51第1次バリアス王国VSサンザー帝国の戦争
「兵糧は備蓄の半分以上を出して兵糧米としよう。それと騎士はこの領の騎士の3分の2をサンザ―帝国との戦に連れて行く、残り3分の1、は領に残りこのミュラー領を私の家族と領民を守れ、だれとだれを連れていくかだが、これは領地軍団長に選定させる必要がありだな、そして兵だが現在250名いる兵のうち170名連れて行く、残り80名はこの領を命に代えても守れ!武器庫を解放し鎧や武器のそろってないものに貸与する、そして備蓄の医薬品と軍医及び衛生兵のほかに医療ギルドから医療士を、・・・・・・・・・・・・・」
アドラスは父がこれほど厳しく緊張感に満ちて、騎士や屋敷の者に矢継ぎ早に指示するところは初めて見た。周りの者たちもいつもとは全然違って見えた。
アドラスは嫌が応なく緊張し、これから間違いなく戦争開始前であることを肌でびりびり感じて痛感した。
その時だ。
「皆さまー、腹が減っては戦もできません!今からバケットと温かいスープにデザートに梨をお分けしますのでどうぞお召し上がり下さい。」
侍女長がそういって、コック長と料理人、侍女に料理を乗せた台車を何台も引かせて現れた。
バケットには厚いハムと葉物が挟まれそれにソースがかけられていた。スープはじゃがいもとニンジンや玉ねぎがはいった牛乳入りのホワイトスープらしく、アドラスの朝一番の何も食べてないお腹がゴロゴロと思わずなりだした。
「わー、いいところに来てくれた、まだ朝食をとってなかったんだ!」
父と騎士達やメイドや侍従たちの声がわッと上がる。
ふとヘンリーはドアのところに小さなおのが息子にきづいた。
見るとパジャマ姿にはだしである、これはマリアに起こされて、慌てふためいてベッドを飛び降り、かけはしってきたに違いないと推察した。
普段なら無作法をいさめ、貴族らしくないと叱る所だが、今は非常時、この子は私を心配して駆けつけてきたに違いないのだ。その心がうれしかった。
「アドラス、おいでバゲットもスープもおいしいぞ」
「父上」
「ところでエリザベスは?」
「母上?」アドラスが首をめぐらしたとき、
「ヘンリー、ご出陣とは真ですかぁー」
母が脱兎のごとく、後ろに起こしに行った自分付きの侍女を連れ、廊下の右手からネグリジェにナイトガウンを着こんでホールの入り口ドアに掛け込んできた。
「あなた、ヘンリー、ハアハアハア~」
「おちつけエリザベス、深呼吸しろ!」
エリザベスに続いて入ってきたきた侍女は、肩でゼエゼエ息を切らしながら
「奥様~、なかなか起こしても起きられないのに、どうして走るのはそんなに速いんですか~~、とても貴族夫人に思えません~」
そういえば母は起こされてもなかなか起きない癖があったんだと、この時夫と息子は思い出した。
立食形式で領主夫妻と嫡男のアドラスも、騎士や使用人たちとともにめいめい朝食を食べた。
この時やがて来るサンザ―帝国との戦闘の苛烈さを、誰もが想像してなくて、戦争前とはいえ穏やかな一時の幸せを、誰もが味わっていたのである。
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