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第12話 朝を迎えて

 怒涛の1日から夜が明け、朝が来ました。

 我が家では夜間は何事もなく無事に過ごせたが、テレビでは地域や職業によっては寝ることもままならない状態が続いている様子が報じられていた。


「……兄貴おはよう。早いじゃん」

「早いつっても朝一の授業があるときはこの時間に起きてるだろ」


 いつも通りの日曜日朝ならまだ寝てるであろう兄がすでに起きてきたものだから驚いてしまった。


「さすがにこんな状況で昼までだらだら寝てられるほど神経図太くねぇんだよ」

「それもそっか。おじさんは移動中で、ソウくんタケくんはそろそろ荷造り初めて実家に帰ってくるってさ」

「らしいな。しかしソウとタケはこっち帰ってきても微妙に家が遠いな」

「隼也ったら……それは仕方ないんじゃないかしら? あの子たちだってご家族がいるんだもの」

「はは、まったくだ。さすがに我が家でもう2家族分住める場所はないからねぇ」


 真奈美たちもおじさんが帰ってきた後はどうするのだろうか。

 おばさんも真奈美も1人で色々できない体であることを考えるとおじさん1人で家族の面倒を見るのは大変そうだ。

 あまりにも遠い場所に居るのなら諦めがつくのだが、微妙な距離感の場合もどかしく感じてしまう。


「小坂さんところも家が隣といってもね。色々不安が多いね。1つ屋根の下って、安心感あるもんだねぇ」

「ほんとうにねぇ」

「かといって避難所での集団生活は大変なことのほうが多いだろうからね」


 それもそうだ。

 体育館などに避難している人たちの様子テレビで何度か流れたが、色々と大変そうだった。


「ワープとかできたらよかったのにね」

「あーワープな。転移魔法とかって使えたりしねぇの?」

「残念ながら今のところは」


 真奈美と夜番している間、気になったことなどの情報収集に努めてみたのだが、転移系の情報は出てこなかった。

 自己流で出来たりしないかと小さい紙切れを相手に魔力を使ってあーだこーだしてみたりもしたがダメだった。

 しかし夜中の間に判明した事が1つあるのだ。


「転移はできないけど、ダンジョンなら作れそうだよ」

「………………はあ?」

「シュンにい、ダンジョンだよ! ダ・ン・ジョ・ン!」


 たっぷり5秒もかけたリアクションがそれなのはしょっぱいぞ兄よ。

 そしてダンジョンが作れそうということが判明してから真奈美のテンションがぶち上っている。

 これは夜から起きてるせいで深夜テンションなのもあるかもしれないが。


 真奈美はダンジョン内ハウジングは任せろとか言いつつ、自分でスマホが使えないせいであれこれと色々検索させられた。


「詳しくは皆揃ってから話すよ。アリスのこと起こしてくるから朝食にしよ」


 今のところわかってるのはマジでダンジョンが作れそうってことだけなのだが、それを説明するのは簡単ではない。


「隼也、これ並べて頂戴。あと飲み物もね」

「あいよ」


 いつもと同じ、でもいつもと違う食卓の風景。

 いつもの日常生活を目の前にして、日常が崩れるのはあっという間のことなのだと痛感する。


 昨日の今日でまだ手探り状態ではあるが、身の回りの日常を守れるぐらいの努力はしなければ。

 まずは宣言通りアリスを叩き起こしにいこう。


 朝食では納豆を食べられなくなったことが判明した。

 日本人の朝食で白米があるのに納豆が食えないむなしさときたら。

 異世界ゆるすまじである。


 そして朝食の最中に我が家へおじさんが到着した。


 ステータスを見て知ってはいたが、おじさんは種族が獣人(熊)である。

 熊そのものがスーツを着ている感じになっていて少し私のテンションがあがった。

 獣要素が多い獣人は歓迎だよ。


 元から体の大きい人だったし名前にも熊って漢字が入っている人だったせいか違和感は仕事をしてくれない。

 おじさんはおばさんと熱い抱擁を交わした後、おじさんは手が使えない真奈美の食事をかいがいしく介護していた。


 どうやら手の形は人のものとほぼ変わりがないらしい。

 便利なものだ。


