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覚え鹿  作者: 輝野 和己
戦争編
22/34

門の防衛戦

 北の見張り台には、アレンだけ残り、駆け付けてくれた男達は、警報の鳴った村の西側に向かった。

 見張り台から森の奥を見るが、ゴブリンの気配はない。弓持ちのゴブリンは完全に撤退したみたいだ。


 俺は西側の状況が気になったので、この場をアレンに任せて、村の西側……門のある方に向かう。

 門に近づくと、武装した村人が集まっていた。

 門の左右にある見張り台には弓を持った村人がおり、門の外側に向かって矢を放っている。

 俺は見張り台に上がると、門の外の状況を確認した。

 そこには、ゴブリン達が丸太を持って門に突撃する姿があった。


 四匹のゴブリンが一本の丸太を持ち、その周囲を囲むようにして、盾を持ったゴブリン達が飛んできた矢を弾いている。

 村人達は矢を放っているのだが、盾で防がれており、時折、ドーンと丸太で門を叩かれる音がする。

 小柄なゴブリン達だが、力はかなりあるようで、丸太が門を打ち付ける衝撃で、閂が外れそうになっている。


「〇〇×△〇!」

 見張り台にいた筋肉質な男……サリオンが叫ぶと、数人の村人が閂を手で押さえながら、体を門に押し当てて、門が破られないようにする。


 門を破ろうとしているゴブリン達の後方には、弓を構えたゴブリン達がおり、こちらに向かって矢を放ってくる。さらには、それらのゴブリンを指揮するかのように、ひときわ体の大きなゴブリンが声を出している。

 かなりまずい状況のようだ。俺は炎の玉を放とうとしたが、いかんせんゴブリン達が門に近すぎる。

 盾や丸太を燃やしても、そのまま門に突撃されたら、火が燃え移ってしまう。


 とりあえず前足を前方に突き出すと、丸太を持つ先頭のゴブリンに水の塊を放つ。

 だが、盾持ちのゴブリンに防がれてしまう。

 水や風の術ではらちがあかなさそうだ。


 その時、ドーンという音と共に、門に衝撃が走り、閂が壊れてしまった。

 村人達が門を内側から押さえているが、次に丸太で突撃されたら村の中への侵入を許してしまうかもしれない。

 脳裏に、村の子供達がゴブリンに襲われる光景が浮かぶ。


(気に入らないな……)

 俺は意を決すると、ゴブリン達が密集する門前へとジャンプした。

 まずは耳を前方に向けて、目つぶしの光を放つ。

 近くのゴブリン達がまぶしさから目をつぶる。しかし、日中だったこともあり、ある程度離れた距離にいたものやこちらを見ていなかったものには効果がなかった。

 俺は全身を帯電させると、付近のゴブリンに接触して電流を流す。失神したのか、ショック死したのか、ばたばたと倒れるゴブリン達。


 ここまでは順調だったが、目つぶしから立ち直ったゴブリンが石斧で斬りかかってくる。

 一匹の攻撃はかわしたが、もう一匹がすぐ横から攻撃してきた。

 こちらはかわしきれず、背中を斬り裂かれる。

 激痛が襲ってくる。帯電状態を解き、回復の術を使用するが、傷は深く、すぐには治らない。


 そこに弓矢が飛んできた。後方にいたゴブリン達が味方がいるにも関わらず、こちらに弓を放ってきたのだ。

 近くのゴブリン達にも弓矢が刺さる中、俺は回復の術を止め、風の術を使い、飛んでくる矢を払いのける。


 いつの間にか、門の前で動いているのは俺一匹となっていた。

 村人達は、後方にいる弓持ちゴブリン達を狙って、矢を放ち始める。

 門が開け放たれ、サリオンを中心に武装した村人達が飛び出してくる。

 彼らは俺を守るようにして、前方のゴブリン達を威嚇する。


 すると、状況悪しと悟ったのか、指揮官らしき大柄なゴブリンが何か叫び、残ったゴブリン達は撤退していった。

 サリオン達は、撤退した敵を追撃することはせずに、まずは、門前に倒れているゴブリン達に止めを刺していく。


 かなり無茶をしたが何とか撃退することができた。

 しかし、北の見張り台でのことといい、ここでの戦闘といい、ゴブリン達はかなり組織だった行動をしていた。


 俺はこの村を取り巻く状況に不安を感じるのだった。

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