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78星降る夜に(改)

「ミュラー子爵様、ミュラー子爵様、起きてください、もう閉店の時間ですよ」


「ん―閉店~…あれ私は寝込んでしまったのか」


「はい、とっても気持ちよさそうに眠っておられました。」

ヘンリーは自分がカウンター席で寝込んでいたことにきづいた。


「あれ、私は個室に移って友人と飲んでいたはずだが・・・?」


「いいえ、最初来られてからずっとその席で一人酒を楽しまれ、いつの間にか気持ちよさそうに寝こまれたのですが」


「えっ、じゃ私は夢を見ていたのか」

見ると店内は本当に客は自分一人になってしまっていた。


「どうやらそのようですね」


「そうか」

ヘンリーはほっとあんどした。

<アドラスが帝国から狙われているという話は夢だったのだ。良かった!でも一応用心した方がいいかもしれん>


「ありがとう、では私も失礼するとしよう」


「はいおやすみなさいませ」

そうあいさつを交わし、待って居た侍従とともに店を出たとき、空には満点の星が降るように夜空に輝いていた。

空を振り仰いだヘンリーとお供の侍従は、思わず感嘆の声を上げた。

ヘンリーは遠く辺境の地近いミュラー領にいる自分の子供達が、この夜空を眺めて歓声を上げているかなと思いをはせた。心配していたよりもアドラスは腹違いの弟のルシアンを受け入れ兄弟仲が良かった。

ルシアンも兄を尊敬し慕っている。妻はなさぬ仲のルシアンに思うところはあるようだが、それは仕方ないと思っている。それでも妻は継子いじめするようなことはしないなかなか切符のいい性格をしているので、その点は安心していたし妻を信じていた。

世間ではなさぬ仲の親子関係におおもめしている貴族家は珍しくないから、その点自分は恵まれていると心から思っている。じぶんはこれからも時に浮気するかもしれないが、妻はエリザベス一人だと、


<愛してるよ、奥様>とヘンリーは愛しい妻に心の中でつぶやくのだった。


「クシュン!!、だれか私の噂してるのかしら?」


エリザベスは刺繍の手を休めて、鼻の下をこすりつぶやくのだった。

教会のバザーが近くあるので彼女は夜なべしていたのだ。さっきまでアドラスも一緒に刺繍をしていたが夜も遅いと先に寝かせた。

「私ももう寝ようかしら?」


針仕事でいつのまにか右肩が凝っていて、首をコキコキ動かし肩をもんだ。

 

「はぁー年を取るのは嫌だわ、もっと若い時は肩なんてこったことないのに」

彼女は風呂に入りましょとさっさと入り支度を始めたのだった。




その同時刻ごろ初めてみたバリアス王国王都の夜空に、歓声を上げるある帝国の親子がいた。

「ワァー!母上!、王国の夜空は星がすごいです、帝国より空が澄んでいるのでしょうか?」


「ま、ほんとみごとね、」


「兄上そうなのですか、僕の目ではよく見えません、とても残念です。でもベランダの空気は、昼間の暑さが嘘のようにひんやりして気持ちいいです」


「本当ね、」

王都の一流のホテルのベランダで紅茶を飲みながら涼を楽しむ親子は、一見帝国の富裕な商人の家族のようだった。

しかし、彼らは商人に装っていたが、放たれるふんいきが上級貴族の気品の高さと優雅さと美しさを自然と放っていたのだ。それに商人の子なら母上とか兄上とか言わない、お母様とお兄様である。使用人も下がらせベランダで自分たちだけだから素の言葉使いがでたのである。アドラスが一目見れば真っ先に疑っただろう。


「それにしてもよかったですね。噂の治癒師がミュラー領の領主の息子だとわかって、」


「ええ本当に、まだ8歳で治してもらうレザモンドと同じ年だそうだけど、すでに年で失明した老婆や爺を幾人も治癒して見えるようにしたそうだから、きっとレザモンドの目も直してくれるでしょう。これまで帝国中の治癒師を頼ってだめで、ならばだめで元々と王国まで来たかいがありました。つてとして帝国でも大きく商売しているメリー男爵に紹介を頼みましたからやってもらえることになって本当に良かったわ。」


「母上、よかったですね、」


「ええ本当に、期待しましょう。ミュラー領までは王都から馬車で4日かかるそうだから無理をしないで旅しましょうね、無理して直してもらうレザモンドの具合が悪くなってはいけませんものね。治療にさわってはいけないわ、向こうに着いたら宿屋にその日は一泊して先ぶれを出し、翌日訪ねましょう。」


「「はい母上」」



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