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覚え鹿  作者: 輝野 和己
戦争編
28/34

戦いの後

 意識が戻ると、見慣れたアレンの家にいた。

 どうやら意識を失った俺を運んでくれたらしい。

 アレンはござの上で寝ている。どうやらお互い無事だったようだ。


 家から外に出ると、ちょうど日が昇り始めた頃合いで、日差しが目に眩しい。

 俺は近くの木の葉をむしゃむしゃ食べて腹を満たした。


 しばらくすると、アレンが起きてきた。俺が食事しているのを見ると、安心したのか笑顔になった。

 一緒に広場に向かうと、村人達からしきりに声をかけられた。

 子供達は、俺を見つけるといつも以上に腰や背中を撫でまわしてくる。

 皆、一様に笑顔である。この様子だと村人に死者は出ていなさそうだ。


 門の様子を見に行くと、絶賛修理中のようで、村人が壊された閂を取り付けていた。

 ゴブリンの死体は既に片付けられていた。

 

 門の修理を見つめていると、サリオンが声をかけてきた。

 サリオンは何やらアレンに頼み事をしているようで、アレンは了承したのか首を縦に振る。

 俺が不思議そうにしていると、アレンが近くに落ちていた木の棒を使って地面に絵を描いた。

 

 ふむふむ……俺が前に書いたゴブリンの家を表す絵だな。そのまわりに炎のような絵を描き始めたぞ。


 俺は何となく把握できた。つまり、ゴブリンの集落を焼き討ちに行くのだろう。

 集落の場所を知っているのは、俺とアレンだけだから、案内をお願いされたに違いない。

 

 それから、サリオンは襲撃メンバーを集めるのか離れていき、アレンも準備があるのかどこかに向かった。

 俺は身一つで準備も何もないので、水を飲んだり、草を食べたりして皆の準備が完了するのを待つ。


 一時間ほどして、三十人ほどの村人が集まった。

 アレンは新しい弓を担いでいた。昨日ボスゴブリンに壊されたので、先ほどお店に行って購入したのだろう。

 焼き討ちメンバーの中には、ギルとヒューの姿もあった。二人とも元気そうだ。


 俺とアレンを先頭にして、ゴブリンの集落に向かう。

 森人の村からはかなり離れている。四時間ほど歩いて、ようやく集落が見えてきた。

 前回来た時と違い、門の前にゴブリンはいない。


 戦える者は村への襲撃に向かって倒されたのか、はたまた、どこかに逃げ出した後なのかもしれない。

 サリオンの指示により、村人が火打ち石と火打ち金で火花をおこし、種火を作った。松明を持った村人達が種火から火を移していく。

 門の前に十人ほどの村人が待機し、残りのメンバーで集落の建物に火をつけて回る。


 もぬけの空の建物もあったが、火をつけると中からゴブリンが飛び出してくることもあった。

 とはいえ、武器も持たずに飛び出してくるので、簡単に倒されていく。

 中には子供と思われるゴブリンもいたが、容赦なく倒された。


 やがて集落の全ての建物が燃やされ、最後に門が燃やされた。


 俺はその光景を見つめながら、ようやく森人とゴブリンとの争いが終わったと感傷に浸るのだった。

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