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覚え鹿  作者: 輝野 和己
戦争編
23/34

夜間の監視

 ゴブリンの襲撃があった後、俺は回復の術を使って、背中の傷を癒すと、アレンの家に帰って眠りについた。術を使って体力を消耗したからだ。

 夕方ぐらいになって目を覚ます。だいぶ体力は回復したが、腹が空いていた。

 近くの木の葉を食べて腹を満たし、散歩がてら村の広場の方に歩く。


 広場では、いつもより多くの村人がおり、何やら物々しい雰囲気である。

 広場の中央付近では、村の長老であるメルロスと警備隊長のサリオンが中心となって、何やら話し合いが行われている。


 辺りは暗くなってきた。見張り当番を交代したのか、アレンが広場にやってきた。

 アレンは俺に気づいて近寄ると、軽く腰を撫でる。それから、サリオン達に近づくと話し合いに参加した。

 今日の状況や今後の防衛について、話し合っているのだろう。


 ゴブリン達は、今日の襲撃で多数の死者を出した。それに懲りて、この村を襲うのを諦めてくれれば良いのだが……。

 門での防衛戦のことを思い出す。あの時、ゴブリン達は、味方に当たるのも構わず矢を撃ってきた。そのことを考えると、味方に死者が出たからといって、簡単に諦めてくれるとは思えなかった。


 そう考えると、この村で防衛するのではなく、先にゴブリンの住処を攻めた方が良いのではないかと思えてくる。

 確かに攻めるより防衛する側の方が戦いやすいが、この村には城塞都市のような堅牢な防衛設備があるわけではない。

 いつ来るともわからない襲撃に備えるのは大変だし、村に侵入を許せば戦う力のない子供達にも被害が出かねない。


 話し合いが終わると、アレンと家に帰る。

 アレンは疲れていたのかすぐに横になって眠ってしまった


 ゴブリンは夜行性だろうか?

 もしそうなら、夜の時間帯の方が危険かもしれない。

 俺なら夜でも視界を確保できるが、森人達は夜になると松明で視界を確保しているぐらいなので、あまり夜目はきかないのだろう。


 俺はアレンの家を出て、村の西側、門の方に向かった。

 門では篝火が焚かれ、武装した村人が見張り台から村の外を監視している。

 ふと気になって門を見ると、昼の襲撃で壊された閂は、既に修理されていた。


 村人達は緊張した顔をしていたが、俺の姿を見るとほっとしたらしく笑顔になった。

 門の防衛戦で活躍したので、頼りになると思われているのかもしれない。

 俺は、篝火の近くで地面に座り、もぐもぐと反芻しながら休憩する。


 しばらくすると、門の近くの建物からサリオンが出てきた。

 昼からずっと起きているのだろうか?

 サリオンは、座っている俺に近づくと、背中を軽く撫でた。

 昼間に傷を負ったのを気にかけてくれたのかもしれない。


 サリオンは、見張り台にいる村人と二言三言会話をする。

 異常がないか確認しているのだろう。

 今のところ、俺の耳や鼻にもゴブリンの気配は確認できていない。


 北の見張り台の方から松明の光が近づいてきた。

 巡回している村人のようだ。

 無表情な長身の男で、どこかで見た顔だと思ったらギルだった。

 夜間の巡回に駆り出されたようだ。


 ギルとサリオンは篝火の前で軽く会話をする。

 会話が終わると、ギルは、俺の腰を軽く撫でてから、南の見張り台の方へ歩いていった。

 どうやら、各見張り台を巡回しながら状況をサリオンに報告しているらしい。


 状況確認が終わったのか、サリオンは再び門の近くの建物に入っていった。

 俺も建物に入る。

 サリオンは床にござを敷いて、横になっていた。仮眠を取るようだ。

 さすがに一日中起きていたら、寝不足で、いざという時に力を発揮できないだろう。

 休むことも重要である。今日、襲撃が来るとは限らず、今後も警戒は必要なのだ。


 ここなら門に襲撃があってもすぐに駆け付けることができる。

 そう思い、俺もその場で横になると、浅い眠りにつくことにした。


 結局のところ、この夜、襲撃は無かったのだった。

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