56修繕魔法による人体への応用(改)
アドラスの熱は結局平熱に下がるまで3日かかった。
お抱え医師サミエルとアドラスの魔法教師クレメンツは、このことを重く受け止めた。
いくら初めて修繕魔法による人体への応用をしたからって、これはと考え込む。
家族を含めての会議の結果、うかつに人体を直したりしたらアドラスの命に危機が訪れかねないと考えたのだ。
「それって僕の命が危ないってこと?」
アドラスが尋ねるとサミエルもクレメンツもうなずいて見せた。
「ええー!?」
前子爵の祖父ヘンドリックと祖母マーガレットそして両親は、アドラスにうかつに人体を修繕させられないと判断した。下手をすればアドラスの命にかかわると判断したのだ。
「そもそも普通に鍋や窯皿や陶器の修繕ならば、アドラスは今まで一度も高熱を出したこともないし意識を失うことは一度もなかった。それがここに来て突然意識を失い高熱を発し3日も寝込んだのだ、明らかに今回のことはアドラスに無理がかかりすぎたのだ。」
「ええ、おそらくそうでしょうね、アドラス様、アドラス様は医療ギルドで見習いをし、今は治療にも参加してると聞きますが、これまでに今回のようなこと、高熱を発し意識を失うということはありましたか?」
医師サミエルの質問にアドラスは首を横に振った。
「つまり通常のヒールの範囲なら大丈夫ということだな、ふーむ」祖父は重々しく考え込む。
「ねえあなたヘンリー、これからはアドラスに修繕魔法の人体への応用をさせない方がいいんじゃないかしら、でないとこの子がまた倒れてしまうわ。」
「そうだな、」
「しかし人体の再生は200年前聖女がなして以来の奇跡の御業です」
医師サミエルの言葉に祖父は
「だからこそダメなのだ。こんなことが知れ渡ってみろ、この大陸中の手足のない患者がミュラー領に押し寄せてくるぞ、それをたった一人のまだ子供のアドラスに捌けというのか!?、無理に決まっている!!、そんな事態に陥ればアドラスは本当に死んでしまうぞ!あるいは良くて早世するだろう!!騎士宿舎の騎士や医師従士達には口止めを厳重にしたからこのことがもれることはないだろうが、とにかく二度とアドラスにはさせん。もっとも公平にかけるから右腕を切られた残りの騎士マーカスは癒させるしかないが、うかつに手足の再生などをしたら大変な事態に陥るぞ。わしはアドラスの祖父としてミュラー領の前領主としてこれ以上アドラスにはさせられん。教会に万一知られてみろ、アドラスは聖者に祭り上げられるぞ、アドラスお前は一生教会の奥に閉じ込められ、聖者として祭り上げられ、過剰な人体修繕を毎日させられたいか?」
「絶対嫌ですおじい様、教会の権威主義的な空気は僕にはい合いません」
「権威主義とは王家もそうだが、王家にもむろん知られてはならん」
「はい」
<だけど、目や耳を修繕するぐらいならいいんじゃないかな?、近眼とか遠視とか生まれつきの弱視とか・・・・・・・・・・?>
「どうしたアドラス、また何を考えこんでいる?」
「おじい様、手足を直すのは僕自身の負担が大きいからダメとして、近眼に遠視、老眼とか弱視、それに難聴とか癒すのはだめですか?」
「うーん、なるほど、手足の再生よりはかかる負担は確かに少ないだろうし、世間に目立たないだろうな、どう思うヘンリー?」
「確かにそれなら世間に対して目立たないし、アドラス自体の負担もずっと軽いと思います」
ヘンドリックは考え込みそして「いいだろう」といった。