「ほんっっっっとうにありがとうございました!!!」

「まあまあ、熊吾さん。困ったときはお互い様ですし」

「むしろ翠さんともども私たちが真奈美ちゃんに守ってもらってたぐらいだわ」


 そして今はおじさんが買ってきてくれたコンビニスイーツを堪能しつつ、まったり情報交換中である。

 昨日スーパーも開いていたけど、日本はこんな世の中でも比較的平和だ。

 ニュースを見れば外国はどの店もがっつり板張りで閉められてる上に暴動が頻発してるらしいのだが。


「にしてもおじさん、レベル3ってすげぇな。どんなやつらと戦ったんっすか」

「あ……あぁ……その。どうか誤解のないようにしてもらいたいのだが」

「誤解?」

「そのな。昼に意識を失った後、目覚めたときにオフィスで暴れまわっているのが居て、な」


 かなり言いづらそうにしているが、これまさか戦った相手は人か?


「明らかにそれが暴れてるせいで怪我をしている社員が目について、なんとかしなければと」

「どんな形してたんっすかそいつ」

「そうだな……人間サイズでカマキリのモンスターという感じだった。服は着ていて、手の部分がするどい刃物になっていた」


 人間サイズの虫ってだけでもかなり気持ち悪いのだが、カマキリか……。

 虫はあまり得意じゃないんだよなぁ。


「止めようと思っても暴れまわっていて刃物の部分が危険だし、とりあえず……とりあえず、投げた……んだ」

「ぽいーって?」

「そんな可愛いものではなかったな……俺は自分の力が上がっていることに気づけなくて、音にするならブン、ガッシャーンだった……」

「え、がっしゃーんって」

「割れたのは窓だな……そしてうちの会社のオフィスは……7階だ……」


 おっふ……これは事故では?

 しかしビルの窓ガラスが割れるってパワーすごすぎないか。


「だ、だがな! あいつはそれで死んだわけじゃないんだ」

「えっ! 死ななかったのすごくない!?」

「あぁ……あれが投げ出されたのを見て、皆も死んだと思ったってさ」


 いやぁそれはそう思うだろう。

 ただ、たしか飛び降り自殺の場合5階程度だと死ねない可能性も高く、10階以上だとほぼ確実に死ぬとかだった気がする。


「……それで?」

「ただ下にいる誰かを巻き込んでたらと思い、恐る恐る割れた窓から地面を見たら……。でかいトカゲがカマキリを追いかけていた」

「とかげ……」

「トカゲだ。あれは、リザードマンとでもいえばいいのか。二足歩行だった。裸だったが」

「裸ってことはそっちはモンスターか?」

「それで……カマキリが必死に逃げようとしていたんだが足が折れていたようで逃げられず、そのままその……捕食されて……」

「え、こわ……こっわぁ! 俺、リザードマンって格好良いイメージだったんだが、印象改めるわ……」


 トカゲってそもそもだいたいが虫食だしな。

 同じような見た目をしてる場合、習性は地球も異世界もあまり変わらないのだろうか。


「他には戦ったりなんてしてないし、それでレベルが上がったようなんだ。後からわかったんだが、あのカマキリは問題行動が多かった女性社員だったらしい。俺が行動を起こさなければ他の誰かしらが死んでただろうってことで、社内ではひとまずここだけの話にということになった」


 あーメスのカマキリだったのか……きっと襲われてたの男性社員とかなんだろうなぁ……。


「おじさんの事情は把握できたけど、私もおじさんの会社と同じ判断でいいと思うな」


 正直、今は自分自身がどんな力をもっているかわからないのに、他人を傷つけるな、殺すなって難しいところがあると思う。

 むろん故意的に誰かを傷つけるなんてのは言語道断だと思うが。


「さて、それじゃあこっからは夜のうちにわかったダンジョン作成について……」

『ピンポーン』

「あらぁ、誰かしら?」

『隼也ー! 圭子ちゃーん! 僕たちだよー!!』

「え? ソウくん?」

「なんであいつが? って、ちょ、お袋何出ようとしてんだ。俺たちが出るからそっちに居てくれ」


 いつも誰か来たときには母が真っ先に出るものだからつい体が動いたらしい。

 習慣って怖い。

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