両親の愛
そのとき
「誰かいるぞー」
大人の男の人の声が聞こえた。小屋の扉が開いて男の人が入ってきた。
「いたぞー」
その人は大声で誰かに知らせているようだった。そして数人の大人が集まってきた。おそらく僕たちを近所の人達が探してくれていたのだろう。
僕はお父さんとお母さんがいることを確認してほっとした。
「ボコッ」
僕の頬に衝撃が走った。僕はその衝撃で倒れこんでしまった。
お父さんが僕を拳で殴ったのだ。僕は痛みに耐えながらお父さんの方を恐る恐る見た。
「何してるんだ。何でこんな家出みたいなまねをしたんだ。」
お父さんは怒りに震えた声で怒鳴った。お父さんがこんなに怒るのを初めて見た。
「お父さんとお母さんがどんなにお前のことを心配したかわかるか。」
お母さんの顔はこれ以上ないくらいに泣きはらしていた。体中の水分が出てしまうんじゃないかというくらい涙で覆われていた。そして声にならない声で言った。
「良かった。」
僕は安心と後悔と痛みが入り混じって声を上げて泣いた。
「お父さん、お母さんごめんなさい。」
僕はこんな時に非常識かもしれないが嬉しかった。幸せを感じていた。お父さんとお母さんが僕のことを本気で心配してくれていたことを知ったからだ。僕はこの時、お父さんとお母さんをかけがえのない本当の親だと確信した。
そして問題は狩野さんだった。狩野さんの親はその場に来ていなかった。僕は他のところに探しに行っていて、見つかったことを聞いたら駆けつけるものだと思っていた。狩野さんは僕に両親のことを自慢していたし、血の繋がりを主張していた。しかし、狩野さんの親はいっこうに現れなかった。