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第20話 本格的な初戦闘

「これはまずい! 全員攻撃!」


 何がまずいって、現れた人魚もどきの後ろから続々と他のモンスターが現れていることである。

 この人魚もどきも簡単には倒されてくれなさそうな気配を感じる。

 探知をかけるまでこちらは存在に気づけなかったぐらいだしな。


 しかし噴水の中から出てくるモンスターは、なぜかゴブリンとか化け猫とか、水と関係なさそうなやつが出てきている。

 後続のやつらは見るからに異次元から出てきてるっぽい。

 どうやらここは強者の縄張り兼、湧きスポットだったようだ。


「"雷獣よ力を賜らん。雷撃よ迸れ"」

『ォォオオ!』


 私が放った雷の魔法は周囲の雑魚をある程度始末できた。

 しかし肝心の人魚もどきには、やつの体表を雷が滑り弾かれてしまった。


「ちぃまじか弾いたぞ! "いでよ氷槍! 人魚に全弾ぶち込め!"」

『ギィイ!』


 それを見た兄が、すかさず別の属性魔法を用意する。

 人魚もどきの上空に現れた複数の氷槍があらゆる角度から降り注ぐも、今度は体をローリングされて避けられてしまう。


 避けられるということは氷槍の形をした攻撃は効くということだろうが、魔法の使い方を意識しなければ再び避けられてしまいそうだ。


『キエエエエエエエエエエエエ!!!』

「ぐっ!!」

「きゃあ!」


 これはやばい。

 人魚もどきから放たれた高音の叫び声は攻撃の一種のようだ。

 思わず握っていた刀を取り落とし両手で耳を塞ぐも、音波は直接頭に響いてくる。

 あまりの音に体が硬直し、思うように動くことができなくなった。


 人魚もどきは息継ぎの必要がないのか、音波攻撃が止む気配もなければ止める気配もない。

 後続から湧き続けているモンスターは音波の影響はなく、こちらへ着々と近づいてくる。


「つづけさせない!!」


 誰も動けず危機的状況かと思えば、兄の頭から真奈美が飛び出したのが視界に入る。

 真奈美は跳躍しながら人魚もどきへと肉薄し焦熱液を放つ。


『ギョエ』


 音波攻撃に集中していただけなのか、それともあの攻撃中は自身も動くことができないのか。

 人魚もどきは焦熱液を避けられず、顔の皮膚が溶ける痛みに悶え苦しんでいる。


「でかした! 畳み掛けるっ!」


 私は即座に刀を拾い上げ、真奈美より前へと躍り出る。


「真奈美ちゃんこっちだ! "巨大なる氷槍よ我が敵の胸を貫き風穴を開けろ!!"」

「ケイ! ザコはまかせて!」


 後方で兄が真奈美を回収しつつ人魚もどきに氷魔法を放つ。

 人魚もどきはこちらの攻撃に注意を払えずにおり、氷槍を避ける動きが見られない。

 一本の巨大な氷槍は人魚もどきの前方上空から胸に向け放たれ、人魚もどきの体を貫通した。


『ギィイイ!』

「ちぃ、しぶとい!」


 胸を貫かれているというのに、もがきながらも倒れない人魚もどき。

 思わず舌打ちをしてしまう。


 私は前へと出る勢いを殺さず、魔力を体に漲らせていく。

 すれば後方からアリスの応援が聞こえる。


「けーちゃんやっちゃってー!」


 身体強化と応援の効果で私の身体能力は飛躍的に上昇したはずだ。

 思いっきり地面を蹴れば、私の体は飛ぶようにして人魚もどきとの距離を詰める。


「苦しいんだろ解放してやるよ!!」


 人魚もどきも迎撃するための行動に出たが、勢いがついている私は止まれない。

 腹をくくり、攻撃に集中。

 首に狙いをつけ、刀を横に思いっきり振り抜いた。


 すれ違いざまに肩口へ痛みを感じたが、刀を握る手には確かな感触が残る。

 振り向けば人魚もどきが消滅していくのが分かる。

 他よりも大きめの魔石と、何やら革袋を残していったようだ。


「やったねケイ!」

「お。もしかして湧きも止まったか?」

「わーい。みんなお疲れさま~!」


 噴水の周辺を見渡すも、敵の影はなし。

 すでに湧いていたモンスターは皆が倒してくれたようだ。


 先程痛みを感じた肩を見ても汚れ1つ付いていない。


 手を軽く当ててみても、もう痛みは感じない。

 軽い打ち身程度の怪我にしかならなかったようだ。


「圭、もしかして怪我か?」

「えっ!? んーでもけーちゃんの体力別に減ってないな」

「あぁ、ちょっと最後に人魚もどきから攻撃食らったんだけど、もうなんともない」

「フクもやぶけてないみたい。ユウシュウなソウビだ」


