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覚え鹿  作者: 輝野 和己
旅立ち編
33/34

森の終点

 森人の村を出てから何日たっただろうか?

 アレン達の顔が思い浮かぶ、元気に暮らしていると良いのだが。


 透明化の能力を手に入れてから、戦闘を避けるのは容易になった。

 そのため、進行速度は上がっているはずだが、まだ森を抜けることはできない。

 森人の村でメルロスに森を抜けるルートを教えてもらったが、もしかすると彼女が把握している頃より森が広がっているのかもしれない。


 その日も川沿いを下流に向けて歩き続けていた。

 空を見ると雲が西から東へと流れている。今日はいつもより風が強い。


 川の先を見ながら歩いていると、はるか先の方で川の両端に見える木々が若干まばらに見える気がした。

 森の終端が見えてきたのではないかと、風を纏い駆け出す。

 グングンと猛スピードで前に進む。しかし、近づくにつれて気のせいであることがわかった。

 洪水かなにかで、たまたま木々がなぎ倒された箇所があっただけだった。


 全速力で駆けた所為もあり、落胆が大きい。

 何日も代り映えのない景色を見続けて、気が滅入っているのかもしれない。

 もう同族を探すのは諦めようかという考えが脳裏に浮かぶ。

 そもそもこの世界では、自分以外の鹿は絶滅しているかもしれない。

 この森は大陸を埋め尽くしていて、どれだけ歩いても森を抜けることはできないかもしれない。


 いやな考えばかりが脳裏をよぎる。

 何もかもどうでも良くなって川に飛び込むと、体を水に沈める。

 冷たい水が体に触れて、少し冷静になれた。


 ふと、俺はこの世界に転生した時のことを思い返した。

 俺はトラックに轢かれそうになった鹿を助けて、この世界に転生した。

 死んだと思ったら生き返ってラッキーぐらいにしか思ってなかったが、鹿を助けて転生したのには意味があるのかもしれない。

 この世界の鹿を助けて欲しいので、鹿を助ける心を持った人間を選んで転生させたのかもしれない。


 なんの確証もない推察だが、先程までのネガティブな考えよりも、ずっと気に入る考え方だった。

 俺はすっきりした思いで川から出ると、再び川沿いを歩き始める。


 それから何日歩いただろうか、ちゃんと休憩を取りながら安全を確認しながら歩いていた。

 すると、いつかのように前方で木々が途切れて見えた。

 しかし、俺は前回のように慌てることはなかった。

 そのままのペースで歩き続ける。


 例えまた森の終端でなかったとしても、俺は諦めずに歩き続けるのだ。


本作は、ここで一旦完結となります。

ここまで読んでくれる方がいるかはわかりませんが、もしいたら、読んでくれてありがとうございました。

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