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覚え鹿  作者: 輝野 和己
戦争編
25/34

森の偵察

 ゴブリンの襲撃のあった翌日、俺は門の近くの建物で目を覚ました。

 夜の間は、浅い眠りを繰り返していたが、ゴブリンの襲撃はなかった。

 村への襲撃を諦めたのか、本格的な侵攻のための準備をしているのかはわからない。


 サリオン達は、今日も交代で警戒を続けるようである。

 俺は昼の間に、ゴブリン達の状況を偵察したいと思っている。

 だが、俺だけで偵察に行っても、偵察結果を村人に伝えることができない。

 

 とりあえず、アレンの家に向かう。

 アレンは既に起きており、弓と矢筒を持って出かけようとしていた。

 

 俺はアレンの服を口で引っ張って、草の生えていない地面まで誘導する。

 さて、お絵かきでうまく伝えないといけない。

 まずは、角の生えた顔を描く、ゴブリンのつもりである。

 続いて、ゴブリンの顔を囲って家を描き、ゴブリンの住んでいる家を表現した。

 最後に、俺の絵を描いて、ゴブリンの家に向けて矢印を引く。

 俺がゴブリンの家に行く……という意味合いである。


 相変わらず、アレンはやけに感が鋭く、首を縦に振って理解したという反応をした。

 本当に伝わったのかはわからないが、とりあえず、俺が歩くと、後ろを付いてきた。


 門の前まで来ると、アレンが門番に話し、門を開けてもらう。

「〇〇×△△〇?」

 門が開く音が聞こえたのか、門の近くの建物からサリオンが現れた。

 何やらアレンと会話を始める。

 昨日襲撃があったばかりなので、外出禁止だったりするのだろうか?

 だが、アレンの話を聞くと、むしろ感心したような顔をして俺たちを送り出してくれた。


 俺たちが門を出ると、背後で門が閉まった。

 ここからが本番だと、俺は昨日ゴブリン達がいた辺りの匂いを嗅ぐ、やや薄れているがゴブリンの匂いがする。後は、これを辿ってゴブリンの住処を発見するつもりだ。

 

 匂いを辿って森を進む。匂いが途切れることもあったが、多数のゴブリンが通ったため、踏み分けられた草、地面の足跡など、何かしかの痕跡を辿ることができた。

 五時間ぐらい森を進んだだろうか、進行方向に木の柵で囲われた集落が見えてきた。

 木の柵といっても森人の村のように、隙間なく並んでいるものではなく、まばらに一メートルほどの木が打ちつけてあるだけである。

 柵の周りに堀もなく、俺ならジャンプして飛び越えられるし、なんなら柵と柵の隙間から侵入できそうである。

 防衛目的というより、自分達の縄張りを主張しているだけなのかもしれない。


 木の柵には門があり、二匹のゴブリンが門番をしている。

 門とはいっても両開きのスイングドアのようなもので、門番さえ倒してしまえば、簡単に突入できそうだ。


 ここがゴブリンの住処に違いないが、今回は偵察が目的である。

 とりあえず門番に気づかれないように、中の様子を窺うことにする。

 幸いここは森の中、身を隠すための木や茂みには事欠かない。

 俺は門番の目線に入らないように身を隠しつつ、ゴブリンの集落の周囲を観察して回る。

 アレンも身を低くして、俺の後ろに付いてくる。

 

 ゴブリンの集落はかなりの規模があった。建物の数から想定すると、百匹ぐらいのゴブリンがいそうである。

 昨日見た大柄なゴブリンも複数いたし、そのゴブリンよりさらに一回り大きいゴブリンもいた。

 アレンに確認すると、昨日見たやつがホブゴブリンで、それより大きい方がゴブリンジェネラルというらしい。

 アレンもゴブリンの集落の規模を確認し、青ざめた顔をしている。


 集落の規模によっては、俺一人で殲滅できないかと考えていたのだが、とてもじゃないが無理な話だ。

 昨日の襲撃は、彼らにとっては前哨戦のようなもので、これから本格的に攻めてこようとしているようだった。

 それを示すように、ゴブリン達は、武器を装備したり、松明を持ったりしている。


 すると、集落で一番大きな建物から身長二メートルを優に超える筋肉質のゴブリンが姿を見せる。

 その筋肉ムキムキのマッチョゴブリンが何かを叫ぶと、ゴブリン達は雄たけびを上げてから、集落の外に歩き始めた。

 どうやら、これから森人の村を襲撃しに行くようだ。マッチョゴブリンは、彼らのボスなのだろう。


 早く帰って、このことを報告しなくてはならない。

 俺とアレンは、身をひるがえすと、森人の村へ急ぐ。

 二人とも風の術を身に纏い、かなりの速度で森を駆け抜ける。

 俺はへとへとになりながらも、二時間ほどで駆け抜けた。

 以外にもアレンは、疲れを見せずに、さっそくサリオンに偵察結果を報告している。

 瞬発力は俺の方が上だが、持久力は森人の方が上らしい。


 俺は報告については役に立たないので、今のうちに水を飲み、草を食べてから横になった。

 彼らの行軍速度からすると、村に着くまでに五時間ほどかかるだろう。

 後三時間は、休憩する時間がありそうだ。


 俺は消耗した体力を回復するために、目をつぶり仮眠を取るのだった。

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