 この作った服、下手したら私の肉体より防御性能高い可能性まであるな。

 しかし兄は私の様子を見て真っ先に怪我の心配をしてくれる。

 こういうところは本当に兄として私のことを気にしてくれてるなとしみじみと思ってしまった。


「とりあえず戦いに勝てて良かった」


 戦うことにスリルとかそういうのは一切求めてないので、簡単に済めば済むほど良い。

 反省点などはしっかり話しあう必要もあるだろうが、まずは全員無事に戦闘が終わったことに安堵する。


「これでこの公園は安全なのかね。まだ向こう側に敵が居るには居るけどよ」

「モンスターは噴水からワーって出てきたよね」


 人魚もどきが生きていたときは一定のペースでモンスターが湧いてきていたが、今はパタリと湧きが止まった状態だ。


「とりあえずこの噴水が見える位置にあるベンチで休憩しよう。そのあともう一度魔力探知かけてみてって感じかな」

「タイリョクつかったし……っていうとイマはややこしいね? このばあい、ヒロウがたまってるから、かな?」

「体力っつーとアリスちゃんが見れる生命力イコール体力なイメージになっちまうしな」

「そうだよね~。それにしても魔力って本当にあんま回復しないよね~」

「そうなの?」


 真奈美が疑問そうにしている。

 真奈美とソウくんは魔力が自然回復しないから感覚が分からないのだろう。


 おそらく何かしらの方法で魔力生成ができる種族は自然回復しないようだ。

 真奈美は食事から、ソウくんは血の経口摂取から魔力を生成する。


 ソウくんに至っては体力すら自然回復しないらしく、ちょっとした傷も誰かに直してもらうか魔力を使って治療するしかないらしい。

 今はさほど魔力使ってないけど、そのうちソウくんのための献血が必要になりそうだ。


 そういえばモンスターって死なない限りは出血もするんだよね。

 ……敵の血でも良いのかは後で聞いてみよう。

 

「魔力は多分、睡眠が一番の回復方法っぽいかな」


 感覚的なものでしかないが、おそらくはそうだ。


「ダンジョン作って魔力消費した後、ちょっとだけ眠く感じたんだよね。今の戦闘ぐらいじゃ全然魔力消費してないせいか今は眠気まったくない感じだけど」

「……ケイのマリョクリョウどうなってるの」

「なにせ魔王なもので」


 そのうち他の皆も王様にならんかな。

 例えばヴァンパイアロードとか、スライムキングとか。

 いかん、スライムキングとかでっかくなっちゃいそうだし口にしたら絶対、真奈美に怒られるやつだ。


「てか、向こうの出入り口にいる敵、こっちに来たりしないんだね~」

「そうだなぁ。なんかまじでゲームみたいだよなぁ。決まった場所から動きませんってさ」

「あのモンスターたち、ゴハンとかどうしてるんだろ。そもそもセイブツとしてかんがえていいのかな?」


 あれが生物だとすると、食事や排泄、さらには繁殖までどうなってるんだって話になる。

 そもそもさっきの人魚もどき、下半身骨だったしな。


「そこは難しいとこだよね。魔法とかスキルもだけど。異世界から地球へ移すときに改変があったのかどうかすらわからないけど、考えてもしょうがないような?」

「でもよ、モンスターとかって侵略するために人間殺そうと思ってるんだろ? だとしたら根絶やしにする方法は考えてかなきゃいけないよな」

「え~難しい話はそういう専門の人たちがやればいいんじゃない~?」


 専門の人かぁ。


「そうなると魔王という職業である私が専門職な気がするな?」

「いや、でも魔王って魔人の王だろ? 別にモンスターの王とは違うしよ」

「あれ? そういえばさっきのやつケイのカンテイってどうだったの?」

「あ゛!」

「忘れてたか……まぁさっきのはいきいなり現れたし、無理だったろ」


 いやー……本気で忘れてた。

 なんで今の流れで鑑定の話になったのかは謎。


「まじでゴメン。ちょっとあいつが残したアイテムとかは今鑑定してみるよ。あの噴水も」

「そっか~けーちゃんの鑑定だと私の解析とは内容違うんだもんね~」


 そうなのだ。

 アリスの解析は体力が解る、触れた物の状態が解る、というもの。

 だが、私の鑑定は物体の情報を得るものなのでまったく内容が変わるのである。


 さて、人魚もどきが残したのは魔石と革袋か。

 袋の中身もまだ見てないし、早速鑑定していくとしますか。

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