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第3話 いざ外へ

 私と兄のステータスを効果含めて書き起こしてみると、なんとなくステータスとはどういうものなのかが見えてくる。


 称号は特定の事柄に対して影響を与えるもの。

 種族とは人種のことで、私と兄は魔人と表示される。


 スキルとは覚えていると行使できる力であったり能力のこと。


 正直、細かな数字が羅列されてたりしなくてほっとした。

 数値管理とか倍率効果とか言われてもガチガチなゲーム的要素とか私はそういうのは苦手だ。


 またスキルの項目をタップすると、パッシブスキルというものが存在していた。


 私のパッシブは威厳、滞空、肉体維持。

 そこからさらに能力アップとダウンの項目が存在する。


 ひとまず危険が少なそうな滞空を使ってみようと意識してみたところ、ふわっと体が浮いて空中に留まることができた。

 家族全員そろって興奮で大声をあげて興奮しまったのも仕方がないと思う。


 そして両親だが、こちらは2人揃ってステータスが表示されなかった。


「にしても……どうすんよ。ニュースでは外出るなって言ってるけど」

「えー、でもせめて家の周辺がどうなってるのか気にならない?」


 父が断固として反対という顔をしているが、口にしないあたり外の様子も気になってはいるのだろう。

 ニュースで都心の様子が映ったりしているが、我が家の回りは閑静な住宅街だ。

 都心部とは事情が違う可能性もあるが、単純に周辺の様子が気になるのもある。


「とりあえずさ、真奈美まなみの様子見に行っても? さっきメッセしたんだけど反応がない」

「あら、そうよ! 今日は午後から遊びに来る予定だったのよね? 小坂さんところ、土曜は確か旦那さんが仕事だから、家に居るのは奥さんと真奈美ちゃんの2人のはずだわ」

「ああ、お隣さんは旦那さんが今日はいないのか。心細いかもしれないな」


 父がものすごい困ったような顔をしてこちらを見てくる。


「ひとまず隼也……と圭は小坂さんとこ様子を見に行ってもらえるか? くれぐれもそれ以上別の場所に行ったりするんじゃないぞ」


 やはり本当は家から出したくはないのだろう。

 しかしステータスもでない両親を家の外に出すほうが今は論外だ。


「ま、隣までだから心配しないでいいよ。じゃ、行ってきます。……兄貴、靴貸して」

「はぁ?身長が伸びてるせいで足のサイズが変わってんのかよ。しょうがねぇな。あぁ、高校のとこに使ってたローファーならいいぞ」

「もうボロいし使わないなら捨てろって言われてたやつじゃんそれ」

「つべこべ言わずにこれ履けし」


 貸してもらう身としてはボロくても履くしかないのが癪だ。

 この体が戻らないようなら早々に自分のための服や靴は揃えようと心に決める。


「ん-、なんか玄関から出るのちょい緊張したが、超普通だな」


 兄に続きボロいローファーを履いて外へと繰り出すも、兄が言う通りだ。

 視界で見る限りではいつもの風景が広がっている。

 だが……。


「いや、これはまずいと思う」

「……どこがだよ」


 これは第六感というやつだろうか。

 それとも魔力による感知というやつなのだろうか。


 四方から得体のしれない力、嫌悪感、不快感を感じるのだ。


「なんかドロドロしたぞわぞわするものをいくつか感じる。近いのは公園。次に近くてやばそうなのは駅のほ……あ~……」

「なん……うえええ!?」


 兄のなんとも情けない叫び声をBGMに駅の方角を見つめる。

 いつも見ている家屋の背後から、巨大な木がすくすくと伸びていく光景が目に入ってくるのだ。


 幹が伸び、葉が広がっていく。

 あの木は広葉樹なのかなという場違いな感想が頭に浮かんだ。


「あれ何だよ!」

「いや、やばそうっていう感想があるだけで私だって何もわかんないから」


 いや、私は人知超越というスキルを持っていて、それを使えば何かとわかるのだろう。

 スキルの説明文はこうだ。


 ======================

 身に宿す膨大な魔力によって埒外の存在を感知、干渉することが可能。それは天恵にして深淵である。

 ======================


