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第13話 大集合

「ソウ……ってタケも? ってか、おばさんたちも」


 兄が玄関の扉を開ければ、外には兄の友人2人と、その家族が立っていた。

 玄関先にはワゴン車が1台止まっている。

 たしかこれはタケくん家の車だったはず。


「シュン、どうにかなんねぇか」

「いやいやタケは毎度話が突飛すぎて何もわからん」

「隼也くん、ほんと連絡もなしに御免よ。ただ力を借りるか何かしないとどうにも……」

「……兄貴、とりあえずは入ってもらえば?」

「そうだな……何人か立ってればなんとかなるか」


 我が家にはテーブル6人、ソファに4人座れるので計10人までならいける。

 我が家4人、小坂家3人、國兼1人、葉加瀬家が3人で、相馬家が4人。

 合計15人だが、真奈美が1人換算にならないため、私を含めた男子4人が立てばいいようだ。


 急な来客ではあったし、面識のない者同士もいたのだが、自己紹介などの交流はスムーズだった。

 昨日からコミュ上で交流を図っていたのが功を奏しているようだ。

 私が魔人であり魔王であるということも2人の家族には伝え済みでもあった。


「それで、ソウくんとタケくん、2人ともいったん家に帰ったんでしょ?」

「そうなんだけど……とりあえず僕からまとめて話そうか」


 2人は荷物を手早くまとめた後、こちらに向かった。

 電車もまだ動かない区間などがあったため、なるべくこちら側に近い駅で相馬家の車に拾ってもらったのだとか。

 しかしすでにタケくんの家では問題が起きており、相馬家の人たちは車中泊だったらしい。


 ちなみに相馬家はタケくんと妹と祖父母の4人家族だ。

 タケくんのご両親は2人が小さいときも車の事故で亡くなられている。


「うちに送ってもらう途中に武くんの家も見たんだけど、すぐ近くにある空き地から伸びてきた骨っぽいオブジェクトで大穴が開いてて……」


 さらに追加で何かないとも限らないし、そもそもよくわからない骨っぽいものが近くにあるのも怖いと。

 幸い荷物をまとめる余裕はあったようで荷台には貴重品や着替えなどはしっかり乗せられているそうだ。


「それで今度うちに到着したらね。庭にゴブリンが居たんだ」

「ゴブリンってファンタジーの代表なやつじゃん! え~めっちゃ気になるんですけどー。写真とか撮ってないの~?」

「アリスちゃん、フツウはそんなヨユウないとオモうの」

「アリス……頼むから写真撮ったりするのは安全が確保できるときだけにしてくれよ」


 真奈美に同意しかない。

 戦闘中とかの間にスマホ取り出してそうで怖いぞアリス。


「真面目な話、ゴブリンは危ないと思った。僕、魔法で戦ってみたけど、あんなに居たら埒が明かない」

「ちっ。あいつら打撃があまり効かないのかオレもあまり役に立てなかったしよ」

「数が多かったんだ」

「あれは多いなんてもんじゃなかったよ。庭に巣穴掘られてたみたいだし……」


 5体は倒したが、他に目視しただけでも10体以上はいたらしい。

 相馬家では雨戸までしっかり戸締りしていたおかげで家内には被害はなかったそうだ。

 逆に音が遮断されがちで庭で起こっていたことに関しては気づけなかったとのこと

 ご両親ともいつでも逃げられるよう荷物はまとめていたらしく、すぐさま車に乗せてもらってここまで来たのだとか。


「なるほどね。両家とも家に帰りたくても帰れないのが現状か」


 確かにテレビなどでよくそのような人たちのことが報じられているのは見た。

 ただ我が家の周辺にある家々などがなんともないせいで、どこか他人事のように感じていたのだが……。

 やはり直接の知り合いがそのような目にあっていることを知ると、他人事ではなくなるんだな。


「そうしたら手狭かもしれないけど、ここでしばらく生活すれば良いわ」

「うむ、我が家でも協力しますよ」


 母の提案に小坂のおじさんも隣家でも預かると提案してくれる。

 いったんは何とかなりそうだということで葉加瀬家と相馬家の皆はほっとしたようだ。


「まって。この問題、私がもっと良い形で解決できるはず」

「もっと良い形って、どうするんだ?」

「ダンジョンだよ。これ見てもらったらわかりやすいと思う」


 私は部屋の隅に置いてあった段ボールを2つ、テーブルの上に載せる。

 段ボールは上面を切り取ってあり、その上面が側面になるような形で置かれている。

 ドールハウスやミニチュアハウスのような形状だ。


 中を確認すれば片方は建物風の内装に、もう片方は洞窟のような内装になっている。


「これ。両方ともダンジョンなんだ。1つ目はこの部分にある魔石、2つ目はこの小さいスライムがダンジョンの核部分になってる」


