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覚え鹿  作者: 輝野 和己
序章
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閃光

 回復の能力を使った影響だろうか、長距離走をした後のような疲労を感じる。

 便利な力だが、無条件に使えるわけではないようだ。


 川の水を飲んで一息つく。

 さて、自身が受けた力を学習し、使えるようになると仮説を立てた。

 だが、まだ二回しかサンプルがない状態である。

 確信を持つためにも、生存能力を上げるためにも検証が必要だ。


 この能力の最大の欠点は、自身の体で体験しないといけないところである。

 回復のような力であれば良いが、炎の玉のような力であれば、最悪死にかねない。


 見ただけで学習して使えるようになる能力だったら良かったのにと思う。

 しかし、それは無いものねだりだ。

 今は、このような力を手にできたことを喜ぼう。


 能力を検証するために、何かしかの力? 術のようなものを使う相手と出会う必要がある。

 再び、川沿いを下流に向かって進むことにした。

 

 先ほどの角兎のような友好的な相手が見つかれば良いなと考えていると、遠くの方に複数の生物がいるのに気づいた。


 足を止め、近くの茂みに身を隠す。

 相手は3体ほどおり、川辺で水を飲んでいる。

 気づかれないように、相手の死角になるように木々の後ろに身を隠しながら近づいて行く。

 

 見た目は犬のようである。但し、地球の犬と違って、耳が異常にでかい。

 犬というと、最初に出会った角の生えた獣は、問答無用で炎の玉をぶっ放してきた。

 あの犬に比べると温厚そうな見た目はしているが、油断は禁物である。


 十分に気を付けていたつもりだが、枯れ草を踏む音がわずかにする。

 その途端、耳のでかい犬達は、一斉にこちらを向いた。


 でかい耳はかざりではなく、聴覚が相当に発達しているようだ。

(どうする?)

 自問自答する。隠れてやり過ごすか、先制攻撃として炎の玉で攻撃するか。


 迷っていると、三匹の耳でか犬は、川に飛び込んで対岸へと泳ぎ始めた。

 どうやら得体のしれない相手から逃げることを選択したようだ。

 あまり好戦的な生物ではないのかもしれない。


 それならと、俺は茂みから姿をあらわす。

 この鹿の姿を見れば、逃げる必要はないと考えるだろう。

 犬に似ているのなら、知能も高いかもしれない。

 友好的な関係を気づくことができるのではないだろうか。


 対岸に渡り切った耳でか犬達は、こちらを振り返る。

 俺は挨拶のつもりで、前足を上げ、友好的なところをアピールする。


 しかし、挨拶とは受け取られなかったのか、二匹は弾かれたように奥の森の中に逃げ出して行き、残る一匹も警戒するように大きな耳を広げる。


 改めて見ても大きな耳だ。その耳を前方、つまり、こちらの方向に向けてくる。


(うわっ!)

 突然、大きな耳が光った。あまりにも眩しい光に思わず目をつぶる。

 目をつぶったにも関わらず。しばらく目の奥がちかちかするほどである。

 川を挟んで三メートル以上離れていたから良いものの、至近距離で食らったら失明していたかもしれない。


 ようやく目のちかちかが収まって、ゆっくりと目を開けると、耳でか犬達の姿は影も形もなくなっていた。


 やれやれと思った次の瞬間、例の感覚に気づく。

 さっそく、感覚通りに能力を使ってみると、まぶしい光が放たれる。


 自分では確認しづらいが、鹿の耳の部分がピカッと光るようである。

 回復や炎の玉に比べると地味だが便利なことには変わりない。

 

 耳でか犬のように、逃走時にも使えるし、戦闘中の目つぶしとしても威力十分である。

 それに、これで相手の術を受けて学習する能力があると確信できた。


 この能力があれば、生き延びることができるかもしれない。

 俺は、この鹿の体に感謝した。

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