 この説明文を見て兄がこれを使うのは100%まずいと言うので、極力このスキルは使わないことにしたのだ。


「あの木はやばそうだけど、直接ちょっかいださなきゃ問題もなさそうかな。いったん無視でいいんじゃね?」

「そう、なのか。まぁ、今は真奈美ちゃんか……。まじで平気なのかこれ……」


 すでにちょっと疲れた顔をしてる兄を見てそっとため息をつく。

 まだ目的の、もの字も達成してないんだけどな。


「そだね。まあ何かあったら私が守って進ぜようではないか。兄貴より私のほうがぜぇったいスペックが上だろこれ」

「絶対のとこ強調すんな! てかお前目が覚めた後からもなんでそんなに平然としてんの」


 この言い方。

 どうやら兄は私が目覚める前に自分の体の変化に大騒ぎしたと見た。


「ヘタレ兄貴と違って私は大物なの。なんといっても魔王らしいし」

「浅慮、鈍感女、いや、今は鈍感野郎なだけだろ。俺は思慮深くて慎重派なわけ」

「へいへい」


 自称慎重派な兄は頻繁に回りを見渡す。


 土曜の日中ということを考えると不気味なほど静かだ。

 大型連休などではない土日なら普段はご婦人方が井戸端会議をしていたり、子供が遊びまわっているものだが。


 これはただ家に引きこもっているのか、あるいは何かが起きているのか。

 スマホに送ったメッセージへ返信のない隣家の小坂真奈美は、はたしてどちらの状況か。


 周囲の警戒は兄に任せるとして、私は玄関についているチャイムを鳴らす。


 ガタガタッ!!


「うお! なんだ今の。家の中からか?」

「……っぽい。何かものが落ちた感じの音だったけど、なんだろう」


 おそらく家の、一階から聞こえてきたと思う。

 何かしら重めの物が落ちた音に聞こえたが、それ以降は何も聞こえてこない。


 そっと玄関の扉に手をかけて引いてみれば扉が動く手応えを感じる。

 どうやら鍵は開いているようだ。


「兄貴、なんか不穏な感じだし、武器ぐらい構えてみる?」

「ぶ……き? 家から包丁でももってくりゃいいか?」

「面白くない冗談だわ。多分、兄貴もできると思うけど」


 私は自分の目線の高さに手を上げ、意識を集中させる。

 手元がまばゆい光に包まれた後、私の手には一本の刀が出現した。


 家の中で振り回せそうなサイズ感で、刃の部分がだいたい30cm~40cmほどだろうか。


「は、ちょ、お前それどうやんの」


 驚きのあまり兄は目を白黒させるが、白目が黒いためこの表現でいいのか怪しいとも思う。


「イメージするだけ。あ、理屈なんて私はわからないからね。多分魔力ってやつを使ってるんだとは思うけど」


 滞空のスキルを使ったときに、体の中にあるエネルギーを感じた。

 漠然とだがそれが魔力なのだろうとわかり、なんとなく感覚が掴めたのだ。


 作りたいもののイメージを固め、魔力を使う。

 すると武器が一丁できあがりというわけだ。


「いやいやいや。わからんわ」


 兄は私以上に人外な見た目をしてるくせに鈍いらしい。


「仕方ないな、とりあえず私が作ってあげよう。何がいい?」

「近づかなくていいやつ。ただお前の刀だし、斬る以外の武器のほうが対応の幅は広がるんじゃないか?」


 この微妙に注文ありつつお任せで頼むの、わりと無責任だと思うのは私だけだろうか。


「じゃあ、これでどうよ」


 刀を持つ手とは逆に魔力を流し作り上げたのはメイスと呼ばれる武器だ。

 柄の長さは1mほどで先端に鉄球がついており、さらに鉄球の上部には刺突できる棘付きだ。


「近づきたくないっていうから長いやつにした。一応両手用だけど」

「ああ。なんか、片手でも振り回せそうなんだがサイズ感的には両手用だよな……」


 兄はメイスを受け取り軽く持ち上げたりしているが、軽々と扱ってるのが見てわかる。

 いままでの常識からしたら鉄の塊を片手で自在に振り回すとかありえないのだが、どうやら筋力が強くなっているようだ。


 私自身、刀もメイスも重さが一切気にならなかった。

 むしろこの体では普通の人用では軽すぎて扱いにくい可能性まであるかもしれない。


「さて、とりあえずこれでよし。入ってみるか」

「お、おお、おうよ……」


 さて、兄がビビり散らかして退散する前に突入してみるとしますか。

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