名で公表している。世間に向けてと、神に向けてで使い分けをするしかあるまい」

「そうだな。名の秘密を守る為にも、そうするべきだろう。いかがか?」

 お祖父様の問いかけに、他の人達も頷いている。


「すみません。名の秘密がどんなものか教えていただく事は、可能ですか?」

「もちろんだ、アデル。本来であれば、私がそなたに教えるべき事だ」

「お父様、ちゃんと教えていただけるのであれば、今でなくても構いません」

「分かった。必ず時間を取って必要な事を教える。では、アデリエルが賜った名は公表しない。皆、それで良いな」

「異議なし」

「同じく」

「私も異議はない。だが、これで姫ちゃんを公爵家以外に降嫁させる事は出来なくなりましたね。それはどうするつもりですか?」


 エッ! 

 私の嫁入り先が限定されるの? 

 なぜに?


「イザークの息子が二人、ロベールの息子が三人、合わせて五人いるではないか。この中から姫殿下に選んでもらえば良い。状況によっては、新たな公爵家を立てても良いのだ」


 えーっ! 

 ステラルクス様、そんな簡単な事のように…。


「アデルは、まだ7歳だ。そんな先の事を、今、決めずとも良い。なんなら、嫁になぞ行かず、ずっと城にいても良いのだ」


 えーっ! 

 それはないよぉ。

 今世では、お嫁に行きたいのに…。


「親バカ」


 ですよねー。

 ロベールおじ様、もっと言ってやって!


「コホン」


 イザークおじ様の咳払いで、場が静かになる。


「今回の洗礼で起こった事に対する意思の統一は、図られたものとみなす。細かい所は後日、改めて協議する。この後の披露目の会では各自、役割を全うしてくれ。以上でこの場を解散とする」

 お父様の言葉のあとすぐに、イザークおじ様が魔法を解除する。


「アデル、頑張ったわね」

「お母様」

 私がお母様に抱き付いて顔を見上げると、お母様は私の頭を撫でてくれる。

「偉いわ、さすが私の可愛い娘」

 すると、お父様が私を抱き上げて、さっさと歩き出す。

「私が部屋まで送る」

 お母様のクスクス笑いを背に、私はお父様に甘えて、部屋まで運んでもらった。

神との契約の内容の端っこが散りばめられた、意義のある話し合いでしたが、

アデルは自分の事で一杯一杯のため、またまた気付いていませんwww

それに、実は魔法オタクのステラルクスに、目を付けられたようです。

これから、どうなるのでしょうね。

次は、お披露目会です。

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