表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/34

第17話 仕事の話

 昼食は母と、匠さん、楓さんの3人が中心になって作ってくれた。

 これがまた大変美味しゅうございまして。


 定番のタマゴサンドから、サラダラップのようになっているものまで、中身も野菜だったり肉だったり。

 さらにはオカズまで色々つけられてて文句なしのなんだか贅沢な食事だった。


 昼食を取りながら今後の食事事情の話もした。

 結局今後は、食事の用意については、匠さんと楓さんを中心に用意してもらうことになった。

 といっても2人は朝も夜も早い……ということで18時以降に食事を取りたい場合は残り物と、追加は各自でということに。


 さらに食事はバイキング方式で作り置きして並べてることになった。

 亜人変化者は食べられるものが偏るため、ある程度種類の用意が必要そうだったための処置だ。

 そのための器とかテーブルはさっそく作っておいた。


 あと食事のリクエストがある場合は冷蔵庫に貼ったホワイトボードへ書くことに。

 リクエストまで聞いてくれるとか至れり尽くせりである。


「新しい住居が整い、ルールも着々と決まると。2日目の昼でこの状態はなかなか順調だわ」

「たしかにな。といってもよ、現状お前の陣営15人なのはどう思う」


 隣に座る兄が頬杖を付きながら私にそんなことを言ってくる。

 なんだ私の陣営って。

 いや確かにコミュの名前は魔王ケイの陣営コミュニティだけどさ。


「私のじゃない、私たちのでしょ。あと陣営としては昨夜にアリスのご両親がコミュに入ってくれてるから17人だね」

「ああ確かにそうか。とりあえずここにいるメンツは全員入ってもらったけど。あと親戚連中からは未だ連絡ねぇんだよな。それどころじゃないのかね」

「かもね。ただ遠くにいる人たちより自分たちのことを考えないと。目下は明日の出勤の話かな」


 なんの対策もなしに外出するのは無謀だろう。

 というか政府から避難勧告とか出てはいるんだけど、家を失ったりした人たち以外はすでにあまり言うことを聞いてないようだ。


 非常事態でも出勤しなくてはいけない業種は別にするとしてもなぁ……。

 台風が来ても出勤するもんな日本人。


 あとこのご時世だからこそ職を失いたくないという意識も強いらしい。


 そうだよな、絶対色々な物価とか上がるもんなこれ。

 略奪行為とかしないんだからお金は大事だ。

 国から全国民に対して供給があるなんてのはありえないんだし。


 一応、力を得た人たちが早速モンスター退治したりダンジョンに潜ったりし始めてるようだ。

 町中のモンスター退治は治安維持に大変助かる。

 しかし、怪我人も続出してるらしくて手放しに歓迎できない動きになっている。


 銃弾も今のところモンスターに効いてるようだが、自衛隊の活動は救助がメインだ。

 政治家は霞が関に集まってあーだこーだしてる。

 天皇の家系に関しては全員無事だっていう情報は流れてた。


「儂んとこのワゴンなら10人まで乗れるし、送迎するか?」

「なるほど。朝の出勤時に全員で動くとして、朝一の時間は運転手と、如月夫婦、葉加瀬夫婦で5人。残り5人まで護衛として乗れる、って感じか」

「私なんかはパートだから働く時間は4時間だけだし、送迎だなんて大げさのようにも思うけど……」

「いやお袋も車に乗らないとしても、誰かしらに付いてもらうべきだろ。昨日なんて俺らは駅行くまでに3回も戦ったんだぞ」


 駅までの道のりは歩いて15分程度だから5分に1回エンカウントだ。

 道端の猫を見つけるより頻度が高いぞ。


 あの頻度は流石にダンジョンからモンスターが溢れていたタイミングだからと思いたい。

 だが今後モンスターの発生がどの程度になるのかなんてまったく予想がつかず、警戒して損になることはないはずだ。


「私たちが見回りするとしてもだよ。突如なにもないところから発生するモンスターがいる以上、外は危険だって認識したほうがいい。実際モンスターに捕食されたっていう目撃例だってあるんだから」


