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第22話 あれから1週間

「けーちゃん準備オッケー? もう行けるー?」

「悪いお待たせ」

「いやぁアリスさんが準備早すぎて暇してただけだから。圭くんは気にしなくて大丈夫だよ」

「予定の時間丁度だぜ」


 さて、今日はタケくん、ソウくん、アリスと私の4人で行動だ。


 あれから――世界大侵攻から今日で丁度1週間が経った。

 世の中はまだまだ混乱の最中にいる。


 この拠点も人数が膨れ上がり、今では16家族51人が暮らす状況だ。

 ただ、ここに集まった人たちは中心メンバーとなった私たちの知り合いばかり。

 お互いが元々知り合い同士の場合もあったし、尊重しあえてる感じで和やかな雰囲気で過ごせている。


 家族ごとまるっと越してきた人もいれば、決裂して一部の家族だけで来た人もいる。

 如月家は両親とも実家と連絡がつき、母方の祖父母はここに来た。

 父方は北海道なのだが、向こうは向こうでソウくんの知り合い2家族が合流して3家族で集団生活を送っているようだ。


 ちなみに全員兄が作ってくれたコミュニティに参加済みなので、お互いの状況などはコミュニティを通して把握することが多い。


 ダンジョンには住居区として地下5階を追加した。

 主に家族部屋だが、相部屋を希望した人たちも居て、その部屋もこの階だ。


 食事は相変わらずダイナー風のリビングで提供される作り置きバイキング方式だ。

 相馬家の祖父母を中心に、戦えない人たちが日替わりで料理をしてくれるようになっている。


 人が多く集まったところで、生活場所はダンジョンなため困ることはない。

 だが金銭面や仕事先の案件確保などがうまくできるか心配もあったのだが……。


 結果的には、自警団の活動というのが、需要があったらしく仕事も貰えている。

 色々な力を持つ人が来てくれているおかげで出来ることも増え、今のところ日常生活と安全の両立ができている状態であった。


「さて、それじゃあ行こうか」


 そして今日は土曜日ということで、仕事に出る人も少ない。

 そのため私たちはある場所に向かうことになったのだ。


「今日は久々にがっつり戦えそうで楽しみだぜ」

「戦闘狂じゃん。勝手に一人ですっ飛んでかないでよタケくん」

「そうだよ。今日はあくまで自警団の仕事として向かうんだからね武くん」

「勝手に怪我しても回復してあげないんだからね、たけっち」

「おい、てめぇら人のことなんだと思ってんだ」


 そう思ってるってことだぞタケくん。

 まあアリスはめちゃくちゃ笑いながらで、ただ悪ノリしてるだけのようだが。


「今日の目的は駅前ダンジョンの調査ね。これは国からの正式な依頼」


 依頼がしたいって国直営の団体から連絡受けたとき私は心臓が止まるかと思ったよ。

 つい1週間前までただの高校生だったというのに。


「アリスたちめっちゃ有名になったよね~! モデル友達にさ、キサラギ自警団に居るって言ったらめっちゃ羨ましがられたもん!」

「いやぁ……」


 それ良いことじゃないからな。

 アリスは目立つのが好きだからすごく嬉しそうだ。

 そういえばアカウントに所属してると書いていいか聞かれたな。

 この調子じゃあ速攻で記載したんだろうなぁ。


「圭くんとしては不本意かもしれないけど、ある意味良かったかもしれないよ」

「そうかな?」

「今って魔王コミュニティの隠れ蓑にキサラギ自警団って感じになってるでしょ」


 なるほど隠れ蓑。


「集団で集まってるだけで目立つしな。すでに近所じゃ有名になっちまってるだろ。外へ出たときに人とかち合うとすげぇ話しかけられっぞ」

「それは、うん」


 最初ダンジョン作ったときは庭に温室作ったから目立っちゃうかもなぁぐらいの認識だったんだけどね……。


 実は今、我が家の駐車場部分が地下駐車場への入り口になっている。

 人が増えた分、車も増えたんだ……。

 地下の駐車場はエントランス広場に扉で繋がる形にしてある。

 後から増築・改造が自由なダンジョンってほんとに便利。


 表から見てもまるわかりな地下へのスロープ出現に加え、車と人の出入りが極端な増加。

 結果、ご近所さんに目立ちまくったのである。


「魔王コミュの集まりですって答えられないもんな。自警団の集まりですって、すごく真っ当」


 もう魔王って響きが本当に良くない。


「そもそも僕たちの団体は情報が他より正確、行動は慎重派で批判も受けにくい。散らばっていた情報を許可を得てまとめたりもしてるから、目立たないほうが難しいよ」

「その節は本当にソウくんのクラメンに助けられてるよ」

「元々ゲーム情報をまとめるのはよくやってたことだしね。外国語が堪能な人たちも居るおかげで日本以外の情報までまとめてくれてるし」


 外国といえばアリスのご両親も無事なうえに、向こうで知り合いを集めてコミュニティを作ったらしい。

 私たちのコミュを母体にして分体にしたいと言われて承諾したんだよな。


 いわゆる外国支部のようになってるそうだ。

 詳細はあまり教えてもらってないのだが、無信心者の日本人なら聞かないほうが良いかもと言われて聞くのをやめた。

 アリスのご両親のことは直接知ってるのもあって、悪いようにはされないだろうと思っている。


「まあ百歩譲って目立つのはしょうがないとしても、依頼が手に負えないぐらい増えたのはちょっとね」

「あくまで自警団なんだから気にせず断わりゃいいだろ」

「そうだね。でも僕たちが必要な範囲、できる範囲でだよ。命の危機に晒されてるのは皆一緒なわけだし」

「ねぇねぇ。それよりさ~アリス、ダンジョンすっごい楽しみなんだけど」


 今しがた命かけてるって話をしたばかりだよ!

