表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覚え鹿  作者: 輝野 和己
旅立ち編
29/34

旅立ち

 ゴブリンとの闘争が終わってからしばらくは、村の中もばたばたしていた。

 どうやら死者はいなかったようだが、負傷者はいたようで、俺も回復の術を使ったりと忙しかった。

 また、大量に出たゴブリンの死体は穴を掘って埋めたようだが、血の匂いにつられた肉食獣達が村の近くまでやってきて対応が必要だった。


 そんなこともしばらくすると、落ち着いてきて、今や村はすっかり平穏を取り戻している。

 俺は、午前中は、図書館で文字を勉強し、午後からアレンと狩りをするという日常に戻った。

 文字に関しては、図鑑にある動植物の絵と名称をある程度覚えたが、それ以上を習得するのは難しいと感じた。そろそろ文字の習得は一区切りとし、次の目標に移るべきだろう。


 次の目標を何にするかと考えて、同族を探しに村を出ることが思い浮かんだ。

 この村は居心地が良いし、村人達は俺に好意的だ。

 だが、せっかく鹿になったんだから同族に合ってみたいという思いがある。


 この森に鹿はいない可能性が高いらしいが、この森以外の場所には生息しているそうだ。

 俺もだいぶ強くなった。今なら、この森を出て、同族を探し出すことができる気がする。

 それにせっかく未知の世界に転生したのだから、この世界を旅して回りたいという気持ちもある。


 俺はこの村から旅立つ決心をした。

 とはいえ、二度と帰ってこないというわけではない。

 同族が見つからなくて戻ってくる可能性もあるし、なんなら同族と一緒にこの村を訪れても良い。


 そう考えるとだいぶ気が楽になった。もう二度とこの村の人達と会えないとなると、さすがに寂しく感じるからだ。


 アレンにこの村を離れることを絵で伝えると、泣きそうな顔で引き留められたが、同族を探したいという目的を苦労して伝えると、しぶしぶ納得してくれた。


 俺が旅立つことは、アレン経由で村人にも伝えられ、盛大なお別れ会が開かれた。

 お別れ会では、たくさんの村人から声をかけられ、ヒューやギルも寂しそうな顔で俺の腰を撫でていた。

 サリオンは俺の前で片膝をつくと、深く頭を下げて礼をした。この村を守って戦ったことを感謝しているのかもしれない。

 子供達は俺に抱き着いて泣いてしまった。顔をなめたり、頬をすりすりしたりしてご機嫌を取ったが、なかなか泣き止まなくて大変だった。


 お別れ会の翌日、長老のメルロスから森を抜けるルートを教えてもらった。

 彼女が杖で地面に描いてくれた地図によると、基本的には川沿いを下流に向かって進めば良いらしい。

 川は途中でもう一本の川と合流するそうだが、合流後も下流に進めばやがて森を抜けるようだ。


 門の近くには、たくさんの村人が集まって、俺の門出を祝福してくれた。

 見上げると雲一つない青空、俺は村の門をくぐり、旅立つのだった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