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「アドラス様、アドラス様の母方のおじい様は、勇猛を鳴らした前首狩り伯爵様です。
ご趣味はレース編みで、奥様の花嫁衣裳のベールをおつくりになられ、それは素晴らしい総レース編みで、奥様を花嫁として送り出されました。孫のアドラス様が刺繍と小物づくりをなさるのはそう不思議ではございません。
だからと言って剣の修行を怠けていいとは言いません。
さあアドラス様、剣を構えてください。剣の道は一日にしてならずでございます。
ミュラー軍の軍団長であるこのアーロン・ヘリックスがお相手します。どこからでもかかってきてください。」
<暑苦しい熱血軍団長め!>
とアドラスは腹の中で毒づいた。
「さあさあ怖気づいておられますかな」
<むー!>
「やぁー!!」
アドラスは掛け声勇ましく軍団長に上段に構え勢いよくかかっていった。
「キン、キン、キン、カッ、カカッ、キン、キン、カッ、バサーッ!!」
アドラスは地面に転がされた、そこへすかさず軍団長の模擬剣がアドラスめがけて
ふりおろされる。
アドラスは地面をコロコロ転がって剣に突き刺されないようによけ、急いでバッと立ち上がり剣を構えなおす。
軍団長はにやりと口角の右端を上げた。
アドラスの剣の才能は、相変わらず8歳児とは到底思えぬ恐るべきものだった。
明らかに剣の才は父親似ではなく母方似であった。軍団長としてうれしい限りである。
そのうえ魔力はこの年で宮廷魔法師団員並みと来てる。魔力のコントロールのために王家譲りの魔道具の腕輪を右腕の手首にはめていた。これがなければ魔力が暴走し、まともな生活はできなかったかもしれない。
しかしそれも魔力がかなりコントロールできるまでになったと聞いている。
そのうえ頭脳は神童、将来が本当に楽しみな御子だった。
<アドラス様に期待するものは実に多い、かくいうこの私も、そして私の部下の領軍の騎士や兵士もそうだ。何よりミュラー領の領民たち、どうかそのことをお忘れなきようお願いいたします、アドラス様>
屋敷の2階で窓ふきする侍女たちはその光景を眺めていた。
「相変わらず軍団長様のけいこは厳しそうね。ねえ、知ってる。アドラス様ご親友のギルバート様やアルバート様と剣の打ち合いをするとき手を抜いていることを、」
「知ってるわ、そうでなきゃ一合も合わせれないからよ」
「うちの坊ちゃまつくづく規格外よね、」
「まあね、王家の血と首狩りの血の両方引いてらっしゃるからね」
「将来が本当に楽しみな方ね、仕えている侍女としてはうれしい限りだけど」
「本当、そうね、」
そこえ厳しい侍女長が通りかかった。
「あなたたちおしゃべりばかりしないで手を動かしなさい、手を!!」
「「「はい、すみません侍女長様」」」
剣の稽古が終わったあと、部屋に戻ったアドラスは、軍団長につけられた打ち身の痕を、マリアが打ち身に効く薬を塗って手当てした。
「ありがと、マリア」
「それにしても8歳のアドラス様にここまで厳しくしなくても」
「いいんだよマリア、アーロンは僕ならこのくらいできるとおもって期待してるんだ。」
「それは分かりますが・・・・・・」
<未来への不安は少しも減るどころかますます強くなってる。
なら少しでも剣や魔法が強くなるのが正しいんだ。
でもこんなこと他の人間には言えない、僕の感、前世から外れないんだよね、典型的なのがロトシックスで1000万当てた時だ。半分の500万を国に税金に取られたけどね!!
残り500万は大学進学のためにしっかり貯金したけど、はぁー、ノミ市でも父上連れてまた行ってみるかなぁ、値打物のガラクタがあるかもしれない、それを修繕魔法で治して売却しがっぽりとかせごう、稼いだお金は冒険者ギルドに預金と、あ、そうだ、隠れ家作ること忘れてた!!ヘマしないように今度こそ作らなきゃ、1か月も部屋に軟禁なんて二度とごめんだ!!>
アドラスは8歳の小さなこぶしを握り締め、決意を新たにしたのだった。
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