 熊吾さんの同僚がそうなった話を今朝に聞いたばかりだ。

 正直私は戦う力を持たずに外出する人たちは正気じゃないと思う。


「でもねぇ……本音を言ってしまえば、職場だって安全とは言い切れないわけだけど」

「そうなると戦力を増やして職場でも警備するとか?」

「その人たちの食費とか経費で出費が増えたら元も子もないわね」

「そうだよなぁ」

「いや、待っておくれ。その案はありなんじゃないかな?」


 戦力だけの増強なんて無理だろうと思っていたところ、ソウくんの父である荘司そうじさんが待ったがかかる。


「僕はそれをビジネスにすればいいと思うのだよ」

「あら、なるほど。まさに今どきの警備業にするんですね。荘司さんと私が務める会社の社長はかなり柔軟な方ですし、売り込めば雇ってくれそうですね」

「え、雇ってもらえる可能性があるんですか?」


 荘司さんと、奥さんの波瑠はるさんから説明を受けるも、なんだか想像がつかない。


「もちろん可能性としてはあらゆる会社で十二分にあると思うよ。働いてる間の安全をお守りしますってね」


 例えばスーパーなら、力のある警備員を雇えばモンスターや、力を得て横暴になっている人から従業員やお客さんを守れる。

 安全がなるべく確保されてるスーパーならゆっくり買い物ができるし来客が見込めてお店も潤う。


 また普通の会社などでも社員に出社を命じる口実になりやすいし、会社自体が警備員かつ運転手として雇い入れ、社員を送迎するシステムもありだろうとのこと。


「なるほど……そうすればそこで働いてる身内の安全も守れるし、戦力として雇った人たちの食い扶持も確保ができると」


 今ここにいるメンツだけではビジネスになるほどの戦力はない。


 だってスーパーとか朝の9時から夜の9時まで開いてるとして、そこを1人で警備したら12時間勤務とかいうことになってしまう。

 流石に身内が居る時間だけ仕事くださいなんていうのは都合が良すぎるだろうからな。


「私たち以外に戦力となる人たちの確保をして、協力してもらう。その見返りは働き口の斡旋とダンジョン内での生活、ってことですか」


 これは社会機能が麻痺した場合も全員にメリットがある。

 私たちは他のダンジョンなどに潜り、モンスターからのドロップで食材を集める人手が確保でき、向こうは便利な電気水道が通る住居で生活を続けることができるわけだ。


「そういうことだね。信頼関係さえあればここは魅力的だよ。もちろん、ここの集団生活が許容できるならの話にはなるけれど」

「うーん、そうですね。家族単位のキッチンとか作ることもできるけど、今の作りがダンジョン的には効率的な気がするんですよね」


 水回りなどの動力を使うものがあちこちに散らばると、ダンジョンの維持に必要な魔力が増える気配がするのだ。


「私は荘司さんが提案してくれたビジネスの流れに賛成だけど、皆は?」


 ぐるりと皆の顔を見渡すが、全員納得しているようで特に否定の声は上がらない。


「そうしたらあとは、その戦力になる人自体をどうやって集めるかだね。まったくの他人をどんどん入れるっていうのはやっぱり嫌かなと思うし」


 ただ仕事を一緒にするだけならまだしも、生活をともにするのだ。

 どうしても人を選ばざるを得ない。

 でもここに居るメンツが働きに出る以上、その周辺の警護だって譲れない問題でもある。


「圭、それに関してはちぃと当てがあるぜ」

「タケくんの当てって……」


 いやぁ、あまり良い予感はしないですね。


「中学や高校んときによくケンカしてた連中だな。オレとはよく殴り合ってたが別に悪い奴らじゃねぇぞ」


 殴り合うほど仲がいいってか。

 そんなこと実際あり得るのか、そうなのか。


「あ~……一応僕も数人知ってる気がするけど、武くんの付き合いがある人って確かに悪い人たちじゃあないんだよね……」

「まぁ、ヤンキーとかばっかだけどな。あいつら何かしら力を得てそうではあるなぁ」

「ケンカ慣れしてる連中だ。特別な力なんぞなくても、武器さえありゃ戦えるだろうぜ」


 ソウくんと兄のお墨付きをもらってしまった。

 しかもタケくんは力が発現してない人でも戦力にするつもり満々だった。


「えーっと。そうしたら勧誘と同時に軽く質疑応答も入れたメール送ってもらって、それで判断させてもらってもいいかな」

「質疑応答か?」

「そう。勧誘条件の同意もそうだけど、より安全な場所に避難したい理由はなんですか、とか、連れていきたい人は誰ですかとか。そういう人柄がわかりそうなことを聞きたい」


 自分の身が可愛いだけとか言われてもそんな人は信用できないしな。

 あとは単純に受け入れる人数どの程度になりそうなのかなどの目安にもしたい。


「わかった。とりあえず文章作ってオレに送ってくれ。それを当てにできそうな奴全員に送りつけるからよ」


 あ、考えるだけじゃなくて文章作るのからして私がやらなきゃなのか。


「あ~圭くん。僕もちょっとお誘いしたい人はいるかも。住んでる場所はわからないんだけど、いつも遊ぶゲーム仲間とかも勧誘してみてもいいかな?」

「ソウくん自身が持ってるゲームクランのとこの人?」

「あぁ、たしかにクラメンは俺も気になるな。良い奴らだし、協力できるならしたいよな」


 3人とも以外と交友関係が広い。

 ひとまず私たちは勧誘文章を作成し、大人たちはビジネスにするべく事業計画や業務形態を考え始めるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