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63サセックス領の暴動

「う~ん」


ヘンリーは前庭で思い切り伸びをした。

午前中の執務に一区切りつけられたので外に出て、深呼吸をしたのである。

今年も農作物がよく取れたことを神に感謝する感謝祭がやってくる。

この時は家々家族に喜んで食べてもらうために、妻や母親がご馳走やケーキを作るだけでなく、仮面をつけ仮装した人々がだしを出して町や村を練り歩くのだ。

通りにはたくさんの屋台が出て人々に飲食物を売るのである。

その中にはお好み焼きに似たものもあれば、昔日本から色々輸入した作物の中のリンゴで作られたりんご飴とか、これまた日本から輸入した金魚による金魚すくいとか、日本の文化が絶妙にこの世界に入り込み今も千年たっても残っているのだ。

そもそも感謝祭で仮装するようになったのは、日本のハロウィンが原型と言われている。

日本は千年前に国家ごと転移してしまったが、日本が残した風習や文化は今も残っているのである。

今年もミュラー領は作物はなかなかいい出来で、領主である自分も農民たちも喜ばしかったなと思いだした。そこえ玄関からアドラスが元気に現れた。手には釣り竿をかつぎバケツをもち、警護のシッロとハリーも釣り竿とバケツを担いで現れた。

実はミュラー家の裏手は騎士の訓練所と騎士寮に騎士の詰所があり、さらにその奥には小さな森があって、森の中には大きな天然の池があったのである。

池には魚がたくさんいて、取れた魚を料理長がおいしく料理し晩餐に出すのだ。


「アドラス釣か?」


「はい父上、成果を楽しみにしていてください。たくさんとってきます」


「ハハ、川に落ちないよう気をつけなさい」


「今晩の晩餐を楽しみにしてください、捕るぞー!」


「頑張りましょうアドラス様」

シッロの掛け声とともに元気に森に向かって歩いていくアドラスを見送ったヘンリーは、息子は順調にここまで育ってきたなと感慨深く思うのだった。

そこへ門番に通されて郵便配達夫がやってきた。

郵便配達夫がカバンからとりだしたいくつかの封筒を「ありがとう」と受け取ると

屋敷の中に戻った。

「あらあなた。郵便が来たんですか、ご一緒にサンルームでお茶にしません?」

「ああそれもいいな」

エリザベスはメイドにサンルームに二人分の茶の用意をすることを命じた。


サンルームの白いテーブルにメイドが紅茶とスコーンとジャムをセットした。

ヘンリーは紅茶を飲みながら送られてきた封筒を確かめる。

一つは義母からエリザベスに、

「あらお母様からなの」

残り3通はヘンリーに、送り主を確かめるとその中にサセックス領主の領主夫人の名があったのである。

伯爵家の寄子パーティで紹介された記憶があったが、彼女とはその時以来あった記憶がない。何を書いてきたのかと思いこの封筒は執務室で開けようと考えた。


執務室で封筒を開けて読んだヘンリーは想像以上に厄介だとため息をついた。

とはいえ見捨てるわけにもいかない。猟師も懐に鳥がはいればこれを殺さずのたとえがある。彼女と付き人のメイドと護衛騎士をミュラー家に迎えることを決めた。おそらく暴動がおこるのは感謝祭の日ではないかとヘンリーは考えた。

そしてこの暴動が他領に伝播しなければよいがと考え、騎士団長と密偵の頭に色々と指示を出したのだった。


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