3.春雷 前編
王都パルミスは人口60万人の規模のバーリアス王国一の大都市であった。
高さ3メートルの分厚い塀で囲まれたこの都市は、守備の堅牢さを誇ていた。
一番外側に庶民が住み、その中に貧民街もあった。貧民街には一般市民も貴族も近寄らない物騒なところであり、迷い込めば金はおろか身ぐるみ剥がれ下手すれば殺されその新鮮な人間の肉は、何とかの肉として店で売られ客が食べるというありさま。それでも生きていくため貧民街の人々は買い求めるのだ。
ゆえに一般市民は貧民街に絶対に近づくなと言われていた。
そして市民街を行き過ぎると門を隔てて貴族街があり贅を尽くした貴族たちの邸宅が建てられ、王宮をぐるりと囲んでいる。
白い壮麗な美しさと巨大さを誇る白亜の王宮は別名白鷺城と呼ばれ、建国200年を誇るこの王宮でどんな権謀術策が行われているかは国民の知るところではない。
ミュラー子爵家のタウンハウスは貴族街と市民街を分ける門の比較的近くにある。
太陽は今正午を迎えミュラー子爵家のタウンハウスを警備する騎士の一人オーソンは、同僚たちを連れ立って外の食堂にたべにでかけた。
市民街いにある赤い大きな三角屋根のレストランはレンガ造りで割と庶民的な料理も出す。ミュラー子爵家の騎士たちには行きつけの店で店主とも顔パスであった。
「へーい、らっしゃい」
親父の威勢のいいかけ声が店内に響く。
店のウエートレスは笑顔で騎士たちが腰かけたテーブルにやてっきて
「ご注文は何になさいますか?」
「きょうのおすすめはなんだ?」
「豚肉の塩だれ炒めにマール豆のスープにサラダですね。」
「じゃ、それをたのむ」
「俺たちも同じのを頼む」
「店長、オーダー入りました、豚肉の塩だれ炒めとマール豆のスープにサラダ4人前でーす!」
「あいよー!」
店には活気が満ちていた。
ほかの客も昼食を食べにどんどん空いたテーブルに座り始めた。
ふと、隣のテーブルの二人の商人風の客の声が聞こえた。
「最近オケナス地方で食料品の値段が上がりだしたそうだ。」
「ああそれはおれもきいた。食料品ばかりか鉄製品や医薬品も値が高騰しだしたそうだ。」
「まさか戦争の用意をしてるのか。しかしオケナス地方の領主は確か穏健派のフェイバーグ子爵だったろ。まさか穏健派の子爵が内乱を起こそうってのか、なんかおかしいな。」
そこえメイドが料理をトレーに乗せて隣客のところに運んできた。
見ると隣客が注文したのは鶏肉の香草焼きだった。
自分のところまでぷーんと香るそのいい匂いに、鶏肉の香草焼きにすべきだったかと少し後悔したオーソン、だが隣客の話はわすれてなかった。
<オケアス地方の領主は確かに穏健派のフェイバーグ子爵だ。だが確か子爵領の隣はマケーロス公爵領だったはず。これはもしかしたらもしかするぞ。
近くマケーロス公爵が兵をあげるかもしれないな、
ご領主様にお知らせしたほうがいいかもしれん。
うん、お知らせしよう>