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覚え鹿  作者: 輝野 和己
序章
4/34

回復

 棍棒で殴られた兎を見る。

 兎は、苦しそうにうずくまった状態で、こちらを見ている。


 近づいて傷の状態でも確認しようかと思っていると、突然、兎の角がピカッと光った。

 光は、やがて角から兎の体全体を包み込むように広がる。

 驚いて見つめていると、徐々に光は収まり、兎は先ほどまで苦しげだったのが噓のように体を起こすと、ピョコピョコとこちらに近づいてくる。


 またしても不可思議な現象である。

 この角の生えた兎には、傷を治すような力があるのかもしれない。

 

 兎は、つぶらな瞳で鹿である俺を見上げる。

 どうやら敵意はないようである。

 ほっとして体の力を抜くと、緊張状態で忘れていた火傷の痛みがぶり返してきた。


 痛みに耐えていると、兎が頭から生えた角を俺の前足に擦り付けてくる。

 再び兎の角が光始めると、俺の前足から体全体に光が広がっていく。

 

 暖かい光に包まれていると、徐々に火傷の痛みが治まっていく。

 やはり、この兎には傷を治す力があるようだ。

 この兎は、以外に知能が高いらしく、自分が助けられたことに感謝してくれているのかもしれない。


 光が収まると火傷の痛みはかなりましな状態になっている。

 兎は、借りは返したとばかりに背を向けると、茂みの中に姿を消した。


 人助けならぬ兎助けをして良かったと思っていると、自分の中に不思議な感覚があるのに気づいた。

 なぜか自分にも回復効果のある光を発することができるという感覚である。

 それは、あの炎の玉を放てるようになった時の状況に似ている。


 理由もわからぬまま、感覚に従って力を開放すると、薄暗い森の中で自分の角が光始める。

 兎の時と同様に光は徐々に体全体に広がり、多少痛みの残っていた火傷を治していく。

 

 痛みがなくなったのを確認して、光を収めると、火傷はすっかり治っている。

 間違いない。先ほどの兎の力と同じものである。


 炎の玉の時は、元々持っていた能力なのかと思ったが勘違いだったのかもしれない。

 炎の玉も、回復の光も、自分の身体に受けてから使えるようになったからである。

 この鹿の身体は、自身に受けた能力を学習し、使えるようになるというすさまじい力があるのではないだろうか。


 俺はこの絶望的な状況の中で、希望を見いだした。


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