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覚え鹿  作者: 輝野 和己
戦争編
26/34

乱戦

 三時間ほど仮眠を取り、体力は十分回復した。

 門の前には二十人ほどの武装した村人が集まっている。

 この村には、もっと村人がいるはずだが、西にある門だけではなく、他の場所にも人員を配置する必要があるため、このぐらいの人数になっているのだろう。


 村人達を眺めていると、ギルやヒューの姿を見つけた。

 アレンはどうしているかと探していると、何やらサリオンと話していた。


 時間は夕暮れ時である。


「〇〇△×××!」

 見張り台でヒューが叫ぶ。

 ついに奴らが来たのだろう。俺は見張り台に上がって、村の外を見る。

 そこには、森の奥からぞろぞろと歩み寄るゴブリン達の姿があった。

 隠れて奇襲する気もないようで、堂々と村に近づいてくる。

 ゴブリン達はかなりの数で、見えるだけでも五十匹ぐらいいそうである。


 村人の一人が風の術でブオーという警報を鳴らす。

 弓を持った村人は、見張り台に上がって矢をつがえる。

 

 ゴブリン達は、そろそろこちらの弓の射程に入りそうなところで立ち止まる。

 すると、十匹ぐらいの弓持ちのゴブリンと数匹の松明を持ったゴブリンが進み出た。

 弓持ちゴブリン達は、先端に何かを付けた矢を取り出す。

 そして、矢の先端部分を松明で燃やすと、それを弓につがえて門の方に撃ってきた。


(火矢だ!)

 油でも染み込ませているのだろうか? 矢が飛ぶ時の風圧でも火は消えずに、門や木の柵に刺さった。

 村人達も弓で応戦するのだが、ゴブリン達は矢を撃ち終わるとすぐに後ろに下がり、こちらの射程範囲から逃れる。

 対して、ゴブリン達は、村人達より手前にある門や木の柵に矢を当てるだけなので楽なものである。


 このままでは門が燃えてしまうと、俺は水の術を使って、燃えている矢の消化を始める。

 ヒューを含め、水の術を使える村人も消化作業に加わることで、なんとか火が燃え移るのを防ぐ。


 ゴブリン達は火矢が尽きたのか、弓持ちゴブリンが後ろに下がり、丸太を持ったゴブリンが前に出てくる。

 昨日よりもでかい丸太で、それを持つゴブリン達の体もでかい。成人男性ぐらいの体格だ。

 ホブゴブリンという奴らだろう。


 六匹のホブゴブリンと、その周囲を守るゴブリン達が突撃してくる。

 その後ろからは弓持ちゴブリンも続き、見張り台にいる村人達を矢で牽制する。

 特に俺のことは警戒しているらしく、矢を次々に放ってくる。

 飛んでくる矢は、風の術を使って払いのけるのだが、防戦一方となり、こちらから攻撃する隙がない。


 ついには、ドーンという音と共に、門に丸太が打ち付けられる。

 ホブゴブリンはゴブリンよりかなり力が強いらしく、一撃で閂が破壊され、門が開き始める。


 昨日と同様に、村人達が門を内側から押さえて開かないようにするが、ホブゴブリン達の方が力が強く、門が開いていく。


 ついには、開いた門の隙間からゴブリン達が村に侵入してくる。

 なんとかここで食い止めなくてはならない。


 俺は体を帯電させ、ゴブリン達に電流を流して倒していく。

 乱戦の中、村人を巻き込まないように注意して戦う。


 村人達も剣や槍で、ゴブリン達と戦っている。

 特にサリオンは警備隊長なだけあって、剣で次々とゴブリンを倒していく。

 

 だが、門を開けきったホブゴブリン達が丸太を放り投げ、村の中に入ってきた。

 ホブゴブリン達は、背中に担いでいたこん棒を手に取ると、村人達に襲い掛かる。


 俺には三匹のホブゴブリンが近づいてくる。帯電した俺の体に触れるとまずいとわかっているらしく、すぐに近寄らずに、三匹で囲むようにして距離を詰めてくる。

 囲まれるとまずいと思い、俺は目の前のホブゴブリンに近づく、振り下ろされるこん棒を避けると、そいつの足に触れて電流を流す。

 体が大きくても効いたようで、膝から崩れるように倒れる。

 一匹倒したのもつかの間、左右からホブゴブリンがこん棒を振り下ろしてきた。

 左からの攻撃はなんとかかわしたものの、右からの攻撃は完全にはかわしきれずに、お尻の辺りをこん棒で叩かれた。

 かなり痛いが動けないほどではない、俺はすぐに距離を取って、回復の術を使う。

 二匹のホブゴブリンは、距離を詰めてこようとするが、ギルが間に入って牽制する。


 六匹いたホブゴブリンは、一匹は俺が倒し、村人達で二匹倒しているようだ。

 残りは三匹だ。

 一匹はサリオンと戦っており、二匹はギルと対峙している状況である。

 アレンや他の村人は、次々に侵入してくるゴブリン達の相手をしていて余裕はないようだ。

 ギルは槍を巧みに使い、距離を取って近寄らせないようにするが、さすがに二匹相手だと分が悪い。


 目つぶしの術を使おうかとも思ったが、村人達まで食らってしまう危険があるので取りやめる。

 代わりに水の塊をホブゴブリンの顔面に放つ。ホブゴブリンは、ギルに意識を向けていたのか、モロに顔面に食らって後方にのけ反った。

 そこをすかさずギルの槍が突く、無防備にさらされた相手の喉を貫き、鮮血を飛び散らせながら倒れる。

 もう一匹のホブゴブリンは、それを見て怒ったのか、ギルにこん棒を振り下ろす。

 ギルは首を振って、頭に当たるのを避けるが、肩にこん棒の一撃を受け、衝撃から片膝をつく。


 すぐに回復してあげたかったが、まずは目前の脅威を排除すべきだと、ギルに止めを刺そうとするホブゴブリンに近づいて電流を流した。

 ばたっと倒れるホブゴブリン。ギルは痛そうにしながら立ち上がると、倒れたホブゴブリンを槍で突いて止めを刺した。

 俺は回復の術をギルに使いながら、辺りの状況を確認する。


 見れば、ちょうど最後のホブゴブリンをサリオンが倒したところのようだ。

 後は通常ゴブリン達を殲滅すれば俺達の勝利だと思ったのだが、その希望はすぐに潰えた。


 門からホブゴブリンよりさらに大きなゴブリン達が姿を見せたのだ。

 ゴブリンの集落で見た、ゴブリンジェネラル二匹とボスゴブリンに間違いなかった。

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