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貴方は、ツギハギ令嬢の私の手を取った  作者: 悠木 源基


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第45章 兄弟間の言い争い

 

 ナタリアさんと私のドレスが仕上がったのはパーティーの一週間前だった。

 仕事の合間の作業だったのでどうなるのか心配していたけれど、どうにか間に合って本当に良かった。

 ナタリアさんやカラッティー商会関連の洋裁店のお針子さん達とも親しくなれて、忙しい中でもそれはとても楽しい時間だった。

 

 しかしその間、ルーカス様は不機嫌そうだった。ようやく恋人同士になれたのに、デートもできやしないと。

 ようやく出来上がった二着のドレスを、カラッティー商会からカイトン伯爵家へ運んだ日も、ルーカス様が兄上様にこう愚痴を吐いていた。

 

 

「ハルディン兄上はいいよ。今さら会えなくなったとしても、これまで散々べったりしていたんだからね」

 

 それを聞いた時には、申し訳なかったと思いつつ少し笑ってしまった。いつもは凛々しくて落ち着いた大人の男性なのに、やっぱり弟なんだなって。

 

『子供のころは末っ子で甘えん坊だったんだよ』

 

 以前ルーカス様の従兄のアンドリュー様がそう言っていたけど、本当だったのねと思った。がっかりしないかと彼からは心配されたけど、そんなことはない。

 むしろそんなところが可愛いと思うし、そんな一面を隠さずに見せてもえることが嬉しい。心を許されているような気がして。

 

「だけど、お前達は婚約したら結婚式を挙げるまで、屋敷内で一緒に暮らして、一緒に登城するんだろう? 

 パーティーにもこれから一緒に参加するんだし羨ましい限りだよ。俺達は出られないんだから」

 

「ナタリアだって昼間は屋敷にいるじゃないか」


「王城にいる俺は会えない。ナタリアの休日は俺に合わせてもらっているが、そもそもその休日を滅多に取れない」


「それは、元凶(ホランド王太子殿下)やウェンリー兄上に文句を言えよ。

 それにさ、結婚して叙爵されたらナタリアとも参加できるじゃないか。

 それに年内中には結婚できるんだからまだいいよ。僕なんて二年後だ」

 

「何言ってるんだ。俺達はお前よりずっと長い間恋人同士だったのに、今まで婚約すらできずにずっと我慢してたんだぞ」

 

「それこそ何言ってるんだよ。前世だってずっと一緒だったんだろう? 二度も好きな女性と結婚できるって、どんな強運なんだよ!」

 

「全くだぞ。お前らの我慢なんてたかが知れてるぞ。私なんて婚約してから何年待っていると思っているんだ! 六年だ、六年!

 しかも世間にようやく婚約発表できたと思ったら、後がつかえてるからって、その一月後に結婚式だなんておかしいだろう。

 そりゃあ、早く結婚式は挙げたいよ。だけど、私の最愛の婚約者だと、もっとキリアをみんなに見せびらかしたかったのに、後が詰まっているからさっさとやれだなんて、あんまりだ。

 新国王の戴冠式だと? そんなの正直知ったことじゃないね」

 

 長兄ウェンリー様の怒りのこもったこの言葉に、弟さん達は黙ったわ。だって、三組合同の婚約発表パーティーなどしなかったら、ウェンリー様とキリア様の婚約はもっと早く公にできたのだから。

 でも、結婚する年齢は三人とも二十四歳なのだから、我慢する長さは皆様あまり変わらないのでは? と思ってしまった私だった。

 

 長兄ウェンリー様と次兄のハルディン様は年子で、ルーカス様はさらにその二つ年下だった。

 でも、結婚式はさすがに別々になって良かったわ。例のごとく伯爵様は、上のお二人の結婚式だけでも同時に挙げれば、面倒が一つ減ると提案されていたのだが、さすがにそれはケイト様によって一蹴された。

 

「主役の花嫁は一人で十分です。旦那様がそんな無神経な方だとは思いませんでしたわ」

 

 愛妻からブリザードのような冷気を浴びせられ、伯爵様が真っ青になって平謝りしていたのには驚いてしまった。

 泣く子も黙る氷の宰相と二つ名で呼ばれている伯爵様があんなに必死になっているなんて。

 どうやら、カイトン一族のボスはケイト様だったらしい、とその時私は理解したのだった。

 

 それにしても、三兄弟のやり取りが微笑ましくて、胸の中がほっこりとした。そしてうちと違ってなんて仲が良いのかしら、と羨ましくなった。

 

 

 しかし、その後、今日ルーカス様がなぜそんなにも不機嫌だったのか、その理由がわかった。

 弟から話を聞いたすぐ上の兄ハルディン様までも不機嫌になり、二人して長兄のウェンリー様を睨みつけた。

 というのも、今日王宮でルーカス様は、シェリル妃殿下に脅された(・・・・)というのだから。

 しかも、ホランド王太子殿下までそれを嗜めるどころか、一緒になってその要求してきたというのだから。

 

「いくらなんでも命の恩人に対して図々しくないですかね、兄上? 報奨したと言ったって、それってルーカスが望んだことじゃないですよね? むしろはた迷惑?

 それなのに反対に恩着せがましいことを言って、無理な要求をしてくるなんて、この先が思いやられますね。

 側近として、しっかりと主の首根っこ掴んでおいてくださいよ」

 

 す、すごい。ハルディン様。

 たとえ身内しかいなくても、そんな不敬罪に問われそうな恐ろしい台詞を平然と言えるなんて。

 まあ、要求が私やルーカス様だけでなく、ハルディン様やナタリア様に関することだから、怒るのも当然だと思うけど。

 

 するとその兄弟間の言い争いにキアラ様まで加わったので、その後ウェンリー様はタジタジになったのだった。

 


「リックスや他の独身連中と組んで反乱でもおごさないか? そろそろ我慢の限界なんだけど」


 言い争いの中で、ルーカスとハルディンまで、こんな物騒な話をしていたとに、気付いていなかったクリスティナだった。


 読んでくださってありがとうございました。


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