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61サセックス領の暴動

ガラガラガラガラガラ・・・・・・・・・・


町の商店が集まる石畳の通りを、サセックス家の紋章が描かれた一台の馬車が通る。

その通り過ぎる馬車を、町の人々は憎しみと敵意に満ちたまなざしで見送る。


ヘンダースと供に馬車に乗り街へと買い物に行くマリア。

もえるような赤い髪に緑の瞳、若さと色気のある20代前半の美しい女である彼女は、バリアス王国の王都の娼館で娼婦をしていた。そこへ客として訪れたのがヘンダースだった。彼女の篭絡のテクニックを用いれば、田舎育ちの下級貴族のお坊ちゃんの令息を落とすのは分けなかった。

彼女は馬鹿なお坊ちゃんのヘンダースに高価なドレスや宝石を買わせ、今日もまた宝石商に宝石を買いに行くのだ。


<まさかこの私がサンザー帝国の女スパイとも知らずに、おバカなヘンダース!

彼に湯水のように金を使わせるために、領の税を30パーセントから50パーセントに上げさせ、領民が耐え切れず暴動を起こして、辺境に位置するサセックス領をめちゃくちゃにするつもりなどとは夢にも思ってないわね。できうるならばこの暴動が、周辺他領にまで及ばせたいわ、すでに仲間の明けガラスたちが動いてるはず、しっかり領民に火をつけて頂戴!>


馬車はなじみの宝石店の前に止まった。

ヘンダースは先に馬車から降りて、愛しの恋人マリアをエスコートする。

彼は周りに視線を向けて、この前来た時より通りの人が少なく、さらに通りの店が閉まってる店があちこちにあるのに気付いた。


「何だ、しけてるなこの町は、まあいい、店に入ろうマリア、注文していたネックレスができてるはずだ。」


「そうね、ヘンダース、私本当に楽しみよ」

そう言って彼女はヘンダースにしなだれかかる。

ヘンダースは鼻の下をみっともなく伸ばす、その光景に新領主たる威厳はどこにもなかった。ただの女好きである。


この宝飾店の主人であるトム・スコットは、玄関のチャイムの音に客の来訪に気付いた。

「これはご来店ようこそおいで下さいました、ご領主様、マリア様、ご希望のネックレスはできております」


「早速見せてくれ」


「はい」

店主は奥からネックレスの入ったケースを取り出し、それをショーケースの上に置き開けて見せた。


「いかがでございましょう?」

ケースの中に入ってたのは、金の鎖にハート形にカットされたルビーが一つ、みごとな大きさと輝く美しさを放つネックレスだった。

マリアはそのネックレスを見て「まあ」とため息を上げる。


「うん、買おう」


「お客様にご満足いただけて、私もうれしゅうございます」

ヘンダースは店主に言われた金額を、万年筆を背広の胸ポケットから取り出し、さらさらと金額を小切手に書いた。

それをしっかり受け取った店主は満面の笑みで会釈した。

その光景を、その時店にいたほかの客の男性が見ていた。


「まいどありがとうございました」

店主と店員に見送られて出ていく恋人たちを、男性は見送ると店主に「また来る」と言って店を出て行った。彼はそのままの足でこの町の旅館に入っていった。

この店は一階は食事と酒を飲む食堂で、昼間は食事が中心で開き、夜は酒と食事を飲む客であふれ二階は旅館となっているはずだったが、領主が一年前に税を上げてからめっきり客が減った。

それでも今日は中にはまだ数人の客がおり食事をしていた。

男はそのうちテーブルで食事する二人組のところに歩いていきドカリと座った。

この店の主人の娘が「ご注文はなにになさいますか」と聞きに来ると、「今日のおすすめの料理で」と注文した。


「はぁーやってらんねえ、お、その魚のフライなかなかおいしそうだな」


「今日のおすすめ料理だ、うまいぜ、で、なんでそうしけた声上げてんだ?ジョニー」


「領主さ!俺は冷やかしのつもりで宝石店に入ったんだが、そこに領主とその愛人が入ってきて、おったまげるほどのすごいハート型のルビーのネックレスを買っていったのさ、特注品らしくて俺は宝石には詳しくはないが、店内の商品の値段と比べてもありゃ500マルスいじょうはする商品だと見た、」


「ちっ、一辺に食事がまずくなった。その支払われた金が俺たちからむしり取った税金だと思うと腹ワタが煮えくり返るぜ!!」


「「「まったくだ」」」

他の客からも声が上がる。

すると一人で食事をとっていた商人風の男性客が立ち上がり


「そういってるだけじゃどうにもならないぜ、これからも領主はやりたい放題、俺たちから金をむしり取っていく」


「抗議のデモでもやれというのか?まあそれをやる奴らは見かけるが、すぐに町の官憲に解散されるじゃないか」


「アンナンじゃ駄目さ、」


「まさか俺たちに?」


「このままいったら暴動でも起こさなければ領主は考えを変えないぜ」


「暴動を起こせだと?そんなことすりゃ領の騎士団が出てくるぜ」


「村では領主に支払う税を払うために、種イモを食べて飢えをしのいで税を払っているんだぜ。それすらなくなり、税を払う金の無くなった者達は、自分の子供を人買いに売って金を得、税を払ってるんだ。 

こうなりゃ暴動が起きるのは時間の問題だぞ、暴動は必ず起きる、だが単発的に暴動を起こせば領の騎士団にあっという間に鎮圧されてしまう。

だから暴動を起こすなら、各村、町、領全体で一斉に放棄しなくてはだめだ!それなら騎士団も対処しきれないからな!」


「確かにそれならうまくいきそうだが、でも・・・・・・・・」


「いいか、このままいったら餓死者が今にたくさん出るぞ、それとも税を払えず領主に妻子共々人買いに売られて奴隷にされたいか?

このままいったらその未来しか俺たちにはなくなるぜ!!

俺たちは領主の奴隷じゃねえ!!飼い犬でもねえ!!

だが領主は俺たちのことを人とも思ってないんだ!

俺たちは人間だ!生きた人間なんだ!!」


男が言い終わると食堂がシーンと静まり返る。

誰もがすぐには言葉を発しない。

男の言葉が食堂にいる客たちの心に、領主に対して言いようのないきどおりと怒りの熱情が沸き起こる、それはもう止めようのないものだった。


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