 これが昨夜、真奈美と検証を重ねたダンジョンの作り方だ。

 小さいスライムは真奈美の一部だったもの。

 分離した体に魔石を組み込んだところ、別の個体として活動しはじめたのだ。

 少しだけなら体を分離させられるってすごい、さすがスライム。


「昨日魔石はいくつか拾ってたから、それ使って色々検証したんだ。最初はワープとか使えないかなって色々試してるうちに、ダンジョンが作れることが判明したんだけど」


 感覚的にわかったといった部分も多いのだが、検証の結果はこうだ。


 ダンジョンを生み出す動力、核となるのは魔石であり、これをコアとする。

 魔石内の動力、つまり魔力で可能な範囲ならダンジョンのサイズや内装は自由。

 魔石内の消費した魔力を補充することは可能だが、魔石のサイズによって魔力の上限が決まっている。

 コア1つにつき1人の主が所有者として設定される。

 ダンジョンを1人の主が2つ持つことは不可能。

 他者のダンジョンは外部からあれこれ干渉ができない。

 外からの攻撃に対する防衛機能を設定できる。

 ダンジョンの壁は破壊不可能だが、壁だけに囲われた部屋は作成できない。

 ダンジョン内の任意箇所にモンスターを生成可能だが、モンスター自体の制御は不可能。

 生成可能なのは見たことがあるモンスターのみ。

 モンスターのサイズや強さはある程度カスタマイズが可能。

 自陣営ダンジョンのモンスターを倒してもドロップなし。

 コアは魔石そのものでも、生物の心臓を担ってる状態の魔石でもコアになりうる。

 魔石そのもののコアをダンジョン外に出すと、ダンジョンとのリンクが切れる。

 生物の心臓がコアになっている状態の場合、その生物がダンジョン外に出ても問題はない。

 どちらのコアの状態でも、コアが破壊されるとダンジョン機能が停止、崩壊はしない。

 元と同等、あるいはそれ以上の魔石であればコアの再設定が可能。


「それで提案なんだけど、ウチと隣の家の地下にダンジョンを作って、そこに住むのはどうだろう」


 提案しやすいようにと、魔石のみで作った段ボールダンジョンはこれから作りたいと思っている形の模型にしていたのだ。


 現状では如月家と小坂家、國兼までの部屋しか考えてなかったのだが、これはそれぞれしかるべきところに部屋を追加すればよいだろう。

 なお内装や家具の形に関しては真奈美のこだわりがすさまじかった。


 まず地上部分、うちと隣家の間に地下に降りるための階段をつくる。

 そして誤って何かが入り込まないよう家の壁に沿って柵や扉を設置。

 地下に入ってすぐの階はエントランス広場にしてあり、奥に進むと業務用エレベーターのような昇降機と階段が並ぶ。


 そして地上に近いほうからまずはリビング、これが地下2階。

 複数の家族が別々に料理や食事をしても大丈夫なようになっているダイナー風の形だ。

 壁面がキッチンになっており、それに沿ってカウンターがあり、さらにはテーブルがいくつか並んでいる。

 

 地下3階は本やパソコンを置く書斎と、両親たちの部屋。

 一番下の地下4階はトレーニングルームと、私たちの部屋になっている。

 ちなみに3、4階にはそれぞれ男女別のトイレや風呂、洗濯機、それに給湯室などが用意されている。


 水やガス、電気といったものの供給だけにとどまらず、排水やゴミの廃棄など、生活に必要な行為はダンジョンの力ですべて賄えそうなのである。

 あと家電系だが、本当に中身が一般に販売されてる家電と同じ機械仕掛けになってるかどうかは不明だ。


 ただなんとなく、世界が異世界の法則に傾いたとき、これらの文明の利器が使用不可になる気がするのでそうならないようにしたいものだ。


「この作りのダンジョンで、部屋や階層を増やせば皆ここで暮らすことが可能だと思うんだけど」


 ちなみにダンジョンという存在はやはり異次元になるようで、スペースの確保は気にしなくて良さそうだ。

 段ボールダンジョンも横は目に見えるからなのか通常の寸法なのだが、奥行きが明らかに段ボールからはみ出してる。


「これはすごいね……僕たちもお世話になっていいなら本当に助かるけど……」

「圭、オレたちゃどんな働きで恩返しすりゃいい」

「こんな情勢だし、持ちつ持たれつだよ。協力を求めたい内容は確かににあるけど」


 助けてほしいのは戦えない人たちの安全確保や、日常生活を送れるようにするためのことだ。

 これは戦うことを覚悟してもらう必要があるだろう。


 また他にも生存競争に必要そうなことに協力して欲しい。

 これは私たちだけが生き残れば良いってものでもないからだ。

 もちろん無理のない範囲でとは思うが、そもそも何ができるかという相談からさせてもらいたいところなのである。

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