 まるで遠足にいくかのようなノリだ。


「そりゃ俺もだぜ」


 そしてタケくんはダンジョンというより戦闘がだろ!


「2人とも、今回は中衛を担ってる兄貴と真奈美が居ないんだから、いつも以上に気をつけてよ」

「いつも以上に前へ出ないようにすればオッケーなんだよね!」


 今回、兄と真奈美は昨日1日がかりで警備の仕事をしていたので今日は休みである。

 そのため隊列としては前衛と後衛のみ。


 がっつり前へ出るのは戦闘スタイルが格闘のタケくん。

 私は前衛に立ちつつ後衛の防衛を重視して魔法を中心に。

 アリスは弓での遠距離攻撃と回復要員。

 ソウくんは魔法オンリーだが、どちらかというと探知とか指揮の司令塔を担ってもらう予定だ。


「この4人だけでの戦闘は初めてだし、ダンジョン自体も未知数だから慎重にね」

「ダンジョンかぁ。2人とは違う意味でだけど僕も楽しみだよ。何か良い物が手に入るといいよね」

「絶対持って帰るべしって言われたのは魔導具ってやつだったか?」

「アイテム袋が大当たりって言われてるんだよね~」

「ジジイは万能包丁がいいとか抜かしてたぞ」


 魔導具と呼ばれる存在は他の人たちによって確認されてるけど、手元にはまだ1つもない。

 というのも魔導具はダンジョンからしか手に入らないらしく、私たちはダンジョンに入っていないからだ。


 いかんせん、ダンジョンに挑戦して戦果を上げると同時に死傷者が出ることが多いようで、気軽に向かって良い場所ではないという認識なのだ。


「何度か公園の噴水にも行って戦闘したりしたけど、食材しか出なかったもんね~」


 食材といえば人魚の肉。

 鑑定で見た時に記載されていた通り、癪なことに味は美味しかった。


 公園のあの噴水、どうやらボスモンスターは1~2日おきに生まれるらしい。

 ボスモンスターが生まれると見張りモンスターが出入り口に立つのでわかりやすい。


 自警団の戦闘練習に良いということで、確認ついでに何度か通って戦ったりしているのだ。

 今のところ種族は違うが人魚もどきぐらいの強さのやつが出てきている。


「ダンジョンの一般的な情報としては、モンスターが湧く、魔導具がドロップする、宝箱とか罠がある、だよね」

「そうだね。あと形態は不明だけどコアが存在するのは確かだろうね」


 コアに関して私たちは外部に情報を出していないし、他から情報が出ている気配はない。

 というか私たちの拠点がダンジョンということ自体、隠してる。


 絶対その恩恵を自分たちにも恵めっていう連中が出てくる、しかもタダでだ。

 というか実際すでに出てきてた。

 亜人変化者や覚醒者はずるい、力に恵まれなかった自分たちの面倒を見る義務がある、とかなんとかいって。


 どこから聞きつけてきたのか、私たちのところに来た連中が居たのだ。

 まあタケくんを中心としたヤンキーメンバーが追い払ってくれたのだがとても迷惑だった。


 話を戻すが、ダンジョンに関してはコアを壊せば機能が停止する。

 まずはそれを攻略の目処にするのはありだ。

 しかしコアを壊した場合、ダンジョンの後処理が問題になってくる。


 コアを失ったダンジョンは再びコアを設定すれば動き出してしまう可能性がある。

 元のコアと同等かそれ以上の魔石である必要があるし、巨大なダンジョンのコアを再設定するときの必要条件なども不明だ。

 色々な状況と可能性に応じて実際どうするべきか考えなければならないだろう。


「ダンジョンの主と意思疎通が図れるようなら抱き込みたいとこだけど」

「だがよ、ダンジョン自体は侵略行為なんだろ?」

「そうだね。宝箱とかは人間を誘き寄せるための餌なんだと思う」

「ダンジョンの糧にするためだっけ~? こわいね~」

「なんだろう、全然怖がってなさそう。それにしても、ちょっと不可解なんだよね。餌にするにしても、物が良すぎるんじゃないかって話」


 物が良すぎるという話はテレビでも言われてたな。

 素材はまだしも、武器とか防具、魔導具が侵略者側から与えられるのは不自然だって話。


「結局考えてもわからないことはあまり気にしてもしょうがないね。そんな話してるうちにもう駅前だ」


 眼の前には最初に見た日と変わらない大木のダンジョンがそびえ立っている。

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